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相続 - 空き家の相続放棄|3ヶ月期限・手続き・落とし穴【2026】
相続

空き家の相続放棄|3ヶ月期限・手続き・落とし穴【2026】

「維持できない実家は相続放棄すれば、税金からも管理からも解放される」——そう考えて調べ始めた方が多いはずです。この理解は半分だけ正しく、残り半分に落とし穴があります。

相続放棄そのもの(家庭裁判所への申述)は、自分でもできるシンプルな手続きです。問題はその前後にあります。3ヶ月の期限、放棄しても残ることがある保存義務(民法940条)、そして放棄した空き家の行き先。この3つを知らずに動くと、「放棄したのに責任が残った」という結果になりえます。

この記事では、期限のルール → 手続き・書類・費用 → 放棄後も残る義務 → 放棄した空き家の行き先 → 放棄以外の出口 の順に、裁判所・法務省・e-Gov法令検索の条文で裏を取りながら解説します。

結論を先にお伝えすると、押さえるべきポイントは3つです。

  • 期限は「相続の開始を知った時から3ヶ月」(民法915条) — 過ぎると自動的に全部相続(単純承認)
  • 申述自体の実費は数千円 — 収入印紙800円+郵便切手+戸籍等の取得費。専門家に頼むと数万〜十数万円
  • 「放棄すれば無関係」にならないケースがある — 空き家を現に占有している人には引き渡すまで保存義務が残る(民法940条)

法制度の話が中心になるため、個別の判断は必ず弁護士・司法書士に確認してください。この記事は「専門家に何を聞けばいいか」まで自分で整理できる状態を目指します。

相続放棄、いまの状況は? — 状況別ジャンプガイド

状況 おすすめの読み始め
相続放棄の基本を知りたい 相続放棄とは・選択肢の位置づけ
3ヶ月期限の詳細・間に合うか不安 3ヶ月期限のルール
放棄前にやってはいけないこと うっかり相続確定(法定単純承認)
手続きの流れ・書類・費用 手続きと必要書類
放棄しても責任残る? 民法940条の保存義務
放棄した家はどうなる? 放棄後の空き家の行き先
放棄した後、自分は何をいつまで? 放棄後にやること
放棄以外の道を探したい 代替案の比較
実際の進み方を見たい モデルケース

空き家の相続放棄とは — 他の選択肢との違い

空き家の相続放棄とは — 他の選択肢との違いのイメージ

💡 この章の要点: 相続放棄は 遺産全体を一切受け継がない という家庭裁判所への意思表示(民法938条)。受理されると 「初めから相続人でなかった」 ことになり(民法939条)、預貯金も株式も空き家も、まとめて手放す。空き家だけを選んで放棄することはできない。

相続が始まったときの3つの選択肢

親が亡くなると、相続人は3ヶ月以内に次のどれかを選ぶことになります(民法915条)。

選択肢 内容 手続き
単純承認 プラスもマイナスも全部受け継ぐ 不要(3ヶ月何もしないと自動的にこれ)
限定承認 プラスの範囲内でマイナスも受け継ぐ 家庭裁判所へ・相続人全員で
相続放棄 一切受け継がない 家庭裁判所へ・1人でも可(民法938条)

放棄と限定承認の使い分けは、借金の見当がつくかどうかで決まります。借金が遺産を明らかに上回るなら放棄、総額が分からず財産が残る可能性もあり、しかも実家を残したいなら限定承認が候補です。裁判所の案内も、限定承認を「債務がどの程度あるか不明」な場合の選択肢と説明しています。

ただし限定承認は相続人全員の共同が条件で、官報公告と清算まで相続人側が行うため、放棄より手続きは重くなります。家を残せる条件と落とし穴は限定承認とは?実家を残して借金を清算する条件にまとめました。

相続放棄が受理されると、その人は 初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。借金を引き継がない代わりに、預貯金や他の不動産も受け取れません。

「空き家だけ放棄」はできない

ここが最初の分かれ道です。相続放棄は財産を選べません。

  • できないこと: 「ボロボロの実家は要らないが、預貯金500万円は欲しい」
  • できること: 全部受け継ぐか、全部手放すかの二択
  • だから必要なこと: 放棄を決める前に、全遺産の棚卸し(プラスの財産・借金・空き家の売却可能性)

空き家の維持が負担というだけの理由で放棄すると、他のプラスの遺産まで失います。「空き家に値が付くか」を先に確かめるのはこのためです。売却という出口の比較は 後述の代替案 で扱います。

放棄が向くケース・向かないケース

  • 向くケース
  • 借金が遺産を上回る(またはその疑いが濃い): 放棄の最も典型的な理由
  • 遺産がほぼ空き家だけで、売却も困難: 受け継ぐメリットがない
  • 相続トラブルから距離を置きたい: 放棄すれば遺産分割協議に加わる必要がなくなる
  • 向かないケース
  • 預貯金など他のプラス遺産がある: 空き家の負担と比較してから
  • 空き家が売れる可能性がある: 現況買取なら値が付くケースは珍しくない
  • 自分が空き家に住んでいる・管理している: 放棄しても保存義務が残る(民法940条・後述)

放棄すると相続権は誰に移るか

自分が放棄すれば終わり、ではありません。相続権は法律の順位に沿って次の人へ移ります(民法887条・889条・890条)。

配偶者: 順位に関係なく常に相続人(民法890条)
第1順位: 子(子が先に亡くなっていれば孫)
第2順位: 父母・祖父母(直系尊属)
第3順位: 兄弟姉妹(先に亡くなっていれば甥・姪)

例: 子が全員放棄 → 被相続人の親へ → 親も放棄(または死亡) → 兄弟姉妹へ

つまり自分が放棄すると、借金や空き家の問題が親戚に順送りされます。連絡なしに放棄すると、ある日突然、債権者からの通知で叔父・叔母が事態を知る、ということが起こります。放棄を決めたら次順位の親族への一報が実務上のマナーです。

なお、放棄した人の子が代わりに相続人になること(代襲相続)はありません。民法887条2項が定める代襲の原因は「相続開始以前の死亡・欠格・廃除」で、放棄は含まれないためです。「自分が放棄すると子どもに回ってしまうのでは」という心配は不要です。

空き家相続放棄の3ヶ月期限と起算日

空き家相続放棄の3ヶ月期限と起算日のイメージ

💡 この章の要点: 期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月」(民法915条)。死亡日から3ヶ月とは限らない。間に合わないときは家庭裁判所に 期間伸長の申立て(収入印紙800円)ができるが、申立て自体を3ヶ月以内に行う必要がある。

条文が定める期限

民法915条1項はこう定めています。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(e-Gov法令検索・民法)

この3ヶ月は 熟慮期間 と呼ばれます。「葬儀と手続きに追われていたら過ぎていた」が通用しない、後戻りのできない期限です。しかも一度した放棄は、3ヶ月の期間内であっても撤回できません(民法919条)。

起算日は「死亡日」とは限らない

条文の起算点は「死亡日」ではなく「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。この違いが効いてくるケースがあります。

  • 同居・近居の家族: 通常は死亡日=知った日。死亡日から3ヶ月と考えてよい
  • 疎遠で死亡を後から知った: 死亡の事実を知った日から3ヶ月
  • 先順位者の放棄で自分に回ってきた: 「自分が相続人になったこと」を知った日から3ヶ月。兄弟姉妹が突然通知を受けるのはこのパターン
  • 親が承認も放棄もしないまま亡くなった(再転相続): その人の相続人が自分の相続開始を知った時から起算(民法916条)

3ヶ月で決められないとき — 期間伸長の申立て

「借金があるかどうか調べ切れない」まま期限が来そうなときのために、家庭裁判所に 相続の承認又は放棄の期間の伸長 を申し立てる制度があります(裁判所)。

  • 費用: 収入印紙800円(相続人1人につき)+連絡用の郵便切手
  • 申立先: 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
  • 条件: 元の熟慮期間内(3ヶ月以内)に申し立てること
  • 伸長される期間: 裁判所が事案ごとに判断する

「調査が終わらないから自動延長」にはなりません。期限の1ヶ月前になっても財産の全容が見えないなら、伸長の申立てを先に打っておくのが安全策です。

期限を過ぎるとどうなる

3ヶ月以内に限定承認も放棄もしなければ、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。借金も含めて全部を相続した状態が確定し、原則として後から覆せません。

期限経過後に多額の借金が発覚した場合、起算点(知った時)の解釈によって申述が受理される余地が全くないわけではありませんが、個別事情に対する裁判所の判断になります。この状況になったら自力で書類を出す前に弁護士に相談してください。

放棄前にやってはいけないこと — 法定単純承認

💡 この章の要点: 放棄を検討中に 遺産を「処分」すると、相続を承認したとみなされて放棄できなくなる(民法921条1号)。預貯金の解約・費消、形見の売却、空き家の取り壊しが典型。遺品整理は放棄の可否が決まるまで待つ のが原則。

「処分」すると放棄の権利を失う

相続放棄を検討している期間に、うっかり相続を確定させてしまう罠があります。民法921条は、次の場合に単純承認をしたものとみなすと定めています(法定単純承認)。

  • 相続財産の全部または一部を処分したとき(921条1号。保存行為は除く)
  • 3ヶ月の熟慮期間を過ぎたとき(921条2号)
  • 放棄した後でも、財産を隠したり、こっそり消費したりしたとき(921条3号)

3号は特に重要で、放棄が受理された後の行為でも放棄の効果を失わせうるという規定です。「受理されたからもう自由」ではありません。

空き家相続でやりがちな危険行為

行為 危険度 理由
預貯金を解約して使う 高 財産の処分そのもの
家財・骨董品を売る、持ち帰る 高 価値ある動産の処分に当たりうる
空き家を取り壊す 高 建物という財産の処分
賃貸に出す・売却の契約をする 高 処分・運用行為
故人の借金を遺産から返す 注意 処分と評価される可能性が議論される行為。事前に専門家へ
写真・手紙など価値の乏しい形見分け 通常は許容 経済的価値がない範囲にとどめる
雨漏りの応急処置・施錠 通常は許容 現状維持のための保存行為

なお、葬儀費用の支出や遺体・遺品の扱いなど、線引きが問題になりやすい行為は多数あります。放棄の可能性が少しでもあるなら、「価値のあるものには手を付けない」を原則にして、迷う行為は先に弁護士・司法書士へ確認してください。

遺品整理は「放棄しないと決めてから」

空き家の相続では「まず家の中を片付けよう」と動きたくなりますが、順番が逆です。

正しい順番:
財産調査(プラス・マイナスの棚卸し)
  → 放棄するか決める
    → [放棄する] 家財に手を付けず申述手続きへ
    → [相続する] 遺品整理・売却などを自由に進める

遺品整理業者への依頼も、放棄を選ぶ可能性が残っているうちは待つのが安全です。

空き家相続放棄の手続きと必要書類

空き家相続放棄の手続きと必要書類のイメージ

💡 この章の要点: 手続きは 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 への申述(郵送可)。実費は 収入印紙800円+郵便切手+戸籍等の取得費で数千円程度。専門家に頼む場合の報酬目安は司法書士3〜10万円・弁護士5〜15万円程度。書類準備から受理まで1〜2ヶ月が目安。

手続きの流れ

裁判所の案内(相続の放棄の申述)に沿った流れは次のとおりです。

[1] 必要書類(戸籍等)を集める ......... 1〜3週間
        ↓
[2] 相続放棄申述書を書く ............. 1日(書式は裁判所サイトからDL)
        ↓
[3] 家庭裁判所へ提出(持参 or 郵送) ... 提出先は「被相続人の最後の住所地」の家裁
        ↓
[4] 裁判所からの照会書に回答 ......... 提出から数週間で届くことが多い
        ↓
[5] 相続放棄申述受理通知書を受領 ..... 全体で1〜2ヶ月が目安

自分の住所地ではなく 亡くなった方の最後の住所地 の家庭裁判所が窓口です。遠方でも郵送で完結できるので、そのために引っ越し先へ出向く必要はありません。

必要書類と実費

裁判所が案内する標準的な書類は、申述人の立場(続柄)によって変わります。

書類 誰の場合でも 取得先
相続放棄申述書 必要 裁判所サイトから書式DL・無料
被相続人の住民票除票 または 戸籍附票 必要 最終住所地(附票は本籍地)の市区町村
申述人(自分)の戸籍謄本 必要 自分の本籍地の市区町村
被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本 配偶者・子の場合 被相続人の本籍地の市区町村
被相続人の出生から死亡までの全戸籍 など 親・兄弟姉妹の場合に追加 同上(通数が増える)
  • 収入印紙: 800円(申述人1人につき)
  • 郵便切手: 連絡用。金額は裁判所ごとに指定される(申述先の家裁サイトで確認)
  • 戸籍関係の実費: 戸籍謄本450円・除籍/改製原戸籍750円が標準額(政令による標準。住民票除票は自治体により数百円)
  • 合計の目安: 配偶者・子の申述なら 3,000〜5,000円程度 に収まることが多い

後順位(兄弟姉妹など)の申述は「出生から死亡までの全戸籍」の収集が必要になり、通数も手間も一気に増えます。ここが自力での最初のつまずきどころです。

申述書の書き方のポイント

  • 放棄の理由: 「債務超過のため」「遠方に居住しており管理困難」など簡潔でよい。凝った理由付けは不要
  • 相続財産の概略: 分かる範囲の記載でよい(調査中なら「不明」も可)
  • 知った日: 起算日の欄は正確に。死亡日と違う場合は経緯もメモしておく
  • 提出前のコピー: 申述書と添付書類は一式コピーしてから提出する(照会書への回答時に内容を揃えるため)

照会書には期限内に必ず返送する

申述後、家庭裁判所から 照会書(質問書)が届くことがあります。「自分の意思で放棄するか」「財産を処分していないか」といった確認です。

  • 放置しない: 回答しないと審理が進まず、受理されないおそれがある
  • 申述書と矛盾させない: 提出済みの内容と食い違うと再確認で時間がかかる
  • 正直に書く: 形見分け等の事実は隠さず、判断に迷えば回答前に専門家へ

専門家に頼む場合の費用相場

依頼先 報酬の目安 できること
自分で 実費数千円 書類収集〜申述まで全部自力
司法書士 3〜10万円程度/1人 書類収集・申述書作成の代行(書類作成代理)
弁護士 5〜15万円程度/1人 手続き全体の代理+債権者対応・訴訟対応

報酬は事務所により幅があり、戸籍収集の量や申述人数で変わります(上記はあくまで目安)。期限まで1ヶ月を切っている・3ヶ月経過後・先順位の放棄がからむ数次のケース は、費用を惜しまず弁護士に依頼する場面です。

受理通知書は永久保管

受理されると届く 相続放棄申述受理通知書 は、債権者から請求が来たときに「放棄済み」を示す証拠になります。再発行されない書類なので、原本は永久保管してください。金融機関などに提出を求められた場合は、家庭裁判所に 受理証明書 の交付を申請して写しの代わりにします。手数料は裁判所の案内で 1通につき収入印紙150円(静岡家庭裁判所の案内)。提出先が複数あるなら、必要な通数をまとめて申請しておくと二度手間になりません。

空き家相続放棄しても保存義務は残る — 改正民法940条

💡 この章の要点: 2023年4月施行の改正民法940条により、放棄の時に空き家を 「現に占有」 していた人は、次の相続人か相続財産清算人に 引き渡すまで 保存義務を負う。逆に言えば、占有していなければ義務はなく、引き渡せば義務は終わる。固定資産税の納税義務者にはならない。

現行の民法940条(2023年4月1日施行)

「放棄すれば管理責任も消える」と言い切れないのは、この条文があるためです。改正前は義務の範囲が曖昧でしたが、2023年4月1日施行の改正で次のとおり明確になりました。

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。(民法940条1項・e-Gov法令検索)

条文を分解すると、義務が生じる条件と終わり方がはっきりします。

  • 義務を負う人: 放棄の時に、その財産を「現に占有している」人だけ
  • 義務の内容: 自分の財産と同程度の注意での「保存」(現状維持)
  • 義務の終わり: 次の相続人または相続財産清算人に 引き渡した時点

「現に占有」に当たるかの目安

状況 保存義務
被相続人と同居していた(その家に住んでいる) 生じる可能性が高い
別居だが、鍵を管理し定期的に出入りしていた 事実関係により生じうる
遠方に住み、鍵も持たず関与していない 通常は生じない

改正で「現に占有しているとき」に限定されたため、もともと関わりのなかった相続人まで管理責任を負う制度ではなくなりました。ただし「占有」の当てはめは事実関係次第の法的評価なので、微妙なケース(鍵は持っているが年1回しか行かない等)は弁護士に確認してください。

義務が残る場合にやること・やらなくてよいこと

  • やること(保存の範囲)
  • 施錠・戸締まり: 不法侵入や放火の誘発を防ぐ
  • 危険箇所の応急対応: 今にも落ちそうな屋根材・塀など、他人を傷つけうる部分の最低限の措置
  • 引き渡しの段取り: 次順位の相続人 or 清算人への引き継ぎを進める(義務を終わらせる唯一の方法)
  • やらなくてよいこと
  • 固定資産税の納付: 放棄が受理されれば初めから相続人でなかったことになるため(民法939条)、新たに納税義務者にはならない。市区町村から書類が届いたら、受理通知書の写しを添えて事情を伝える
  • 積極的な修繕・リフォーム: 求められるのは現状維持であり、価値を高める行為ではない

保存義務を軽く見てはいけない理由

空き家が倒壊して通行人や隣家に損害を与えた場合、土地の工作物の「占有者」は賠償責任を問われえます(民法717条)。放棄したのに空き家の事故で訴えられる、という最悪の筋書きを断つには、引き渡して義務を終わらせる ことが唯一の出口です。その引き渡し先が次の章のテーマになります。

放置された空き家に何が起こるかは 空き家を放置するリスク7つ で詳しく解説しています。

相続放棄した空き家はその後どうなる — 次順位・相続財産清算人・国庫

💡 この章の要点: 放棄された空き家は ① 次順位の相続人へ → ② 全員が放棄したら相続人不在 → ③ 相続財産清算人が清算 → ④ 最終的に国庫へ という流れをたどる。ただし③は誰かが申し立てて初めて始まり、予納金(名古屋家裁の案内では70万円程度) がかかる。

放棄後の行き先フロー

自分の手を離れた空き家がどこへ行くのか。全体の流れは次のとおりです。

[あなたが放棄]
    ↓
[次順位の相続人が相続] ─ 誰かが相続すれば、その人の財産としてここで終了
    ↓ (次順位も全員放棄)
[相続人不在の状態] ─ 空き家は宙に浮く。占有者の保存義務だけが続く
    ↓ (利害関係人が家庭裁判所に申立て)
[相続財産清算人が選任] ─ 清算人(弁護士等)が財産を管理・換価
    ↓
[債務の清算・売却] ─ 売れれば代金から債務を支払い
    ↓
[残余財産は国庫へ] ─ ここで完全に決着

注意すべきは、全員が放棄しても空き家が自動的に国のものになるわけではない ことです。清算人の選任を誰も申し立てなければ、法律上は宙に浮いたまま、占有者の保存義務だけが続きます。

相続財産清算人の選任申立て

相続人が誰もいなくなった財産は、家庭裁判所が選任する 相続財産清算人(2023年の改正で「相続財産管理人」から名称変更)が清算します(裁判所)。

  • 申立てできる人: 利害関係人(債権者・放棄した元相続人など)・検察官
  • 申立先: 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
  • 裁判所に納める実費: 収入印紙800円+郵便切手+官報公告料5,582円
  • 予納金: 清算費用・清算人報酬に不足が見込まれる場合に納付を求められる

予納金はいくらか

予納金の額は裁判所が事案ごとに決めるため、一律の金額はありません。目安として、名古屋家庭裁判所の申立ての手引きには「清算費用及び清算人報酬として、70万円程度を申立人に予納していただきます(事案により70万円を超える場合もあります)」とあります。

  • 返ってくる場合: 空き家が売れるなど、清算の中で報酬・費用を賄える財産が形成された場合
  • 返ってこない場合: 財産が形成されない場合は全額または一部が返還されない(名古屋家裁の手引き)
  • 判断の分かれ目: 売れる見込みのない過疎地の空き家ほど、予納金は「掛け捨て」に近づく

つまり「完全解放」には数十万円単位のコストがかかりうる、というのが放棄ルートの終着点の現実です。放棄を選ぶ前に売却可能性を確かめる意味は、ここにもあります。

相続土地国庫帰属制度は「放棄の代わり」にならない

「家を国に引き取ってもらう制度ができた」と聞いて調べている方も多いはずです。相続土地国庫帰属制度(2023年4月開始)は確かに存在しますが、空き家問題との相性には決定的な制約があります(法務省)。

  • 建物がある土地は申請できない: 却下事由に「建物がある土地」が明記されている。空き家が建ったままでは使えず、先に自費で解体が必要
  • 審査手数料: 土地一筆あたり14,000円(不承認でも返還されない)
  • 負担金: 承認されたら10年分の標準的な管理費相当を納付。原則20万円(市街化区域内の宅地・農地や森林は面積に応じて加算。施行令5条)
  • その他の要件: 境界が明らかでない土地・担保権付きの土地なども対象外

「解体費(通常100万円以上)+負担金20万円〜を払って土地を国に渡す」制度なので、タダで引き取ってもらう仕組みではありません。解体費の相場は 空き家の解体費用2026 を参照してください。

相続放棄の後に自分がやること、いつまでやるか

💡 この章の要点: 放棄後に残るのは「放棄の時に現に占有していた人」の保存義務だけで、遠方で関与していなかった相続人には義務がない。義務を終わらせる方法は 次の相続人か相続財産清算人への引き渡し の一つだけで、全員が放棄した空き家は清算人の選任を申し立て、選任後は6ヶ月以上の公告期間を経て清算される。売却の余地があるのは放棄の申述前に限られる。

自分に義務があるか、3つの問いで確かめる

条文と行き先は前の2章で見ました。それでも「で、自分は何をすればいいのか」は、まだ決まっていないはずです。判断は3つの問いに分けると決まります。

問い はい いいえ
放棄の時点で、その空き家を現に占有していたか(住んでいた、鍵を持って出入りしていた) 保存義務あり(民法940条1項) 義務なし。この章の残りは読まなくてよい
次順位の相続人がいて、相続する意思があるか その人に引き渡せば義務は終わる 全員放棄なら、引き渡し先は相続財産清算人
相続財産清算人はすでに選任されているか 清算人に引き渡せば義務は終わる 誰かが選任を申し立てるまで義務が続く

誰が、何を、いつまで

民法940条1項を実務の言葉に置き換えると、次の3点になります。

  • 誰が: 放棄の時に、その財産を 現に占有していた人 だけ。相続人の全員ではありません
  • 何を: 自己の財産におけるのと同一の注意 での保存。自分の家を扱うのと同じ程度の注意で、現状を保つことが求められます
  • いつまで: 相続人または相続財産清算人に 引き渡すまで。日付で区切られた期限ではなく、引き渡した時点で終わります

求められるのは現状維持です。施錠、雨漏りの応急処置、崩れそうな塀の養生といった「今より悪くしない」行為が中心で、価値を高める修繕までは含みません。

保存のために自分の財産から費用を出した場合に備えて、940条2項は委任の規定(650条)を準用しています。必要と認められる費用は、その利息とともに償還を請求できる建て付けなので、領収書は残しておきます。

占有していない相続人に義務がない理由

法務省の改正解説によれば、改正前の940条1項は放棄した人に管理の継続を求めるだけで、義務が生じる要件も内容も明らかではありませんでした。そのため、放棄したのに過剰な負担を強いられるケースがあった、というのが改正の出発点です。

2023年(令和5年)4月1日施行の改正で、義務を負う人は「放棄の時に現に占有している者」に限定され、内容も「引き渡すまでの保存」と明記されました。遠方に住み、一度も住んでおらず、鍵も持っていない相続人には、通常、義務は生じません。

ただし「現に占有」の当てはめは事実次第です。年に数回は様子を見に行き、鍵も持っている、という中間のケースは、前章の目安表のとおり弁護士に確認してください。

相続財産清算人の選任申立て、書類と流れ

次順位の相続人が全員放棄した(または最初からいない)なら、引き渡し先を作るために清算人の選任を申し立てます。裁判所に納める費用は前章のとおりです(収入印紙800円、郵便切手、官報公告料5,582円、予納金)。

  • 申し立てる人: 利害関係人(債権者、遺贈を受けた人、特別縁故者など)と検察官。放棄した元相続人が申し立てる場合も前章のとおりです
  • 申立先: 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
必要書類 備考
申立書 裁判所サイトに書式と記載例がある
被相続人の出生から死亡までの全戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 被相続人の父母の分も同じ範囲で必要
被相続人の子や兄弟姉妹で亡くなっている人の戸籍 該当する場合のみ
被相続人の住民票除票または戸籍附票
財産目録と裏付け資料 不動産登記事項証明書、預貯金の残高が分かる書類など
申立人の利害関係を証する資料 相続人全員が放棄した場合は、全員の相続放棄申述受理証明書(東京家庭裁判所の案内)
清算人候補者の住民票または戸籍附票 候補者を立てる場合

予納金は、申立て後に裁判所が事案に応じて決めます。大阪家庭裁判所の手引きには、金額は選任の直前に決まるため、申立ての検討段階で問い合わせても答えられない、とあります。

選任後の流れは条文で決まっています。

[申立て] 必要書類をそろえて家庭裁判所へ
    ↓
[選任の審判] 清算人(弁護士など)が決まる
    ↓ ここで鍵と書類を清算人に引き渡す → 保存義務はここで終わる
[家庭裁判所の公告] 選任の事実と「相続人がいるなら名乗り出るように」の公告。期間は6ヶ月以上(民法952条2項)
    ↓ (並行して)
[清算人の公告] 債権者と受遺者に「2ヶ月以上の期間内に請求を申し出るように」の公告(民法957条1項)
    ↓
[清算] 空き家の売却や債務の支払い
    ↓
[残余財産は国庫へ]

改正前は3つの公告を順番に行う必要があり、権利関係の確定に最低10ヶ月かかっていました。改正で選任の公告と相続人捜索の公告が一つに統合され、最低6ヶ月に短縮されています(法務省の改正解説)。

引き渡しで義務を終わらせる

清算人が選任されたら、鍵、登記事項証明書、固定資産税の通知書など手元にある物と書類を清算人に渡し、引き渡した日付が残る形(受領書やメール)にしておきます。これで940条の義務は終わります。次順位の相続人に引き渡す場合も同じです。

清算人の選任を誰も申し立てなければ、この日は来ません。占有していた人にとって、申立ては費用のかかる手続きですが、義務を終わらせる唯一の方法でもあります。

放棄後に空き家で起きること、どう動くか

放棄の受理通知が届いた後も、空き家は物理的にそこにあります。よくある3つの場面で、占有の有無によって対応が分かれます。

場面 占有していた人(義務あり) 占有していなかった人(義務なし)
屋根材や塀が崩れそう、台風で壊れた 通行人や隣家に被害が出ないよう応急措置(養生、立入防止)。本格修繕や取り壊しはしない 対応義務はない。連絡が来たら、放棄済みであることと占有していなかったことを伝える
近隣から草木や害虫の苦情 現状を悪化させない範囲で対応(草刈りなど)。引き渡し先の確保を急ぐ 同上
自治体から通知や連絡 相続放棄申述受理通知書の写しを示し、引き渡し先(次順位の相続人か清算人)の状況と申立ての予定を伝える 受理通知書の写しを示し、放棄済みであることを伝える

占有していた人が「取り壊せば片付く」と考えるのは危険です。取り壊しは現状維持ではないため、940条が求める保存の範囲を超えます。壊すかどうかの判断は、引き渡し先である清算人に委ねます。

買取業者が動けるのは放棄の申述前だけ

ここまで読んで「清算人の申立てより、業者に売ってしまえば早いのでは」と考える方もいるはずです。放棄後には、その道はありません。

  • 放棄が受理された後: 初めから相続人でなかったことになり(民法939条)、所有権がないので売却の契約ができません。清算人が選任されれば、売るかどうかは清算人が判断します
  • 放棄の申述前: 査定を取ることはできます。ただし売買契約を結ぶと財産の処分(民法921条1号)となり、その時点で放棄はできなくなります

つまり買取が意味を持つのは、放棄前に査定を取り、値が付くなら放棄せず相続して売る、という順序の中だけです。放棄と売却の費用比較は 代替案の章 にあります。

出典: 法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(令和8年4月版)、裁判所「相続財産清算人の選任」、東京家庭裁判所「相続財産清算人の選任」案内(令和6年10月)、大阪家庭裁判所「相続財産清算人選任申立ての手引き」、e-Gov法令検索「民法」940条、952条、957条、650条(いずれも2026年9月30日確認)

空き家相続放棄以外の選択肢 — 売却・買取・持分整理

空き家相続放棄以外の選択肢 — 売却・買取・持分整理のイメージ

💡 この章の要点: 放棄は「他の遺産も全部失う+完全解放にはさらに費用」という高コストの選択。借金が遺産を上回るのでない限り、まず「相続して売る」を検討する のが順序。ボロボロの空き家でも現況買取で値が付くケースは珍しくない。

放棄と売却、費用と結果の比較

「維持できないから放棄」と考えている方に一度立ち止まってほしいのは、放棄が最も「安い」選択とは限らないことです。

選択肢 かかる費用 手元に残るもの 空き家との関係
相続放棄 実費数千円+専門家報酬。全員放棄で清算人まで進むと予納金70万円程度〜 0円(他の遺産も全部放棄) 占有者は引き渡しまで保存義務
相続して現況買取 相続登記の費用(登録免許税等) 売却代金+他の遺産 完全に手離れ
相続して解体→土地売却 解体費100万円台〜 土地代金-解体費+他の遺産 完全に手離れ
共有持分のみ売却 ほぼ実費のみ 持分相当の代金(市場価値より大幅減) 自分の分だけ手離れ

放棄の前に「現況買取」の査定を取る理由

判断の順序として、放棄の申述前に買取査定を取ることをおすすめします。理由は3つあります。

  • 放棄は取り消せない(民法919条): 受理後に「実は売れた」と分かっても戻れない。査定は放棄前しか意味がない
  • 値が付けば構図が逆転する: 「維持費のかかる負債」が「換金できる資産」に変わり、他の遺産を失う理由が消える
  • 査定は無料で、放棄の期限を消費しない: 現況買取の査定は数日〜1週間程度。3ヶ月の熟慮期間内に十分収まる

買取が向くのは、遠方で管理できない・残置物が大量・築古で傷んでいる・再建築不可などの訳あり といった、まさに「放棄したくなる条件」の物件です。買取業者は解体や残置物処分を織り込んで値付けするため、一般の買い手が付かない物件でも買取可能なことがあります。

一方で買取にも限界はあります。土地の需要が皆無に近いエリア・接道せず再建築も転用もできない土地 などは、買取業者でも値付けできないことがあります。その場合に初めて「放棄(+清算人費用)」と「相続して維持」の比較になります。

訳あり物件の売却実務は 訳あり物件の売却、買取と仲介の違いは 空き家の買取と仲介どちらが得? を参照してください。

共有持分だけ手放す道もある

兄弟で共有相続してしまった空き家から自分だけ抜けたい場合、自分の持分のみの売却 という手段もあります。共有名義の出口は 空き家の共有名義 にまとめています。

実例: 築45年・地方の相続空き家、放棄か売却か迷ったモデルケース

💡 この章の要点: 財産調査に時間がかかる場合は 期間伸長の申立て で時間を確保できる。調査の結果「借金なし+買取で値が付く」なら放棄せず売却へ、が典型的な着地。以下は制度の使い方を示す 架空の試算例。

制度を時系列に並べるとどう動くことになるのか、よくある状況を組み合わせた架空のモデルケースで確認します(金額は仮定の試算です)。

設定: 地方都市郊外の一戸建て(築45年)。一人暮らしの父が1月に死亡。県外在住の長女が相続人で、父とは疎遠だったため 借金の有無が分からない。家財は残置されたまま。

時系列でみる判断の流れ

時期 起きたこと・やったこと 使った制度
1月 父死亡。死亡日に知ったため熟慮期間の起算開始(期限は4月) 民法915条
1月下旬 遺品整理に着手しかけて中断。「放棄の可能性があるうちは家財に触らない」と知る 民法921条
2月 信用情報機関への開示請求などで借金を調査。回答待ちで時間が過ぎる —
3月中旬 調査が終わらないため、家裁に熟慮期間の伸長を申立て(印紙800円) 期間伸長
4月 裁判所が期間の伸長を認める。並行して空き家の現況買取査定を依頼(無料) —
5月 調査完了: 借金なし・預金150万円。買取査定は残置物込みで200万円の提示 —
5月下旬 「放棄すれば0円、相続すれば約350万円+登記費用等の負担」と比較し、放棄せず相続を選択 —
6〜7月 相続登記 → 現況のまま買取業者へ売却。残置物処分は業者側で対応 —

このケースから読み取れること

  • 遺品整理を止めたのが分岐点: 先に家財を処分していたら、借金が見つかった場合に放棄の道が閉ざされていた(法定単純承認)
  • 伸長の申立ては「保険」として機能した: 期限内に申し立てたことで、調査を焦って打ち切らずに済んだ
  • 査定が判断を確定させた: 「売れない前提」で考えていた放棄が、査定額が出た瞬間に比較可能な選択肢になった
  • 借金が預金を上回っていれば逆の結論: その場合は家財に手を付けないまま申述に進むのが正解になる

空き家相続放棄のよくある質問

1. 相続放棄したら借金の取り立てから逃れられますか?

受理されれば、初めから相続人でなかったことになり(民法939条)、借金を引き継ぎません。債権者から請求が来たら受理通知書(または受理証明書)の写しを示します。ただし放棄前に遺産から返済してしまった分の扱いは複雑なので、支払う前に専門家へ相談してください。

2. 相続放棄後、固定資産税は払うのですか?

新たに納税義務者にはなりません。放棄により初めから相続人でなかったことになるためです。ただし空き家を現に占有していた場合、税金とは別に 保存義務(民法940条)が引き渡しまで残ります。

3. 他の相続人が放棄に反対しています。1人でも放棄できますか?

できます。相続放棄は各相続人が単独で申述できる手続きで(民法938条)、他の相続人の同意は不要です。限定承認(相続人全員で行う)との違いです。

4. 私が放棄すると、私の子どもに相続が回りますか?

回りません。代襲相続が起こるのは相続開始以前の死亡・欠格・廃除の場合で(民法887条2項)、放棄は代襲の原因になりません。相続権は「あなたの子」ではなく、次順位(被相続人の親→兄弟姉妹)へ移ります。

5. 放棄した後に高価な遺品が見つかったら受け取れますか?

受け取れません。放棄は撤回できず(民法919条)、受け取れば財産の隠匿・消費として放棄の効果を失うおそれもあります(民法921条3号)。「見つかるかもしれない財産」があるなら、放棄前の財産調査と期間伸長で潰しておくべき論点です。

6. 全員が放棄したら、空き家は自動的に国のものになりますか?

なりません。誰かが家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、清算を経て初めて国庫に帰属します。申立てには実費(印紙800円+官報公告料5,582円)に加え、予納金(名古屋家裁の案内では70万円程度)が必要になることがあります。

7. 3ヶ月を過ぎてしまいました。もう打つ手はありませんか?

原則は単純承認の確定ですが、即断しないでください。起算点(「知った時」)がいつかの評価によっては申述が受理される余地があり、これは個別事情に対する裁判所の判断です。自力で申述書を出す前に、必ず弁護士に相談してください。

8. 相続放棄したことは親族に知られますか?

次順位の相続人には事実上伝わります。相続権が移った人は、家庭裁判所への照会(相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会)で放棄の有無を確認できます。この照会は相続人と利害関係人(債権者など)が申請でき、手数料は無料です(返信用の切手は必要。静岡家庭裁判所の案内)。トラブル防止のため、放棄を決めた時点で自分から次順位の親族へ知らせておくことをおすすめします。

9. 放棄を検討中ですが、実家の電気・水道を止めたり、庭の草を刈ったりしても大丈夫ですか?

現状維持のための行為(保存行為)は通常問題ありません(民法921条1号ただし書)。光熱費の解約、施錠、腐敗する物の処分などは一般に保存の範囲です。一方、家財の売却や建物の取り壊しは処分に当たりえます。迷う行為は先に専門家へ確認してください。

10. 債権者から「放棄した証明を出せ」と言われました。受理通知書のコピーで足りますか?

通知書の写しで足りる場合もありますが、正式な証明を求められたら家庭裁判所で受理証明書を取ります。申請できるのは申述人本人と、債権者などの利害関係人で、手数料は1通につき収入印紙150円です(静岡家庭裁判所の案内)。債権者の側から直接、家庭裁判所に放棄の有無を照会することもできるため、「自分で証明書を取って送る」と「先方に照会してもらう」のどちらでも対応できます。

動くなら早いほうが選択肢が多い

空き家には「特定空家指定で固定資産税が最大6倍」「相続から3年以内の譲渡で3,000万円特別控除」など、期限のある制度が複数あります。 売却を決める前でも、いま無料査定を取っておくだけで判断材料が増えます。

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まとめ — 「放棄すれば全部解決」の前に確かめること

最後にもう一度、空き家の相続放棄のポイントを整理します。

  • 期限は知った時から3ヶ月(民法915条)。間に合わなければ期間伸長の申立て(印紙800円)を期限内に
  • 放棄前に遺産に手を付けない(民法921条)。遺品整理は放棄の可否が決まってから
  • 手続きは家裁への申述。実費数千円・専門家報酬は3〜15万円程度が目安・受理まで1〜2ヶ月
  • 占有していれば保存義務が残る(民法940条)。引き渡しで義務は終わる
  • 完全解放には清算人の申立てが必要になりうる。予納金は名古屋家裁の案内で70万円程度
  • 放棄は全遺産を失う選択。借金超過でないなら、先に現況買取の査定で「売れるか」を確かめる

法制度の適用は個別事情で結論が変わります。この記事で全体像をつかんだら、最終判断は弁護士・司法書士に確認したうえで進めてください。

関連: 空き家を相続したら何から始める?5ステップ完全ガイド / 空き家相続の期限カレンダー / 空き家相続後の判断フロー / 空き家の共有名義

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