空き家の相続放棄|3ヶ月期限・手続き・落とし穴【2026】
「相続した実家、維持できないから相続放棄したい」「相続放棄すれば固定資産税や管理責任から逃れられる?」——空き家の相続放棄 は、負の財産や維持困難な不動産を承継しないための選択肢ですが、3ヶ月期限、改正民法940条による保存義務、他の相続財産も同時放棄 など、知らないと損する落とし穴が複数あります。
この記事では、空き家の相続放棄の 3ヶ月期限と手続き、必要書類と費用、改正民法940条による保存義務(=放棄しても完全解放されない)、相続財産清算人制度、相続放棄以外の選択肢 までを整理します。
結論を先にお伝えすると、空き家の相続放棄で押さえるべきポイントは3つです。
- 「相続を知った日から3ヶ月以内」が絶対期限 — 過ぎると単純承認で放棄不可
- 改正民法940条で保存義務は残る — 「現に占有」している場合、次の相続人 or 相続財産清算人に引き継ぐまで管理責任
- 他の遺産も同時に放棄になる — 空き家だけ放棄はできない
「相続放棄すれば全部解決」と思って手続きしたら、後から「保存義務」「他財産損失」が判明することがあります。
相続放棄、いまの状況は? — 状況別ジャンプガイド
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|---|---|
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| 手続きの流れと書類 | 手続きの流れ |
| 放棄しても責任残る? | 民法940条の保存義務 |
| 完全解放したい | 相続財産清算人制度 |
| 放棄以外の選択肢 | 代替案 |
空き家の相続放棄とは — 他の選択肢との違い

💡 TL;DR: 相続放棄は 遺産全体を一切受け継がない という選択。空き家のみ放棄はできず、預貯金・株式・他不動産も同時放棄。家庭裁判所への申述で成立。期限は 3ヶ月。
相続の3つの選択肢
| 選択肢 | 内容 | 期限 | 手続き |
|---|---|---|---|
| 単純承認 | 遺産すべてを承継(プラス・マイナス含む) | 3ヶ月過ぎると自動的に | 不要 |
| 限定承認 | プラスの範囲内でマイナスも承継 | 3ヶ月以内 | 家庭裁判所 + 相続人全員 |
| 相続放棄 | 遺産すべてを承継しない | 3ヶ月以内 | 家庭裁判所(単独可) |
相続放棄が向くケース
- 被相続人の借金が遺産価値を上回る
- 空き家の維持・解体費を払う余裕がない
- 遠方で物理的に管理不可能
- 相続人間のトラブルから離れたい
- 親族関係を断つことに踏み切れる(感情面の問題はある)
相続放棄が向かないケース
- プラスの遺産が空き家負担を上回る
- 空き家以外の遺産(現金・株式・他不動産)が魅力的
- 相続放棄で次順位の相続人(兄弟姉妹等)に迷惑がかかる
- 空き家を売却すれば手取りプラスになる可能性
「空き家だけ放棄」はできない
相続放棄は 遺産全体に対する一括の意思表示。「空き家は要らないけど、預貯金は欲しい」はできません。
このため、相続放棄前に 全遺産の試算 が必須。空き家の維持費 vs 全遺産価値を比較して判断します。
詳しくは 空き家相続後の判断フロー も参照。
空き家相続放棄の3ヶ月期限と起算日

💡 TL;DR: 「相続を知った日から3ヶ月以内」が絶対期限。期限内に家庭裁判所への申述が間に合わないと 単純承認(自動相続)。「相続を知った日」の起算は被相続人の死亡日と一致しないケースあり。
期限の正確な意味
民法915条:「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」
「相続を知った日」の起算
通常は被相続人の死亡日と一致しますが、以下のケースでは異なります。
- 被相続人と疎遠で死亡を後で知った → 知った日から3ヶ月
- 被相続人の死亡を知らないまま生活していた → 知った日から3ヶ月
- 配偶者・子が全員放棄して兄弟姉妹が次順位 → 「自分が相続人になった事実」を知った日から3ヶ月
「3ヶ月の伸長」が可能
複雑な案件で3ヶ月以内に判断困難な場合、家庭裁判所に 熟慮期間の伸長 を申立てれば、さらに3ヶ月延長(累計6ヶ月)できる場合があります。
申立て期限は 熟慮期間内(=元の3ヶ月以内)。期限直前に弁護士・司法書士に相談。
期限超過時の救済策(限定的)
- 「相続財産の調査に時間がかかった」など正当な理由を主張
- 期限後の 特別な事情による相続放棄 を申立て(裁判所の裁量で受理されるケースあり)
- ただし救済されないケースが多い
期限を超えるとどうなる
単純承認 = 遺産すべてを承継したとみなされる。借金も含めて全て引き継ぐ。
期限後に「想定外の借金が発覚」しても、原則として相続放棄不可。
詳しくは 空き家相続の期限カレンダー|3ヶ月・10ヶ月・3年でやること も参照。
空き家相続放棄の手続きと必要書類

💡 TL;DR: 家庭裁判所への 相続放棄申述書 を提出。必要書類は被相続人の戸籍・住民票除票・申述人(自分)の戸籍。費用は 印紙800円 + 郵送料 + 戸籍取得実費 = 数千円。司法書士・弁護士依頼で 5〜15万円 が相場。
手続きの流れ
[1] 必要書類を集める: 1〜3週間
↓
[2] 申述書を作成: 1日
↓
[3] 家庭裁判所に提出(郵送 or 持参): 1日
↓
[4] 家庭裁判所からの照会書に回答: 1〜2週間
↓
[5] 受理通知書を受け取る: 1〜2ヶ月後
↓
合計: 書類準備〜受理まで 1〜2ヶ月
必要書類
| 書類 | 取得先 | 費用 |
|---|---|---|
| 相続放棄申述書 | 家庭裁判所HP からDL | 0円 |
| 被相続人の戸籍謄本(死亡記載) | 本籍地の市区町村 | 450円 |
| 被相続人の住民票除票 | 最終住所地の市区町村 | 300円 |
| 申述人(自分)の戸籍謄本 | 自分の本籍地 | 450円 |
| 収入印紙 | 郵便局・コンビニ | 800円 |
| 郵送料(切手代) | 郵便局 | 100〜500円 |
申述書の書き方
- 申述人の情報: 住所・氏名・生年月日・被相続人との続柄
- 被相続人の情報: 氏名・死亡日・最後の住所
- 放棄の理由: 「遺産が不明」「負債が多い」「遠方で管理困難」など簡潔に
- 提出先: 被相続人の 最後の住所地 の家庭裁判所
司法書士・弁護士に頼む場合
| 項目 | 自分で | 司法書士 | 弁護士 |
|---|---|---|---|
| 費用 | 数千円 | 5〜10万円 | 10〜15万円 |
| 期間 | 1〜2ヶ月 | 1〜2ヶ月 | 1〜2ヶ月 |
| 安全性 | 自己責任 | 中 | 高(訴訟対応も可) |
複雑な案件(数次相続・遠方在住・期限ギリギリ)は専門家依頼が安全。
受理後の効果
- 申述人は 「最初から相続人でなかった」 とみなされる
- 次順位の相続人(子→配偶者→親→兄弟姉妹)に相続権が移る
- 借金も含めて承継しない
受理通知の重要性
「受理通知書」は債権者から請求が来た時に「自分は相続放棄しました」と証明する重要書類。永久保管。
空き家相続放棄しても保存義務は残る — 改正民法940条
💡 TL;DR: 2023年改正民法940条により、相続放棄しても 「現に占有している」 相続財産は、次の相続人 or 相続財産清算人に引き継ぐまで 保存義務 が残る。固定資産税は支払い不要だが、倒壊事故等のリスクは免れない。
改正民法940条とは
旧法では「相続放棄者にも一定の管理義務」と曖昧でしたが、2023年改正で明確化されました。
改正民法940条:相続の放棄をした者は、その放棄の時に
相続財産に属する財産を現に占有しているときは、
相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して
当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと
同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
「現に占有」の意味
- 被相続人と同居していた相続人 → 占有あり
- 別居していた相続人 → 通常は占有なし
- ただし、空き家の鍵を持っている・定期管理していた等の事実関係で判断
保存義務の具体的な範囲
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 物件の管理 | 倒壊しないよう最低限の維持 |
| 害虫害獣対策 | 周辺住民への迷惑防止 |
| 不法侵入対策 | 施錠等の最低限 |
| 固定資産税 | 支払い不要(放棄者には課税されない) |
倒壊事故のリスク
保存義務違反で倒壊事故 → 民法717条 土地工作物責任 で損害賠償責任(死亡事故なら数千万〜2億円)。
詳しくは 空き家を放置するリスク7つ|倒壊・火災・損害賠償・税金6倍 も参照。
「現に占有していない」を主張
別居していて鍵も持っていなかった場合、「現に占有していない」と主張して保存義務を免れる余地あり。ただし司法判断は個別事情によるため、弁護士に相談が必要。
空き家相続放棄から完全解放するには — 相続財産清算人
💡 TL;DR: 全相続人が放棄して相続人不在 → 相続財産清算人(2023年改正で旧「相続財産管理人」から名称変更)を家庭裁判所で選任。清算人に引き継げば保存義務から完全解放。費用は 20〜100万円(予納金含む)。
相続財産清算人制度の概要
- 家庭裁判所が選任する 第三者(弁護士等) が相続財産を清算
- 清算人が空き家を処分・国庫帰属させる
- 申立人(放棄者)は引渡し後に 保存義務から完全解放
申立て手続き
- 家庭裁判所に申立て
- 予納金 を裁判所に納付(20〜100万円)
- 清算人が選任される
- 清算人が財産処分・債権者対応
- 清算人に物件を引き渡し → 保存義務終了
予納金とは
清算人の報酬・実費の前払い。清算後に余れば返還されますが、不動産が処分困難なケースでは予納金が消滅する。
申立てに向くケース
- 空き家が市街地で売却可能 → 清算人が売却 → 予納金が返ってくる可能性
- 空き家が過疎地で処分困難 → 予納金が消滅する可能性大
国庫帰属との関係
清算人が処分困難と判断すれば、最終的に国庫帰属させることが可能。これで「永久に責任から離れる」状態が完成。
詳しくは 空き家活用の選択肢8つ も参照。
空き家相続放棄以外の選択肢 — 売却・買取・持分整理

💡 TL;DR: 相続放棄を考える前に「売却で手取りプラス」「買取で即金化」「共有持分整理」の選択肢を比較。空き家にも価値がある場合、放棄より売却の方が経済的合理性が高い。
選択肢1:現況買取で即金化
訳あり物件専門業者で 現況のまま買取。
- 残置物処分込み・解体不要
- 1〜3ヶ月で売却完了
- 手取りは相場の60〜70%
詳しくは 訳あり物件の売却|再建築不可・事故物件・ゴミ屋敷も買取可 参照。
選択肢2:共有持分のみ整理
兄弟相続で共有名義になっている場合、自分の持分のみ売却 → 「不要な相続」から離脱。
詳しくは 空き家の共有名義|相続後の解消方法・売却の問題点 参照。
選択肢3:解体して土地として売却
建物部分の負担から離脱したい場合、解体補助金活用で解体 → 更地売却。
詳しくは 空き家の解体費用2026|相場・補助金・払えない時の対処法 参照。
比較表
| 選択肢 | 期間 | 費用 | 手取り | 親族関係 |
|---|---|---|---|---|
| 相続放棄 | 1〜2ヶ月 + 清算人(半年〜) | 数千円〜100万円 | 0円(他遺産も放棄) | 次順位に迷惑 |
| 現況買取 | 1〜3ヶ月 | 数十万円(諸経費) | 相場の60〜70% | 維持 |
| 解体+売却 | 6ヶ月〜 | 解体100〜300万円 | 相場マイナス解体費 | 維持 |
| 共有持分売却 | 1〜2ヶ月 | 数十万円 | 持分の10〜30% | 悪化リスク |
「放棄しなくても解放される」可能性を必ず確認。
空き家相続放棄のよくある質問
- 1. 相続放棄したら借金の取立てから完全に逃れられますか?
- ほぼ完全に逃れられる(受理通知書を債権者に提示)。ただし、放棄手続き前に支払った分は返ってこない。
- 2. 相続放棄後、固定資産税は支払いますか?
- 支払い不要。所有権が移転していないため課税対象外。ただし、保存義務はある(940条)。
- 3. 他の相続人が放棄してくれない場合は?
- 各相続人は 独立して放棄可能。自分1人で家庭裁判所に申述できます。他の相続人の同意不要。
- 4. 子供が代襲相続することは?
- 子に相続権が移ります(子が未成年なら親権者が代理して放棄手続きを判断)。
- 5. 放棄後に被相続人の高価な遺品が見つかった場合は?
- 放棄を撤回することは原則できない。後で価値ある遺品が見つかっても受け取れない。
- 6. 全相続人が放棄したら空き家はどうなる?
- 相続財産清算人を選任して処分(予納金20〜100万円必要)。最終的に処分困難なら国庫帰属。
- 7. 相続放棄しても親族関係に影響しますか?
- 法的な親族関係は変わりません。ただし、次順位の相続人(兄弟姉妹等)に相続権が移るため、その方とのトラブルになる可能性あり。事前に説明することが望ましい。
- 8. 相続放棄したことを他の親族に隠せますか?
- 家庭裁判所は 照会されれば回答 します。次順位の相続人は照会で確認可能。隠すのは現実的でない。 最後にもう一度、空き家相続放棄のポイントを整理します。 「相続放棄すれば全部解決」は誤解。本記事の選択肢と費用を踏まえて、最適な判断を。 関連: 空き家を相続したら何から始める?5ステップ完全ガイド / 空き家相続の期限カレンダー / 空き家相続後の判断フロー / 空き家の共有名義





