住宅ローンが残っている空き家は売れる?|残債の確認とオーバーローン時の選択肢
「ローンが残ったままの家は、完済するまで売れないのでは」。そう思い込んで空き家を放置している方は少なくありません。実際には、住宅ローンが残っていても空き家は売れます。条件はただ一つ、引渡しまでに残債を完済して抵当権を外せることです。
問題は、売却額で残債を消せるかどうかです。答えを先に整理します。
- 売却額 ≧ 残債(アンダーローン) → 売却代金で完済できるため、通常どおり売却可能
- 売却額 < 残債(オーバーローン) → 不足分を埋める工夫(自己資金・住み替えローン・親族借入・任意売却)が必要
- どちらか分からない → 残高証明書と査定額の突き合わせが第一歩。この記事の手順どおりに進めればその日のうちに見当がつきます
ローンが残っている空き家は、持ち続けるほど利息・固定資産税・管理費が積み上がります。「売れないかもしれない」で止まらず、まず数字を確かめるところから始めましょう。
状況別ジャンプガイド
| あなたの状況 | 読むべきセクション |
|---|---|
| そもそも売れるのか知りたい | ローンが残っていても売れる仕組み |
| 残債の正確な調べ方を知りたい | 残債の確認と査定の突き合わせ |
| 売却額で完済できそう | アンダーローンの売却手順 |
| 売却額が残債に届かない | オーバーローン時の4つの選択肢 |
| 返済がすでに苦しい・延滞気味 | 任意売却と競売の違い |
| 相続した実家にローンが残っていた | 相続とローン残債 |
住宅ローンが残っている空き家が売れる仕組み
💡 この章の要点: ローン中の家には金融機関の抵当権が登記されており、付いたままでは買い手がつきません。ただし引渡しと同時に完済・抵当権抹消する方法が実務として確立しており、「完済してからでないと売り出せない」わけではありません。
ローンが残ったまま空き家になるのは珍しくない
そもそも「住んでいないのにローンだけ残っている家」は、次のような経緯でごく普通に生まれます。
- 転勤・転居: 住み替え先に移ったが、旧居が売れないまま・貸せないまま残った
- 施設入所・入院: 所有者が住まなくなったが、ローンの返済は続いている
- 相続: 親が返済中に亡くなり、ローン付きの実家を引き継いだ(後述のとおり団信の確認が先)
- 離婚: どちらも住まない家とローンだけが残った
どの経緯でも、売却の可否を決めるルールは同じです。順に見ていきます。
抵当権が付いたままでは売れない理由
住宅ローンを組むと、金融機関はその家と土地に抵当権を設定します。返済が止まったときに、家を強制的に売却(競売)して貸したお金を回収できる権利で、登記簿に記録されています。
- 抵当権が付いたまま所有権を移すこと自体は、法律上は可能
- しかし買った人は「前の所有者がローンを払わなければ家を競売にかけられる」立場になる
- そんな家を買う人は現れないため、実務では抵当権を外してから引き渡すのが絶対条件
だからといって、売り出す前に完済しておく必要はありません。売買代金で完済する前提で売り出し、引渡しの当日にすべてを同時に行うのが標準的な進め方です。
決済当日に「完済と引渡し」を同時に行う
決済当日(銀行の一室などで実施)
[買主] ── 売買代金の支払い ──> [売主]
│
├─ その場で残債を金融機関へ一括返済
│
[金融機関] ── 完済を確認し、抵当権抹消書類を交付
│
[司法書士] ── 抵当権抹消 + 所有権移転の登記を同日に申請
この一連の流れを買主・売主・金融機関・司法書士が同席して行うため、「代金を受け取ったのに抵当権が残ったまま」という事故が起きない仕組みになっています。抵当権抹消登記の様式や必要書類は法務局の不動産登記申請書ページで公開されています。
つまり「売れるかどうか」は抵当権の有無では決まりません。決まるのは次の一点、売却代金(+持ち出せる資金)で残債を消せるかです。次の章で確かめ方を見ていきます。
残債の確認と査定の突き合わせ|アンダーローンかオーバーローンか

💡 この章の要点: 残高証明書か返済予定表で残債を正確に把握し、査定額から諸費用を引いた手取りと比べます。手取りが残債以上ならアンダーローン、届かなければオーバーローン。この判定で以降の進み方がすべて決まります。
ステップ1: 残債を正確に調べる
「だいたい1,500万円くらい残っていたはず」の記憶で判断してはいけません。調べ方は主に3つです。
- 返済予定表(償還予定表): 借入時や毎年の郵送物に含まれる。各時点の残高が一覧できる
- 残高証明書: 金融機関に発行を依頼する。金額を対外的に示す必要がある場面(任意売却の相談など)ではこちら
- インターネットバンキング・アプリ: 対応している金融機関なら最新残高を即日確認できる
書類が見当たらない場合は、借入先の金融機関の窓口やコールセンターに問い合わせれば発行手続きを案内してもらえます。発行手数料や日数は金融機関によって異なります。
このとき、その家に紐づく借入をすべて洗い出すことも忘れずに。
- ペアローン・収入合算: 夫婦それぞれの借入があれば両方の残高が対象
- リフォームローン: 家に抵当権が追加設定されていることがある
- 借り換え後のローン: 現在の借入先(借り換え先)の残高で確認する
登記事項証明書(法務局で誰でも取得可能)を見れば、その家に設定されている抵当権を一覧で確認できます。
ステップ2: 査定額から「手取り」を出す
売却額がそのまま返済に使えるわけではありません。諸費用を引いた手取りで比べます。主な費用は次のとおりです。
- 仲介手数料: 仲介で売る場合に発生。買取なら原則かからない
- 抵当権抹消の費用: 登録免許税(後述)と司法書士報酬
- 印紙税: 売買契約書に貼付する
- 繰上げ返済手数料: 金融機関所定。有無と金額は借入先に確認する
売却見込み額
− 仲介手数料(仲介で売る場合)
− 抵当権抹消の登記費用・司法書士報酬
− 印紙税などその他の費用
──────────────────────
= 手取り額 ⇔ これと残債を比較する
査定は1社の数字で決めず、複数社で幅を見るのが基本です。査定額の考え方は空き家の売却相場の調べ方と無料査定の使い方で詳しく解説しています。
ステップ3: 判定する
| 判定 | 状態 | 進み方 |
|---|---|---|
| アンダーローン | 手取り額 ≧ 残債 | 通常売却。売却代金で完済し抵当権を抹消(次章) |
| オーバーローン | 手取り額 < 残債 | 不足分を埋める手当てが必要(4つの選択肢の章へ) |
| 判定が微妙(ほぼ同額) | 手取り額 ≒ 残債 | 査定の幅・費用の見積り精度を上げてから判断。買取査定も並行して取る |
境目のケースでは、査定の上振れを当てにして進めるより、確実に決まる買取価格で「最低ラインでも完済できるか」を先に確かめておくと計画が崩れません。
アンダーローンなら通常売却で完済できる
💡 この章の要点: アンダーローンなら特別な手続きは不要で、通常の売却の流れに「完済と抵当権抹消」が加わるだけです。抹消登記は決済に同席する司法書士が担い、登録免許税は不動産1個につき1,000円(土地と建物なら2,000円)です。
売却の流れ
- 査定・売却方法の選択: 仲介で買い手を探すか、業者に直接買い取ってもらうか
- 金融機関へ連絡: 売却して一括返済したい旨を伝え、必要な手続きと書類を確認する
- 売買契約: 買主(または買取業者)と契約
- 決済・引渡し: 代金受領 → 残債の一括返済 → 抵当権抹消 → 所有権移転を同日に実施
売却活動そのものの進め方(媒介契約の種類、内見対応、契約から決済まで)は空き家売却の流れ全体像にまとめているので、ここでは残債がある場合に特有の実務だけ押さえます。
抵当権抹消の実務
- 売却と同時の抹消: 決済に同席する司法書士が、金融機関から受け取った書類でその日のうちに申請する。売主が法務局へ出向く必要はない
- 登録免許税: 不動産1個につき1,000円。土地1筆+建物1棟なら2,000円(法務局の案内資料)
- 司法書士報酬: 事務所ごとに異なるため、決済前に見積りを確認する
- すでに完済済みの場合: 抹消登記だけなら自分で申請することも可能。申請書の様式と記載例は法務局のページからダウンロードできる
決済までに準備すること
- 金融機関へ早めに連絡: 一括返済には事前の申込み手続きが必要。売却を決めた段階で伝えておく
- 完済に必要な正確な金額の確認: 決済日時点の残高に、日割りの利息や手数料が加わる。決済日が決まったら金融機関に精算額を出してもらう
- 司法書士との調整: 抹消書類の受け渡し方法・当日の段取りは、決済を担当する司法書士と金融機関の間で事前にすり合わせる
オーバーローンのときの4つの選択肢

💡 この章の要点: 売却額が残債に届かない場合も、道は自己資金での補填・住み替えローン・親族からの借入・任意売却の4つあります。どれを選べるかは不足額の大きさと資金事情で決まり、返済に窮する前なら選択肢は多く、延滞が進むほど任意売却しか残らなくなります。
選択肢の比較
| 選択肢 | 不足分をどう埋めるか | 向くケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自己資金で補填 | 預貯金から不足分を支払う | 不足が数十万〜数百万円で貯蓄に余裕がある | 生活防衛資金まで崩さない範囲で |
| 住み替えローン | 新居のローンに不足分を上乗せして借りる | 空き家を売って新しい家を買う予定がある | 新居の購入が前提。借入額が膨らむため審査は厳しめ。取扱いは金融機関に確認 |
| 親族からの借入 | 家族・親族に不足分を借りる | 一時的な立替えで、返済の見通しが立つ | 貸し借りの条件を書面に残す。贈与とみなされる税務上の扱いは税務署・税理士に確認 |
| 任意売却 | 債権者の同意を得て売却し、残った債務は協議のうえ返済を続ける | 返済継続が難しく、上の3つが使えない | 債権者の同意が前提。信用情報への影響など代償もある(次章) |
各選択肢の補足
- 自己資金で補填: もっとも単純で、金融機関との交渉も不要。決済時に「売却代金+自己資金」で完済すればアンダーローンと同じ流れになる
- 住み替えローン: 「いま住んでいる家を売って住み替える」場面を想定した商品のため、相続した空き家など居住実態のない家では使えないことが多い。利用可否・条件は金融機関ごとに異なるため、事前の確認が欠かせない
- 親族からの借入: 完済と抵当権抹消さえできれば資金の出所は問われない。ただし返済条件があいまいだと贈与と扱われる可能性があるため、契約書を作り記録を残す
- 任意売却: 上記がどれも成り立たないときの手段。仕組みと注意点は章を分けて説明する
どの道を選ぶにしても、出発点は「不足額がいくらか」を確定させることです。不足額100万円と1,000万円では取れる手がまったく違います。判定がまだの方は前章のステップに戻ってください。
任意売却とは|競売との違いと早く動くべき理由
💡 この章の要点: 任意売却は債権者の同意を得て市場で売却し、残債は協議のうえ返済を続ける方法です。競売に比べて高値が期待でき、引渡し時期の調整もしやすいと住宅金融支援機構も案内しています。ただし延滞が進み競売手続きが始まると時間の余地は狭まるため、返済が苦しくなった段階で債権者に相談するのが鉄則です。
任意売却の仕組み
オーバーローンの家は、売っても抵当権を外せないため原則そのままでは売却できません。そこで、債権者(金融機関など)の同意を得て抵当権を外してもらい、市場で売却するのが任意売却です。
- 売却代金は返済に充て、それでも残った債務は債権者と協議して返済を続ける
- 競売のような「法的手続による強制的な処分」ではなく、通常の不動産取引と同じ形で買い手を探せる
- 住宅金融支援機構の融資では、任意売却の申出 → 価格査定 → 媒介契約 → 販売活動 → 債権者の抹消応諾 → 売買契約・決済という流れが示されている(融資住宅等の任意売却|住宅金融支援機構)
ただし、任意売却は返済の延滞を前提に進む手続きです。信用情報に延滞の記録が残ることは避けにくく、その後の借入れに影響し得ます。影響の範囲は一律に言えないため、債権者や信用情報機関への確認が必要です。
競売はどう進むか
任意売却と比較される競売(担保不動産競売)は、債権者が抵当権を実行して裁判所を通じて売却する手続きです(担保不動産競売|裁判所)。
債権者が地方裁判所へ競売を申立て
↓
開始決定・不動産の差押え
↓
執行官による現況調査・評価 → 売却基準価額の決定
↓
期間入札(物件情報は競売情報サイトで公開される)
↓
最高価買受申出人へ売却 → 代金納付・所有権移転
↓
売却代金を債権者へ配当
任意売却と競売の比較
| 項目 | 任意売却 | 競売 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場で買い手を探すため、一般的に競売より高値が期待できる | 入札で決まる。任意売却より低くなりやすいとされる |
| 手続きの主体 | 所有者(債権者の同意のもと) | 裁判所・債権者 |
| 引渡し時期 | 調整しやすく、退去後の生活設計を立てやすい | 手続きの進行に従う |
| 物件情報の公開 | 通常の売却活動と同じ | 競売物件として情報サイトに公開される |
| 費用 | 債権者の承認を得て、仲介手数料や抹消登記費用を売却代金から控除できる場合がある | 手続費用は売却代金等から清算 |
価格・引渡し・費用面の記述は住宅金融支援機構の案内に基づきます。個々の債権者での扱いは異なる場合があるため、必ず窓口で確認してください。
動けるうちに相談する
延滞が続くと、分割で返済する権利(期限の利益)を失い、残債の一括請求を経て債権者が競売を申し立てる流れに進みます。保証会社付きの契約では、保証会社が残債を金融機関へまとめて支払い(代位弁済)、以後は保証会社が債権者として返済を求める立場に変わります。窓口が債権回収会社に移ることもあります。
- どの段階まで任意売却に応じてもらえるかは債権者の判断次第
- 競売手続きが進むほど、任意売却に使える時間は物理的に減っていく
- 延滞から競売までの具体的な期間は契約と債権者ごとに異なるため、一般論の月数を当てにせず、返済が苦しくなった時点で借入先に相談するのが唯一確実な動き方
売却の前に検討できる「返済条件の変更」
延滞前の相談なら、任意売却の手前に返済条件の変更という選択肢が残っていることもあります。住宅金融支援機構は返済でお困りになったときの案内で、次の3タイプの変更を示しています。
- 返済期間の延長など: 毎月の返済額を抑える
- 一定期間の返済額の減額: 収入減が一時的な場合に、期間を区切って減額する
- ボーナス返済分の変更・取り止め: ボーナス払いの負担を月払いへ組み替える
民間金融機関でも同種の相談窓口を設けているのが一般的ですが、条件・可否は債権者ごとに異なります。空き家を手放す決心がついていない段階でも、「返済が苦しい」と感じた時点で借入先に相談する価値があります。
相続した空き家に住宅ローンが残っているケース
💡 この章の要点: 亡くなった方が団体信用生命保険(団信)に加入していれば、保険金でローンは完済されるのが原則です。ただしフラット35は団信への加入が任意のため、未加入でローンが残るケースがあります。完済済みでも抵当権の登記は自動では消えないので、実家の登記簿の確認も忘れずに。
まず団信の加入有無を確認する
親が住宅ローンを残して亡くなった場合でも、直ちに「借金を相続した」と慌てる必要はありません。
- 団信に加入していた場合: 死亡時に保険金でローン残債が弁済される。遺族が返済を引き継ぐ必要はない
- 団信に未加入だった場合: ローン債務も相続の対象になる。相続するか放棄するかの判断が必要になる
- フラット35(住宅金融支援機構)は、健康上の理由その他の事情で団信に加入しないままローンを組める(新機構団信の加入要件|フラット35)。「フラット35だから安心」とは限らない
加入の有無は、借入先の金融機関に相続発生を伝えれば確認できます。契約書類や保険料の支払い記録が手がかりになります。
ローンが残ると分かった場合、家の価値と債務を比べて相続放棄を検討する余地もあります。
「完済済みなのに抵当権が残っている」実家
もう一つよくあるのが、ローンはとっくに完済しているのに、抵当権抹消登記をしないまま放置された実家です。抵当権の登記は完済しても自動では消えません。
- 売却の決済までに抹消が必要になるため、登記簿(登記事項証明書)で抵当権の有無を早めに確認する
- 完済時に金融機関から受け取った抹消書類が残っていれば、それを使って申請できる
- 書類を紛失していても、借入先に相談すれば再交付を申請できる場合がある。住宅金融支援機構の融資には完済された方向けの案内ページに再交付申請の窓口がある
- 何十年も前の借入で金融機関が合併・解散しているケースなど、手続きが複雑な場合は司法書士に相談する
あわせて、相続登記は2024年4月1日から義務化されています。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない場合10万円以下の過料の対象になり得ます(相続登記の申請義務化|法務省)。抵当権の確認と同じタイミングで、名義の登記も済ませておきましょう。
税金の注意|空き家では「譲渡損失の特例」が使えないことがある
💡 この章の要点: オーバーローンで売って損失が出たとき、損失を給与など他の所得と相殺できる「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除」という制度があります。ただしマイホーム(居住用財産)が前提で、住まなくなった日から3年を経過する年の年末までに売ることが要件のため、長く空き家にした家や自分が住んでいなかった実家では使えません。
特例の中身
国税庁のタックスアンサー(No.3390)で案内されている制度で、主な要件は次のとおりです。
- 売った年の1月1日時点で、家屋・敷地の所有期間が5年超
- 売買契約日の前日時点で、償還期間10年以上の住宅ローン残高があること
- 譲渡価額がローン残高を下回っていること(まさにオーバーローンの状態)
- 自分が住んでいる家、または住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家であること
損益通算できる金額は「ローン残高から売却価額を差し引いた額」が限度で、控除しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せます(合計所得金額3,000万円超の年は繰越控除不可)。
空き家で引っかかるのは「3年」の壁
要件のうち空き家所有者に効くのが、居住しなくなってからの期限です。
- 転居後3年の年末を過ぎた家 → 対象外
- 相続で取得し、自分は一度も住んでいない実家 → そもそも「自分の居住用財産」に当たらず対象外
- 「いずれ売るつもり」で空き家のまま年数が経つと、使えたはずの特例を失う
なお、この特例は令和7年12月31日までの譲渡が対象と案内されてきましたが、令和8年度税制改正の大綱に適用期限を2年延長する方針が明記されています(財務省・令和8年度税制改正の大綱)。
期限は今後も改正で動く可能性があるため、実際の売却時は国税庁サイトで最新の適用期限を確認してください。
逆に売却で利益が出る場合の税金(譲渡所得税)の仕組みは空き家売却の譲渡所得税、ケース別の税額の目安は売却タイミング別の税金シミュレーションで解説しています。
残債を早く消したいときの「買取」という選択肢
💡 この章の要点: 残債がある空き家は、売却が長引くほど利息・固定資産税・管理費が積み上がり、完済計画そのものが揺らぎます。価格と時期が早く確定する買取は、「高く売る」より「確実に残債を消す」を優先したい場面で合理的な選択肢になります。
仲介で高値を狙う価値がある物件でも、残債がある場合は「売れるまでの時間」がそのままコストになります。
- 利息は待ってくれない: 売却活動中もローンの返済と利息は続く
- 維持費も続く: 固定資産税・管理の手間は空き家のままでも発生する
- 完済時期が読めないと動けない: 住み替え・相続手続き・任意売却の期限など、後続の予定が立たない
- 買取は価格と引渡し日が先に確定する: 「この日にいくらで完済できる」が決まるため、残債の精算計画を確実に組める
とくに次のような場合は、仲介で待つより買取査定を先に取る価値があります。
- 残債と査定額が拮抗していて、確実に完済できる最低ラインを早く確定させたい
- 遠方の相続空き家で、内見対応や管理を続けられない
- 返済が苦しくなり始めており、延滞前に売り切りたい
なお、残債があることは査定の段階で業者に伝えてください。隠す必要はまったくなく、伝えたほうが話が早く進みます。
- 決済日は金融機関の完済手続き・書類準備に合わせる必要があり、日程調整に効く
- 残債額が分かっていれば、「完済に届く価格かどうか」を業者側も踏まえて提案できる
- オーバーローン気味の案件は、債権者との調整(任意売却)に慣れた業者かどうかで進み方が変わる
買取と仲介の価格差・使い分けの本論は買取と仲介の比較に譲ります。残債がある場合は「両方の査定を取り、手取りが残債を超えるルートがあるか」を確かめるのが最初の一手です。
よくある質問
- 1. 売却額と残債がほぼ同額です。売れますか?
諸費用の分まで見込めるかで決まります。売却には仲介手数料(仲介の場合)・抵当権抹消費用・印紙税などがかかるため、「売却額=残債」ちょうどでは完済に届きません。諸費用を引いた手取りで再計算し、不足するなら少額でも自己資金の手当てが必要です。
- 2. 抵当権の抹消登記は自分でできますか?
完済済みなら可能です。申請書の様式・記載例は法務局のページで公開されており、登録免許税は不動産1個につき1,000円です。ただし売却の決済と同時に行う抹消は、確実性を求める買主・金融機関側の意向で司法書士が担当するのが通例です。
- 3. 残債の正確な金額はどこで確認できますか?
返済予定表・残高証明書・インターネットバンキングの3つです。手元の書類で概算をつかみ、売却を具体化する段階で金融機関に残高証明書の発行を依頼するのが確実です。繰上げ返済手数料の有無もあわせて確認しておきましょう。
- 4. オーバーローンでも買取してもらえますか?
買取でも「引渡しまでに完済して抵当権を外す」条件は同じです。買取価格+自己資金で完済できるなら問題なく進められます。届かない場合は、債権者の同意を得たうえでの任意売却(買主が買取業者になることもあります)など、債権者を交えた手続きになります。
- 5. ローンごと相続したくない場合は放棄できますか?
相続放棄をすれば債務は引き継ぎませんが、家も含め他の財産も一切相続できません。団信の加入有無・家の売却見込み額・他の財産との比較で判断すべきテーマのため、手続きと期限は相続放棄と空き家で確認してください。
- 6. ローン返済中でも査定だけ受けていいですか?
問題ありません。査定を受けても売却の義務は生じませんし、金融機関の承諾も不要です。むしろ査定額がないとアンダーローンかオーバーローンかの判定ができないので、残高確認と査定は最初にセットで済ませるべき作業です。
- 7. 売らずに賃貸に出して返済を続けるのはダメですか?
無断ではリスクがあります。住宅ローンは契約者本人が住むことを前提にした商品のため、住まないまま賃貸に出すと資金使途の面で契約違反と扱われる場合があります。扱いは金融機関によって異なるので、賃貸を検討するなら必ず事前に借入先へ相談してください。賃貸活用そのものの損益は空き家を賃貸に出す選択肢で解説しています。
まとめ|残債は「売れない理由」ではなく「確認すべき数字」
住宅ローンが残っている空き家の売却は、次の手順に集約されます。
- 売れるかどうかは抵当権で決まらない。引渡しまでに完済・抹消できるかがすべて
- 残高証明書と査定額の突き合わせでアンダーローンかオーバーローンかを判定する
- アンダーローン → 通常売却。決済当日に完済と抵当権抹消を同時に行う
- オーバーローン → 自己資金・住み替えローン・親族借入・任意売却の4択。不足額の確定が先
- 返済が苦しいなら早く債権者へ相談。競売が進むほど任意売却の余地は狭まる
- 相続した家はまず団信の加入有無。フラット35は任意加入のため残債が残ることがある
放置している間も利息と維持費は積み上がります。まず残債の数字と査定額をそろえて、完済できるルートがあるかを確かめるところから始めてください。
関連: 空き家売却の流れ / 買取と仲介の比較 / 売れにくい訳あり物件の売却





