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税金 - 空き家の譲渡所得税|長期・短期の税率と課税の仕組み【2026】
税金

空き家の譲渡所得税|長期・短期の税率と課税の仕組み【2026】

空き家を売ろうと決めて税金を調べ始めると、20.315%と39.63%という二つの税率にぶつかります。同じ家を売るのに、どちらに当てはまるかで納める税金は倍近く変わります。

この差を分けるのは所有期間です。そして相続した空き家には、この判定で売主に有利にはたらく引き継ぎのルールがあります。

結論を先にお伝えすると、押さえるべきポイントは次の3つです。

  • 課税されるのは売却額ではなく利益: 売却額から取得費と譲渡費用を差し引いた残りにだけ税金がかかります
  • 税率は長期20.315%か短期39.63%: 分かれ目は「譲渡した年の1月1日時点」で所有期間が5年を超えるかどうかです
  • 相続した空き家は親の取得日を引き継ぐ: 相続した直後に売っても、親が長く持っていた家なら長期の税率で済みます

この記事では、国税庁タックスアンサー(No.3202、No.3208、No.3211、No.3258)をもとに、譲渡所得税という税金の仕組みそのものを整理します。ケース別にいくら残るかの試算は空き家売却の税金シミュレーションに、申告のやり方は売却の確定申告の記事に譲ります。

空き家の譲渡所得税の状況別ガイド

空き家の譲渡所得税の状況別ガイドのイメージ

あなたの状況 読むべきセクション
そもそもどんな税金か知りたい 空き家の譲渡所得税とはどんな税金か
何に課税されるのか知りたい 譲渡所得の計算式と課税対象になる金額
税率を知りたい 長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率
5年の数え方が不安 所有期間5年の数え方と判定日
相続した空き家を売る 相続した空き家の所有期間はいつから数えるか
親が買った金額が分からない 取得費に入るものと概算取得費
経費にできる費用を知りたい 譲渡費用に入るものと入らないもの
いつ払うのか知りたい 譲渡所得税を納めるタイミング

空き家の譲渡所得税とはどんな税金か

空き家の譲渡所得税とはどんな税金かのイメージ

💡 この章の要点: 譲渡所得税は独立した税目ではなく、所得税・復興特別所得税・住民税の3つを合わせた通称です。給与などと合算しない分離課税なので、年収が高くても低くても、空き家売却の税率は変わりません。

正体は3つの税金の合算

「譲渡所得税」という名前の納付書は存在しません。空き家を売った利益には次の3つの税金がかかり、その合計が通称として譲渡所得税と呼ばれています。

  • 所得税: 国に納める税金。売った年の翌年に確定申告して納付します
  • 復興特別所得税: 所得税額の2.1%。東日本大震災の復興財源として、平成25年から令和19年(2013〜2037年)まで所得税に上乗せされます
  • 住民税: 都道府県と市区町村に納める税金。納める時期が所得税とずれる点は最終章で確認します

給与とは切り離して計算される分離課税

所得税は所得が増えるほど税率が上がる、と聞いたことがあるはずです。それなら空き家の売却で大きな利益が出た年は、給与の税率まで跳ね上がるのでしょうか。

そうはなりません。不動産の譲渡所得は分離課税といって、他の所得と切り離して税額を計算します(国税庁No.3202)。

  • 給与や年金と合算しない: 売却の利益がいくら大きくても、給与側の税率には影響しません
  • 給与の多い少ないも影響しない: 年収が高い人も低い人も、譲渡所得にかかる税率は同じです
  • 税率を決めるのは所得の大きさではなく、後の章で見る所有期間です

ふだんの所得税との違いを表で並べると、次のようになります。

項目 給与などの所得 空き家の譲渡所得(分離課税)
税額の計算 他の所得と合算して計算 他の所得と切り離して計算
税率の決まり方 所得が増えるほど上がる 所有期間(長期か短期か)で決まる
空き家を売った年の影響 売却益が大きくても税率は変わらない この記事で見ていく税率がかかる

保有中の税金とは別物

譲渡所得税は「売ったとき」に一度だけ発生する税金です。空き家を持っているあいだ毎年かかる税金とは別物なので、切り分けて考えてください。

  • 保有中に毎年かかる税金: 固定資産税が代表です。管理状態によって負担が変わる論点も含めて空き家の固定資産税の記事で解説しています
  • 持つ・売る・相続の税金の全体像: 空き家の税金まるわかりにマップがあります
  • この記事が扱うのは「売ったとき」の税金だけです

この記事で使う言葉

税金の記事は用語でつまずきがちなので、最初にまとめて押さえておきます。

  • 譲渡: 売却のこと。税金の世界では「売る」を「譲渡する」と言います
  • 譲渡所得: 売却で出た利益のうち、課税の対象になる金額
  • 被相続人: 亡くなった人。この記事では主に「親」を指します
  • 取得費: その家を手に入れるためにかかったお金
  • 譲渡費用: 売るためにかかったお金

譲渡所得の計算式と課税対象になる金額

💡 この章の要点: 税金がかかるのは売却額の全体ではなく、そこから取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた「課税譲渡所得」だけです。差し引いた結果がゼロ以下なら、譲渡所得税はかかりません。

計算式は引き算が3回

国税庁No.3202の計算式は次のとおりです。

収入金額(売却額)
 −  取得費(その家を手に入れるのにかかったお金)
 −  譲渡費用(売るためにかかったお金)
 −  特別控除額(使える特例がある場合)
 = 課税譲渡所得金額

課税譲渡所得金額 × 税率 = 譲渡所得税
  • 収入金額: 空き家を売って受け取る金額です
  • 取得費: 購入代金や購入手数料などの合計。中身は取得費の章で確認します
  • 譲渡費用: 仲介手数料など。入るものと入らないものは譲渡費用の章で一覧にします
  • 特別控除額: 要件を満たす特例を使う場合に差し引ける金額です

「売却額×税率」ではない

2,000万円で売れたら2,000万円に課税される、と思われがちですが、違います。課税されるのは引き算の残りだけです。

  • 取得費と譲渡費用の合計が売却額を上回れば、課税譲渡所得はゼロで、譲渡所得税はかかりません
  • 利益が出るケースでも、差し引ける金額を漏らさず拾うことが、そのまま税額の圧縮になります
  • 利益が出るか際どいケースの試算は空き家売却の税金シミュレーションで確認してください

引き算の流れを、仮の数字でひととおりなぞってみます。実例ではなく、式の使い方を示すための仮定の計算例です。

【仮定】売却額1,800万円・取得費900万円・譲渡費用60万円
        特別控除なし・長期譲渡

課税譲渡所得 = 1,800万円 − 900万円 − 60万円
             = 840万円

税額         = 840万円 × 20.315%(長期の税率)
             ≒ 約171万円
  • 売却額1,800万円に対して、税率がかかるのは840万円だけです
  • ここで使った20.315%は固定の一択ではなく、所有期間しだいで39.63%に跳ね上がります

特別控除は金額が大きい

計算式の最後の引き算である特別控除は、使えるかどうかで税額が大きく変わります。相続した空き家では、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例が代表格です。

  • 空き家の3,000万円特別控除: 6つの要件と失敗例は専門記事で確認してください
  • 取得費加算の特例: 相続税を納めた人は、その一部を取得費に上乗せできます。詳細は取得費加算の特例の記事が担当です
  • この記事の以降の説明は、特例を使わない前提の「素の計算」で進めます

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率

💡 この章の要点: 譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えると長期譲渡所得で合計20.315%5年以下だと短期譲渡所得で合計39.63%です。同じ利益でも、納める税金は倍近く違います。

税率の比較表

項目 長期譲渡所得 短期譲渡所得
所有期間 譲渡した年の1月1日時点で5年を超える 譲渡した年の1月1日時点で5年以下
所得税 15% 30%
復興特別所得税 所得税額の2.1% 所得税額の2.1%
住民税 5% 9%
合計税率 20.315% 39.63%
出典 国税庁No.3208 国税庁No.3211

20.315%と39.63%の組み上がり

合計の数字を丸暗記する必要はありません。3つの税金を足し上げると、自然にこの数字になります。

【長期譲渡所得】
所得税            15%
復興特別所得税    15% × 2.1% = 0.315%
住民税             5%
─────────────────────────
合計              20.315%

【短期譲渡所得】
所得税            30%
復興特別所得税    30% × 2.1% = 0.63%
住民税             9%
─────────────────────────
合計              39.63%
  • 復興特別所得税は「所得の2.1%」ではなく「所得税額の2.1%」です。長期なら15%×1.021=15.315%、これに住民税5%を足して20.315%と検算できます
  • 長期と短期では、所得税(15%と30%)と住民税(5%と9%)の両方が違います

同じ利益でどれだけ差が出るか

課税譲渡所得が1,000万円だったとして、長期と短期を比べます。実例ではなく、差の大きさを示すための仮定の計算例です。

項目 長期(20.315%) 短期(39.63%)
課税譲渡所得 1,000万円 1,000万円
税額 203万1,500円 396万3,000円
  • 差は約193万円。売る時期がひとつの判定日をまたぐかどうかで、これだけ変わります
  • では、その判定日はどう数えるのか。ここが譲渡所得税でいちばん誤解の多いところです

所有期間5年の数え方と判定日

💡 この章の要点: 判定は売った日ではなく「譲渡した年の1月1日時点」で行います。実際には5年以上持っていても、判定上は短期になる期間があります。取得した年に6を足した年の1月1日以降に売れば長期です。

「買ってから5年」で数えると間違える

2020年3月1日に取得した空き家を、2025年6月に売ったとします(日付は説明用の仮の例です)。カレンダーの上では5年3か月持っていました。「5年を超えているから長期」と考えたくなりますが、この売却は短期です。

判定に使うのは、売った日ではなく譲渡した年の1月1日だからです。

取得日: 2020年3月1日

【2025年6月に売却した場合】
  判定日: 2025年1月1日
  判定日時点の所有期間: 4年10か月 → 5年以下 → 短期(39.63%)

【2026年に入ってから売却した場合】
  判定日: 2026年1月1日
  判定日時点の所有期間: 5年10か月 → 5年超 → 長期(20.315%)
  • 実際の所有期間は5年3か月でも、判定上は4年10か月として扱われます
  • 同じ物件でも、売却が年をまたぐだけで税率が倍近く変わることになります

迷わないための早見ルール

1月1日基準の数え方は、次のように置き換えると間違えません。

  • 取得した年に6を足した年の1月1日以降に売れば長期: 2020年中に取得したなら、取得日が何月何日でも、2026年以降の売却は長期です
  • ちょうど5年は短期: 「5年以下」に含まれるため、判定日時点でぴったり5年の場合も短期です
  • 取得日や譲渡日の細かい判定(契約日と引き渡し日のどちらで見るかなど)は結果を左右します。際どい日程なら税務署・税理士に確認してください

取得した年ごとの早見表にすると次のとおりです。

取得した年 短期になる売却(39.63%) 長期になる売却(20.315%)
2020年 2025年まで 2026年以降
2021年 2026年まで 2027年以降
2022年 2027年まで 2028年以降
2023年 2028年まで 2029年以降

自分のケースを確かめる手順

手元の書類があれば、判定は4ステップで終わります。

STEP1  取得日を確かめる
        → 買ったときの売買契約書などの書類で確認
STEP2  売る予定の年の「1月1日」を判定日に置く
STEP3  取得日から判定日までの年数を数える
STEP4  5年を超えていれば長期(20.315%)
        5年以下なら短期(39.63%)
  • STEP1でつまずいたら: 取得日の分かる書類が見つからない場合は、税務署・税理士に確認の方法を相談してください
  • STEP3が5年前後なら: ちょうど5年は短期に含まれます。1年待つかどうかの判断がからむため、自己判定で確定させず専門家に確認するのが安全です

境目が近いなら売り時の判断材料になる

短期と長期の境目が迫っているなら、売却のタイミングは税額に直結します。

  • 判定日をひとつ越えるだけで税率が39.63%から20.315%に下がるなら、売却時期の調整は検討に値します
  • 一方で、待つあいだも毎年の固定資産税と管理の負担は続きます。空き家の固定資産税の記事の負担額と天秤にかけてください
  • もっとも、相続した空き家では、この境目の心配がそもそも要らないケースが多数派です

相続した空き家の所有期間はいつから数えるか

💡 この章の要点: 相続や贈与で取得した不動産は、被相続人(親)が取得した日から所有期間を数えます(国税庁No.3202)。相続した直後に売っても、親が5年を超えて持っていた家なら長期の20.315%です。

「相続したばかりだから短期」は誤解

相続した空き家を数年内に売る人は多く、「自分が所有してからまだ1年だから、39.63%取られるのでは」という不安がついて回ります。この不安は、たいてい根拠がありません。

  • 取得日の引き継ぎ: 相続や贈与で取得した財産は、原則として被相続人や贈与者が取得した日から所有期間を計算します
  • 判定の起点は「相続した日」ではなく「親がその家を買った日」です
  • 親が何十年も住んだ実家なら、引き継いだ所有期間は5年をはるかに超えています

日付例で確認する

親が自宅を購入        : 1995年
親が死亡・相続開始    : 2025年
子が空き家を売却      : 2026年
                        ↓
所有期間の起点は1995年(親の取得日)
→ 2026年1月1日時点で30年超 → 5年超 → 長期(20.315%)

※日付は説明用の仮の例です
  • 相続からわずか1年での売却でも、判定上の所有期間は30年を超えます
  • 「相続後しばらく待ってから売る」といった調整は、税率の面では不要です

引き継ぐのは取得日だけではない

相続で引き継ぐものは、所有期間の起点と取得費のふたつです。セットで押さえておくと、後の計算で迷いません。

  • 取得日の引き継ぎ: 所有期間の判定が親の取得日から始まります。長期・短期の判定に効きます
  • 取得費の引き継ぎ: 親が買ったときの代金や購入手数料が、売主の取得費になります。課税対象の利益の計算に効きます
  • どちらも自動的な扱いで、申請は不要です。必要なのは金額や日付を裏付ける書類のほうです
  • 親の購入額が分からないときの扱いは取得費の章で説明します

例外になりうるケース

引き継ぎの起点は親の取得日なので、親の所有期間が短ければ話は変わります。

  • 親が晩年に住み替えていた場合: 親の取得日から数えても、譲渡した年の1月1日時点で5年以下なら短期です
  • 親の取得日が分からない場合: 親の売買契約書などの書類で確認します。見つからないときの対応は税務署・税理士に相談してください
  • 生前贈与で受け取った家も原則は贈与者の取得日を引き継ぎますが、個別の事情で扱いが変わりえます。適用の最終確認は税務署・税理士へ

相続空き家は特例もあわせて確認する

取得日の引き継ぎで長期になるのは、入り口にすぎません。相続した空き家には、課税対象の利益そのものを減らす特例が用意されています。

  • 空き家の3,000万円特別控除: 譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。要件と申請手続きは専門記事で確認してください
  • 取得費加算の特例: 納めた相続税の一部を取得費に上乗せできます。要件と期限の数え方は取得費加算の記事が担当です
  • 二つの特例のどちらを選ぶかの判定手順も、上記の記事で整理しています

取得費に入るものと概算取得費

💡 この章の要点: 取得費は購入代金と購入手数料に、その後の改良費・設備費を加えた合計です。ただし建物は減価償却費相当額を差し引きます。金額が分からないときは売却額の5%(概算取得費)を使えますが、税負担は重くなりがちです。

取得費の中身

国税庁No.3202が定める取得費の範囲は、次のとおりです。

費用 取得費の扱い
購入代金(相続なら親が買ったときの代金) 入る
購入したときの仲介手数料などの購入手数料 入る
購入後に支出した改良費・設備費 入る
建物の減価償却費相当額 差し引く
  • 購入代金: その物件を買ったときの代金です。相続した空き家では、取得日と同じく親が買ったときの金額を引き継ぎます
  • 改良費・設備費: 買った後のリフォーム費用や設備の追加費用が該当します
  • 領収書や契約書が金額の裏付けになります。売却を考え始めた時点で集めておきましょう

建物は「買った値段」から目減りする

土地の取得費は買った金額のままですが、建物は違います。

  • 建物の取得費は、購入代金などの合計から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額です(No.3202)
  • 建物は使用や年月で価値が減っていく、という考え方が計算に織り込まれています
  • 築年数の古い空き家では、建物部分の取得費はかなり小さくなっています。具体的な減価償却の計算は税務署・税理士に確認してください

取得費が分からないときの概算取得費

親が買った家の売買契約書が見つからない。相続空き家では珍しくない状況です。このときのために、国税庁No.3258は概算の方法を認めています。

  • 概算取得費: 取得費が分からないときは、売った金額の5%相当額を取得費にできます
  • 実際の取得費が売却額の5%未満のときも、5%を使えます
  • 概算取得費を使う場合も、申告の流れは通常の確定申告と同じです。手続きは売却の確定申告の記事で確認してください

概算取得費5%の重さを試算で見る

売却額の5%という取得費がどれだけ税額に響くか、仮の数字で確かめます。実例ではなく、仕組みを示すための仮定の計算例です。

【仮定】売却額1,500万円・取得費不明・譲渡費用60万円
        長期譲渡・特別控除なし

概算取得費   = 1,500万円 × 5% = 75万円
課税譲渡所得 = 1,500万円 − 75万円 − 60万円 = 1,365万円
税額         = 1,365万円 × 20.315% ≒ 約277万円
  • 売却額の9割以上が「利益」とみなされる計算になります
  • 親の契約書が見つかり、実際の購入額を取得費にできれば、課税対象はそのぶん縮みます
  • 実家の書類の保管場所や、購入を仲介した会社に記録がないかを探す価値は、税額に直結します

契約書が見つかった場合との差も、同じ仮定の数字で並べてみます(取得費900万円が判明したとします)。

項目 概算取得費(5%) 実際の取得費が判明
取得費 75万円 900万円
課税譲渡所得 1,365万円 540万円
税額(長期20.315%) 約277万円 約110万円
  • 書類が1枚見つかるかどうかで、この仮定では約167万円の差になります
  • 「契約書探し」は面倒な作業に見えて、空き家売却でもっとも割のいい時間の使い方のひとつです

譲渡費用に入るものと入らないもの

💡 この章の要点: 譲渡費用と認められるのは売るために直接かかった費用だけです。仲介手数料や取壊し費用は入りますが、固定資産税・引越し費用・修繕費は入りません

可否の一覧表

国税庁No.3202が譲渡費用の例として挙げるものと、対象にならない費用を並べます。

費用 譲渡費用になるか
仲介手数料 なる
測量費 なる
売買契約書の印紙代 なる
借家人に支払った立退料 なる
建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用 なる
固定資産税 ならない
引越し費用 ならない
修繕費(維持や管理のための費用) ならない

「なる」側の項目を、空き家売却の場面に当てはめておきます。

  • 仲介手数料: 仲介で売るときに不動産会社へ支払う手数料です
  • 測量費: 土地の境界をはっきりさせて売るためにかかった測量の費用です
  • 売買契約書の印紙代: 契約書に貼る収入印紙の代金です
  • 立退料: 貸していた家を明け渡してもらうために、借家人へ支払ったお金です
  • 取壊し費用: 建物を取り壊して土地を売るときの解体費用です。この一覧の中では金額がいちばん大きくなりやすい項目です

判定の軸は「売るために直接かかったか」

入るか入らないかで迷ったら、この一点で考えます。

  • 売るために直接かかった費用: 譲渡費用になります。仲介手数料や売買契約書の印紙代はその典型です
  • 持っているあいだの維持費: なりません。固定資産税や修繕費は、売却しなくても発生する費用だからです
  • 判断に迷う費用は、領収書を保管したうえで税務署・税理士に確認してください

空き家で大きいのは取壊し費用

空き家を更地にして売るケースでは、取壊し費用が譲渡費用の中で最も大きくなりがちです。

  • 建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用は、譲渡費用に入ります(No.3202)
  • 解体してから売る予定なら、工事の契約書や領収書を必ず残してください
  • 取り壊して売るか、現況のまま買取に出すかの比較は買取と仲介の比較記事も参考になります

譲渡所得税を納めるタイミング

💡 この章の要点: 譲渡所得税は売却代金から天引きされません。売った年の翌年に確定申告して所得税を納付し、住民税は翌年6月以降に課されます。売却代金を使い切ると、納税資金が残りません。

納付は売却の翌年

売却代金は税引き前の金額で振り込まれます。納税は後からやってきます。

売った年      : 売買契約・決済・代金の受け取り
                 ↓
翌年          : 確定申告 → 所得税+復興特別所得税を納付
                 ↓
翌年6月以降   : 住民税の納付が始まる
  • 申告するのは売った年の翌年: 譲渡した年分の確定申告で、譲渡所得を申告します
  • 住民税は遅れてやってくる: 申告からさらに間が空いて、翌年6月以降に課されます
  • 申告の必要書類や書き方、申告しないとどうなるかは売却の確定申告の記事で解説しています

納税資金を先に取り分けておく

納税までに時間差があるぶん、売却直後は代金の全額が「使えるお金」に見えます。ここが落とし穴です。

  • 売却代金を受け取ったら、この記事の計算式で税額の概算を出し、先に取り分けておくのが安全です
  • 目安は課税譲渡所得の約2割(長期)または約4割(短期)です
  • 自分のケースの見込み額は空き家売却の税金シミュレーションの計算テンプレートで確かめられます

売った年と翌年にやることの整理

時系列でやることを並べておきます。

  • 売った年のうちに: 売買契約書、仲介手数料などの領収書、取得費の裏付け書類をひとまとめにする。税額の概算を出して納税分を取り分ける
  • 翌年の確定申告で: 譲渡所得を申告し、所得税と復興特別所得税を納付する
  • 翌年6月以降: 住民税の納付が始まる。所得税を払い終えても、まだ終わりではありません
  • 申告を忘れるとどうなるかも含めて、手続きの詳細は売却の確定申告の記事で確認してください

空き家の譲渡所得税のよくある質問

1. 売却額の全体に税率をかけるのですか?
いいえ。課税されるのは、売却額から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた「課税譲渡所得」だけです。
2. 利益が出なければ税金はかかりませんか?
取得費と譲渡費用の合計が売却額を上回り、課税譲渡所得がゼロ以下なら、譲渡所得税はかかりません
3. 相続してすぐ売ると短期譲渡になりますか?
多くの場合、なりません。相続で取得した不動産は、被相続人(親)が取得した日から所有期間を数えるためです。
4. 年収が高いと譲渡所得税の税率も上がりますか?
上がりません。不動産の譲渡所得は分離課税で、給与など他の所得と切り離して税額を計算します。
5. 概算取得費の5%を使うと損ですか?
実際の取得費が売却額の5%を上回るなら、概算取得費を使うほうが税負担は重くなります
6. 税金はいつ、どうやって払いますか?
売った年の翌年に確定申告し、所得税と復興特別所得税を納付します。住民税はさらに遅れて、翌年6月以降に課されます。
7. 3,000万円控除を使うと税率が下がるのですか?
税率は変わりません。特別控除は、税率をかける前の「課税譲渡所得」を減らす仕組みです。
8. 復興特別所得税はいつまで上乗せされますか?
平成25年から令和19年(2013〜2037年)までの各年分の所得税に、所得税額の2.1%が上乗せされます(国税庁No.3208)。
9. 売り出し中に払った固定資産税は経費になりますか?
なりません。固定資産税は空き家を持っていること自体にかかる税金で、売るために直接かかった費用ではないためです。
10. 業者の買取で売っても、税金の仕組みは同じですか?
同じです。この記事で見た計算式と税率は、仲介で個人に売っても、業者の買取で売っても変わりません。
11. リフォーム費用は取得費と譲渡費用のどちらに入りますか?
買った後に支出した改良費・設備費は取得費に入ります(No.3202)。一方、維持や管理のための修繕費は譲渡費用には入りません。
12. 長期か短期かは、誰かが判定して知らせてくれますか?
知らせてはくれません。譲渡所得は確定申告で自分から申告する税金で、長期・短期の判定も申告する側が行います。 最後にもう一度、空き家の譲渡所得税のポイントを整理します。 冒頭の二つの税率に戻ると、相続空き家の売主が確かめる順番は決まっています。まず取得日の引き継ぎで長期の20.315%になることを確認する。次に、特別控除で課税対象そのものを減らせないかを検討する。この順番で見ていけば、倍近い税率差に振り回されずに済みます。 関連: 空き家売却の税金シミュレーション / 空き家3,000万円特別控除 / 取得費加算の特例 / 売却の確定申告 / 空き家の税金まるわかり