空き家の相続登記義務化|期限・過料・自分でやる方法【2026年版】
「祖父名義のまま放置されている実家」「親が亡くなって名義変更をまだしていない空き家」——2024年4月から、これらすべてが過料(10万円以下)の対象になる 相続登記義務化 が始まりました。
この記事では、空き家の相続登記義務化について 期限・過料の仕組み、過去の相続の遡及適用、相続人申告登記 という救済策、自分でやる方法 と司法書士に頼む場合の相場、数次相続 など複雑なケースの対応まで、法務省の公式情報を踏まえて整理します。
結論を先にお伝えすると、空き家の相続登記義務化で押さえるべきポイントは次の3点です。
- 期限: 不動産取得を知った日から 3年以内 に申請必須
- 過料: 違反した場合は 10万円以下の過料(行政罰)
- 過去の相続も対象: 2024年4月1日以前の相続も、2027年4月1日まで に登記完了が必要
「うちは祖父名義のまま」「親が10年前に亡くなったが何もしていない」というケースも、すべて対象です。
空き家相続登記義務化、いまの状況は? — 状況別ジャンプガイド
| 今の状況 | おすすめの読み始め |
|---|---|
| 義務化の概要を知りたい | 義務化の仕組みと期限 |
| 過去の相続(祖父名義のまま)が気になる | 過去の相続も対象 — 2027年4月まで |
| とりあえず違反を避けたい | 相続人申告登記の救済策 |
| 自分で登記する方法を知りたい | 自分でやる方法と費用 |
| 司法書士に頼みたい、相場が気になる | 司法書士の費用相場 |
| 数次相続・共有名義など複雑なケース | 複雑なケースの対応 |
空き家相続登記義務化の概要 — 期限と過料の仕組み

💡 TL;DR: 2024年4月1日施行。不動産取得を知った日から 3年以内 に申請必須。正当な理由なく違反すれば 10万円以下の過料。遺産分割が成立した場合は 遺産分割成立日から3年以内 が期限。
義務化の背景 — 所有者不明土地問題
日本では、相続登記がされないまま放置された土地・空き家が 約410万ha(九州全体の面積に匹敵)に達し、所有者特定が困難な「所有者不明土地」問題が深刻化していました。
公共事業の用地買収・空き家対策・農地集約などで、所有者と連絡が取れない事例が多発。この対策として、2021年に法律が成立し、2024年4月1日に施行されました。
期限のルール
法務省の公式情報によると、期限は次の2パターンで判定されます。
| ケース | 起算日 | 期限 |
|---|---|---|
| 相続人が単独で取得を知った時 | 自己のために相続の開始があったことを 知った日(=不動産取得を知った日) | 3年以内 |
| 遺産分割協議が成立した時 | 遺産分割が 成立した日 | 3年以内 |
つまり、相続発生 → 相続人特定 → 遺産分割協議 → 登記、と進む流れで、遺産分割成立から3年以内が期限となります。
過料の金額と運用
正当な理由なく違反した場合、10万円以下の過料 が課されます。過料は罰金とは異なる「行政罰」で、前科にはなりませんが、家庭裁判所が金額を決定します。
「正当な理由」として法務省が示しているのは: - 数次相続が長期にわたり相続人の特定が困難 - 遺言の有効性に争いがある - 重病で手続きできない - 経済的困窮で登記費用が払えない
正当な理由とは認められない例: - 「忘れていた」「面倒だった」「親族と話し合いがつかない」
義務化に伴う関連改正
相続登記義務化と同時に、以下の関連制度も整備されています。
- 相続人申告登記制度(2024年4月1日〜): 簡易な申出で義務を果たせる救済策
- 相続土地国庫帰属制度(2023年4月〜): 不要な相続土地を国に引き取ってもらえる制度
空き家相続登記義務化は過去の相続も対象 — 2027年4月までの猶予

💡 TL;DR: 2024年4月1日より前に発生した相続も対象。「祖父名義のまま」「親が10年前に亡くなった」物件も、2027年4月1日まで に登記完了が必要。3年間の猶予がある期間中に動き出さないと過料リスク。
過去の相続にも遡及適用
最も誤解されやすいのが、義務化は施行日以降の相続だけでなく、過去の相続にも適用される という点です。
例えば、次のようなケースもすべて対象です。
- 祖父が1980年に亡くなり、祖父名義のまま放置されている空き家
- 父が2010年に亡くなり、相続登記をしていない実家
- 兄弟と話し合いがつかず、相続後10年経過した不動産
2027年4月1日が期限
過去の相続については、施行日(2024年4月1日)から3年の猶予期間が設定されています。つまり 2027年4月1日まで に相続登記を完了させる必要があります。
2024年4月1日(施行)
↓
[猶予期間 3年]
↓
2027年4月1日 ← 過去の相続も登記完了期限
「祖父名義のまま」物件はまず戸籍から
祖父名義の物件を相続登記するには、祖父→父→自分 の 数次相続 の手続きが必要です。
- 祖父の出生から死亡までの全戸籍
- 父の出生から死亡までの全戸籍
- 自分(現相続人)の戸籍・住民票
- 祖父代・父代の相続人全員の同意(遺産分割協議書)
兄弟姉妹相続や、相続人が10人以上に膨らんでいるケースも珍しくありません。早めに司法書士に相談するのが現実的です。
空き家相続登記義務化の救済策 — 相続人申告登記でひとまず義務を満たす

💡 TL;DR: 遺産分割協議が長期化して間に合わない時、相続人申告登記 で簡易に義務を満たせる救済策。法務局に「自分が相続人である」と申告するだけで完了。ただし、その不動産を 売却・賃貸はできない。
相続人申告登記とは
正式な相続登記が遺産分割協議の長期化などで間に合わないケースで、「自分が相続人である」と法務局に申告するだけ で義務を満たしたとみなす制度です。2024年4月1日から運用開始。
メリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 単独で申出可能(他の相続人の同意不要) | その不動産を売却・賃貸できない |
| 戸籍は申出人の分だけでOK(省略) | 後日改めて正式な相続登記が必要 |
| 登録免許税が不要(無料) | あくまで義務違反回避の暫定対策 |
| 即日〜数日で完了 | 担保設定もできない |
相続人申告登記の手続き
- 申出先: 物件所在地の管轄法務局
- 必要書類: 申出人(自分)の戸籍謄本・住民票・被相続人の死亡記載がある戸籍
- 費用: 登録免許税 0円(印紙不要)
- 期間: 即日〜数日
こんな時に有効
- 兄弟と遺産分割協議でもめていて、3年期限が迫っている
- 数次相続で相続人が多すぎて全員の同意取得に時間がかかる
- 相続人の1人が海外居住で書類取得に時間がかかる
- 遺言書の有効性で訴訟中
「とりあえず義務違反は避けたい」段階の救済策と理解し、後日正式な相続登記をすることが前提です。
空き家相続登記を自分でやる方法 — 必要書類・費用・手順
💡 TL;DR: 自分で申請すれば 登録免許税(評価額×0.4%) + 戸籍取得実費 のみ。10年所有していた評価額1,000万円の物件で 4〜5万円程度。所要時間は書類収集に1〜2ヶ月、申請から完了まで2〜4週間。
自分でやる場合のステップ
[1] 必要書類の収集 (1〜2ヶ月)
↓
[2] 遺産分割協議書の作成・印鑑証明(共有相続の場合)
↓
[3] 登記申請書の作成 (法務局HPに記入例あり)
↓
[4] 法務局へ申請 (郵送 or 持参 or オンライン)
↓
[5] 登記完了 (申請から 2〜4週間)
必要書類リスト
| 書類 | 取得先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 被相続人の出生〜死亡の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 転籍があると複数自治体で取得必要 |
| 被相続人の住民票除票 | 最終住所地の市区町村役場 | 5年経過で廃棄される場合あり(戸籍の附票で代替) |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地 | 兄弟相続は戸籍が膨大 |
| 相続人全員の住民票 | 各相続人の現住所地 | |
| 遺産分割協議書 + 印鑑証明 | 自分で作成 + 各相続人 | 共有相続の場合のみ |
| 固定資産評価証明書 | 物件所在地の市区町村 | 登録免許税計算に使用 |
| 登記事項証明書 | 法務局 | 物件特定用 |
登録免許税の計算
固定資産評価額 × 0.4% で計算します。
| 評価額 | 登録免許税 |
|---|---|
| 500万円 | 2万円 |
| 1,000万円 | 4万円 |
| 2,000万円 | 8万円 |
| 5,000万円 | 20万円 |
固定資産評価額は 路線価ではなく、市区町村が定める評価額 です。固定資産税の納税通知書に記載されています。
自分でやるのに向くケース・向かないケース
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 単独相続(配偶者・子1人など) | 数次相続(祖父名義のまま等) |
| 遺言書あり | 共有名義で意見対立 |
| 相続人が少ない・近隣居住 | 相続人が10人超 or 遠方/海外居住 |
| 平日に法務局に行ける | 仕事で平日休めない |
向かないケースでは 司法書士に依頼する方が安全 です。
空き家相続登記を司法書士に頼む場合の費用相場と選び方

💡 TL;DR: 司法書士報酬は 5〜15万円程度(物件1筆あたり)。これに 登録免許税 + 戸籍取得実費 が別途加算。複雑なケース(数次相続・共有名義)は15〜30万円超のことも。一括費用見積もりと「丸投げOK」の事務所が便利。
司法書士の費用構造
[1] 司法書士報酬 5〜15万円
[2] 登録免許税 評価額×0.4%
[3] 戸籍取得実費 数千円〜2万円(郵送+書類代)
[4] 遺産分割協議書作成費 3〜5万円(報酬1に含まれる場合あり)
─────────
合計 10〜25万円程度(標準的なケース)
標準的なケースの費用例
評価額1,000万円・相続人2人(母と自分)・単独で取得するケース:
- 司法書士報酬: 8万円
- 登録免許税: 4万円
- 戸籍実費: 1万円
- 合計: 13万円
複雑なケースの費用上振れ
| ケース | 報酬上振れ目安 |
|---|---|
| 数次相続(2段階) | +5〜10万円 |
| 共有名義の整理 | +3〜10万円 |
| 兄弟姉妹相続(戸籍多い) | +3〜5万円 |
| 物件複数筆 | 1筆あたり+2〜5万円 |
「相続人110人」のような極端な事例(行政書士のX投稿で話題)では、登記費用だけで数十万円〜100万円超になることもあります。
司法書士の選び方 5つのチェック
- 相続登記の実績数 が公開されているか
- 見積もりが明朗 か(報酬+実費の内訳が明確)
- 戸籍収集まで代行 してくれるか(自分で集めると数十時間)
- オンライン面談OK か(遠方の相続人にも便利)
- 日本司法書士会連合会 の名簿で実在確認
「空き家+相続登記」を専門にする司法書士事務所
相続登記の専門度が高い事務所では、以下のサービスをワンストップで提供しています。
- 相続登記
- 遺産分割協議書作成
- 相続人申告登記の代行
- 数次相続の整理
- 売却サポート(提携不動産業者紹介)
「相続登記して、そのまま売却したい」ニーズには、こういった専門事務所が便利です。
空き家相続登記の複雑なケース — 数次相続・共有名義・遠方相続人
💡 TL;DR: 「祖父名義のまま」「兄弟との共有名義」「相続人が海外居住」など複雑なケースは、自分でやるより司法書士依頼が現実的。費用は標準より高くなるが、ミスによる再申請を避けられる。
ケース1:数次相続(祖父名義のまま)
祖父→父→自分のように相続が2段階以上発生している状態を 数次相続 と言います。原則として、すべての相続段階の遺産分割協議書 が必要です。
- 祖父の代の相続人 = 父+父の兄弟姉妹 + 配偶者
- 父の代の相続人 = 自分 + 兄弟姉妹 + 母
相続人が10人を超えるケースもあり、全員の戸籍収集 + 印鑑証明 + 遺産分割協議の合意形成は非常に手間です。
ただし、要件を満たせば「中間省略登記」 で1回の登記にまとめられる場合もあります。司法書士に確認します。
ケース2:共有名義の解消
兄弟姉妹で共有名義になった空き家は、売却・賃貸・解体すべてで全員の同意が必要です。早めに 共有を単独名義に整理 する方が後々スムーズです。
整理方法: - 1人が単独で取得し、他の相続人に金銭で精算(現金がない場合は要相談) - 売却して代金を分配(換価分割) - 物件が複数あれば、それぞれを単独取得する形で分割(現物分割)
ケース3:相続人が海外居住
海外居住の相続人がいる場合、印鑑証明の代わりに サイン証明 を在外公館で取得します。
- 必要書類: 遺産分割協議書(海外居住者用) + サイン証明
- 取得先: 日本大使館・領事館
- 期間: 通常2週間〜1ヶ月
- 費用: 1通あたり数千円
時差・郵送往復で時間がかかるため、3年期限に余裕を持って動きます。
ケース4:相続人の中に認知症の方がいる
認知症で意思能力が低下している相続人がいる場合、成年後見制度 の利用が必要です。家庭裁判所で成年後見人を選任し、その後見人が遺産分割協議に参加します。
成年後見人選任から開始すると、相続登記完了まで 半年〜1年 はかかるため、早めに動きます。
空き家相続登記義務化のよくある質問
- 1. 期限内に登記できなかった場合、必ず過料になりますか?
- 自動的ではありません。法務局が義務違反を検知 → 「正当な理由」の有無を確認 → 過料相当と判断した場合に家庭裁判所が決定します。実際の運用は施行から数年内に整備される見込みで、現時点では事例が限定的です。 ただし「いずれバレる」前提で動くのが安全です。
- 2. 登記しないと売却もできないと聞きました。本当ですか?
- 本当です。相続登記がされていない不動産は、登記簿上の所有者と実態が一致しないため、買主が住宅ローン審査を通せません。売却の前提として相続登記は必須です。
- 3. 登録免許税の軽減措置はありますか?
- 条件付きであります。固定資産評価額100万円以下の土地について、令和7年(2025年)3月31日まで(延長の可能性あり)登録免許税が 免税 となる制度があります。詳細は税理士・司法書士に確認してください。
- 4. オンラインで申請できますか?
- できます。法務省の「登記・供託オンライン申請システム」から電子申請可能です。ただし電子証明書(マイナンバーカード等)・専用ソフト導入など準備が必要で、初回は紙のほうが楽な場合も多いです。
- 5. 相続登記しないまま亡くなったらどうなりますか?
- 次の相続人に義務が引き継がれます。3年期限は「知った日から」なので、新しい相続人が知った時点から3年と再カウントされます。ただし数次相続で手続きが複雑化するため、生前に整理しておく方が確実です。 最後にもう一度、空き家相続登記義務化のポイントを整理します。 「まだ時間がある」と思っているうちに、相続人が増えて手続きが複雑化するのが空き家相続の落とし穴です。早めの登記が、最終的なコストを抑えます。 詳しい相続全体の流れは 空き家を相続したら何から始める?5ステップ完全ガイド、節税については 空き家3,000万円特別控除|要件・失敗例・申請手順 も併せて参照してください。





