親が施設に入り実家が空き家に|残す・貸す・売るの決め方【2026】
親が老人ホームや特養に入り、誰も住まなくなった実家が残っている。「いつか戻るかもしれないから」と、売るとも貸すとも決めないまま月日が過ぎる家庭は珍しくないでしょう。
ところが、決めないでいるあいだにも、入所した日を起点に動き出す期限が2つあります。判断の要点を先に3つにまとめます。
- 残す、貸す、売るは、親の意思と「戻る見込み」から決めます。売却は後戻りできない選択なので、施設の種類と本人の希望を確かめてから比べます
- 「残す」にも期限があります。親が自分の家を売って使える居住用財産の3,000万円特別控除は「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」の売却が条件で、登記上の住所変更も2026年4月から2年以内の義務になりました
- 売るなら、親が判断できるうちに、親名義のまま親の意思で売ります。子が代わりに動くには委任が要り、判断能力を欠いてからでは委任状も作れません。その場合は成年後見制度に道が変わります
この記事は「親が存命で、判断能力があるうちに家族で決める」場面を扱います。親がすでに判断できない状態なら認知症の親の家を売る方法、親が亡くなったあとなら相続した空き家の売り方がそれぞれ担当しています。
親の施設入所と実家の空き家 状況別ガイド
💡 この章の要点: 上から順に読めば、戻る見込みの見立て、期限、選択肢の比較、売る手続き、税の違いの順に進みます。急ぐ理由があるかだけ知りたい方は「2つの期限」から、全体を日付で追いたい方は「具体例」から入るのが早道です。
| いまの状況 | 読むべきセクション |
|---|---|
| 親が戻る可能性を見立てたい | 施設の種類と戻る見込み |
| 急ぐ理由があるのか知りたい | 入所した日から動き出す2つの期限 |
| 3つの選択肢を比べたい | 残す・貸す・売るの比較表 |
| 自分の家庭に当てはめたい | 親の状態と家の状態で見る判断表 |
| 親名義のまま売る方法を知りたい | 親名義のまま売る手続き |
| 税金の違いを知りたい | 生前に売るか相続後に売るか |
| 進め方の全体像を見たい | 具体例 |
親が施設に入ると実家はいつから「空き家」か|施設の種類と戻る見込み
💡 この章の要点: 実家をどうするかは、親が入った施設が「戻ることを目指す施設」か「長く暮らす施設」かで出発点が変わります。厚生労働省の公表情報では、介護老人保健施設(老健)は在宅復帰を目指す人を受け入れる施設、特別養護老人ホーム(特養)は常に介護が必要な人、介護医療院は長期の療養が必要な人を受け入れる施設とされています。
「親が戻るかどうか」を家族の勘で決めるのは難しいものです。手がかりの一つは、施設の制度上の位置づけにあります。
施設の種類ごとの位置づけ
厚生労働省の介護サービス情報公表システムは、介護保険で入れる施設をそれぞれ次のように説明しています(2026年9月時点)。
| 施設の種類 | 公表情報での位置づけ | 実家の扱いの出発点 |
|---|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指している方の入所を受け入れ、リハビリテーションや必要な医療、介護を提供 | 戻る前提。残すが出発点 |
| 介護老人福祉施設(特養) | 常に介護が必要な方の入所を受け入れ。新たに入所する要介護1・2はやむを得ない理由がある場合以外は利用できない | 長く暮らす前提。残す理由を本人の意思で確かめる |
| 介護医療院 | 長期にわたって療養が必要である方の入所を受け入れ | 同上 |
| 特定施設(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等) | 指定を受けた有料老人ホーム等が日常生活上の支援や機能訓練を提供。要支援1・2から要介護5まで対象 | 契約次第。本人の希望と費用の見通しで決める |
老健に入った親の実家を「もう戻らないだろう」と売ってしまうと、施設の目的と食い違います。逆に特養に入った親の実家を「戻るかもしれない」で持ち続けるなら、その理由は施設の性質ではなく本人の希望に求めることになります。
親の意思を先に確かめる
売るか残すかを子どもだけで決めると、あとで親との関係にしこりが残りやすいものです。家は親の財産であり、親が判断できるうちは親が決める立場にあります。
- 本人に直接聞く: 「家をどうしたいか」を、施設の生活が落ち着いた頃に改めて聞く
- 理由も聞く: 「残したい」の中身が「戻りたい」なのか「仏壇や思い出を動かしたくない」なのかで、取れる手が変わる
- 兄弟姉妹で共有する: 親の言葉を一人が聞いて済ませず、家族全員が同じ内容を知っている状態にする
親の希望が「残したい」なら、それを尊重したうえで、残すための費用と期限を家族で引き受ける形になります。
入所した日から動き出す2つの期限
💡 この章の要点: 親が実家に住まなくなった日から、3,000万円特別控除の期限(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)と、登記上の住所変更の期限(2026年4月1日以降、変更から2年以内)が動き出します。どちらも「まだ決めていない」家族に関係する期限です。
「残す」を選んだ家族にも、期限はあります。しかも、その期限は入所の日にはほとんど意識されません。
期限1: 親が自分の家を売るときの3,000万円特別控除
親が自分の住んでいた家を売る場合、国税庁タックスアンサー No.3302の「マイホームを売ったときの特例」で、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。要件のうち、施設入所と直結するものを挙げます。
- 期限: 以前に住んでいた家屋は「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合」に限る
- 所有期間: 「所有期間の長短に関係なく」使える
- 相手: 「親子や夫婦など特別の関係がある人」への売却は対象外。子が親から買い取る形では使えない
- 取り壊して売る場合: 取壊しから1年以内に譲渡契約を結び、かつ上記の期限内に売ること。取壊し後の敷地を駐車場などに使わないこと
- 手続き: 確定申告が必要。居住の事実は戸籍の附票の写しなどで示す
期限の数え方を、2026年5月10日に入所した例で書きます。
住まなくなった日 2026年5月10日
3年を経過する日 2029年5月10日ごろ
その日の属する年の12月31日 2029年12月31日 ← この日までの売却が条件
「住まなくなった日」をどの日で判定するかはタックスアンサーに具体的な記述がなく、この記事では確認できていません。入所日と住民票の異動日が離れている場合は、税務署か税理士に確認してください。
期限2: 登記上の住所変更は2年以内の義務に
親が住民票を施設に移すと、実家の登記簿に載っている親の住所と実際の住所がずれます。法務省の案内によれば、2026年(令和8年)4月1日から住所等変更登記が義務になりました。
- 期限: 住所の変更日から2年以内に変更登記を申請する
- 過料: 正当な理由がなく怠ると5万円以下の過料の対象
- 施行前に住所が変わっていた場合: 2028年(令和10年)3月31日までに変更登記をする
売却の場面では、登記簿の住所と現在の住所がずれていると、所有権移転の前に住所変更登記を求められることが多いため、売る場合はどのみち先に済ませる登記です。残す場合も義務は変わりません。
残す・貸す・売るの比較表

💡 この章の要点: 3つの選択肢の差は「親が戻れるか」「毎年の負担が続くか」「税の選択肢が残るか」「後戻りできるか」の4点に集約できます。貸すと相続後の空き家特例は使えなくなり、売ると戻る道がなくなります。残すのは後戻りがきく代わりに、負担と期限を家族が引き受ける選択です。
親の意思を確かめ、期限を知ったうえで、3つを並べます。
| 比べる点 | 残す(空き家のまま管理) | 貸す | 売る(生前に親名義で) |
|---|---|---|---|
| 親が戻れるか | 戻れる | 契約期間中は戻れない | 戻れない |
| 毎年の負担 | 固定資産税、管理の手間か委託費、保険料が続く | 家賃で相殺できる可能性。修繕と入居者対応の手間 | 決済以降はなくなる |
| 生前の3,000万円控除(No.3302) | 期限内に売れば使える余地が残る | 貸したあとの扱いは税務署に確認 | 期限内なら使える。親子間は不可 |
| 相続後の空き家特例(No.3306・3307) | 入所後に貸さず、物品保管程度なら残る | 使えなくなる(貸付の用に供した家は対象外) | 相続の対象でなくなる |
| 後戻り | できる | 契約終了まで待つ | できない |
| 家族の手間 | 定期的な見回りか、管理代行の契約 | 入居者募集、契約、修繕の判断 | 意思確認、書類、査定と契約 |
表の「毎年の負担」を金額で置きたい読者は、次の2本に出典付きの試算があります。
- 固定資産税: 評価額1,000万円(土地500万円、建物500万円)の空き家で年約10.2万円という試算を空き家の固定資産税に置いています。建物が建っているあいだは、管理不全空家等や特定空家等の勧告を受けない限り住宅用地特例が続きます
- 管理代行の料金: 実在サービスの公開料金は屋外のみで月2,750円から、室内の換気と通水まで含めて月6,600〜9,900円前後です(空き家管理代行サービス、2026年8月時点)
「貸す」の行で相続後の空き家特例が消える根拠は国税庁 No.3307にあります。入所したあとの家屋が「事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと」が要件です。
残すなら、貸さないで残すほうが税の選択肢は多く残ります。貸すのは「親が当面戻らない」と家族が納得したあとの選択で、方式や費用の各論は空き家を賃貸に出すと空き家で民泊が担当します。
親の状態と家の状態で見る判断表

💡 この章の要点: 「親の状態」を縦、「家の状態」を横に置くと、出発点になる選択肢が見えます。戻る見込みがあるなら残す、本人が売却に前向きなら期限内に生前売却、判断能力が揺らいでいるなら売却より先に備えを整える、が大枠です。
比較表は選択肢の性質を示すだけで、どの家庭がどれを選ぶかまでは決めてくれません。親の状態と家の状態を掛け合わせます。
| 親の状態 \ 家の状態 | 築浅、都市部、買い手がつきやすい | 築40年超、地方、買い手が限られる | 昭和56年5月31日以前の建築(旧耐震) |
|---|---|---|---|
| 老健などで戻る見込みがある | 残す。管理だけ整える | 残す。管理代行か家族の分担を決める | 残す。耐震性は戻る前に確認 |
| 特養などで長期入所。本人は「残したい」 | 残す。3年目の年末までに一度決め直す | 残す。ただし維持費の累計を家族で共有 | 残す。相続後の空き家特例の要件を保つ(貸さない) |
| 本人が売却に前向き | 生前売却。仲介で時間をかける余地あり | 生前売却。買取も並行して査定 | 生前売却。3,000万円控除の期限内に |
| 判断能力が揺らいでいる | 売却より先に医師の診断と家族の合意 | 同左。売るなら意思確認の記録を残す | 同左。後見が必要なら成年後見へ |
表の右下ほど、決断を急がせる要因が増えていきます。ただし急がせるのは家の状態であって、親の意思を飛ばしてよい理由にはなりません。
- 築浅で都市部: 残しても価値が落ちにくい。急がなくてよい代わりに、期限だけは押さえる
- 築40年超で地方: 残すほど売りにくくなる可能性がある。売る場合は買取も含めて査定を取っておく
- 旧耐震: 相続後の空き家特例の対象になりうる建物。貸さずに残せば、相続後にも税の選択肢が残る(要件は空き家3,000万円特別控除)
残す場合に最低限やること
💡 この章の要点: 残すと決めたら、登記の住所変更、管理の担当と頻度、火災保険の確認、決め直しの期日の4つを先に固めます。管理の中身は自主管理チェックリストと管理代行サービスが担当します。
残す選択は、放置とは違います。「戻るかもしれない家」を戻れる状態に保つには、次の4つを最初に決めておきます。
- 登記の住所変更: 親の住民票を施設に移したなら、2年以内の義務。売る場合にも必要になる登記
- 管理の担当と頻度: 誰が、どのくらいの間隔で通水や換気に行くか。遠方なら管理代行の見積もりを取る
- 火災保険の契約内容: 空き家になったことを保険会社に伝え、契約が続くかを確認する(条件は保険会社ごとに異なるため、この記事では扱いません)
- 決め直しの期日: 3,000万円控除の期限(3年目の年末)の半年前など、日付を決めて家族の予定に入れる
管理を怠ると、空家等対策特別措置法にもとづく指導や勧告の対象になることがあります。指導の段階で動けば勧告は避けられる、という流れは空き家を放置するリスクが扱っています。
親名義のまま売る手続き|本人の意思確認・委任状と代理・戻る可能性の扱い
💡 この章の要点: 家は親の名義のまま、親自身が売主として売ります。子が代わりに動くなら親からの委任が必要で、代理で結んだ契約の効果は親に帰属します(民法99条)。委任は親の死亡で終了し(653条)、判断能力を欠いた親は委任状を作れません(3条の2)。代金は親の財産なので親名義の口座に入れます。
「親が施設にいるのに、どうやって売るのか」という疑問には、法律の側に答えがあります。
売主は親、子は代理人
実家の所有者は親です。売買契約の当事者も親であり、子は親から頼まれて動く立場になります。根拠になる条文を3つ並べます(民法、2026年9月確認)。
- 643条(委任): 委任は、頼む側が法律行為を委託し、頼まれた側が承諾することで効力を生じる
- 99条(代理): 代理人が権限内で本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接効力を生じる
- 3条の2(意思能力): 意思表示をした時に意思能力を有しなかった法律行為は無効
3条の2は、委任状を作る行為にもかかります。判断能力を欠いた親からは、有効な委任状を受け取れません。委任状で進める道は、親が判断できるあいだにしか開いていないということです。
委任状で進める場合の型
実務では、次の流れをとることが多いようです(法律で義務づけられた手順ではなく、登記や決済の場面で求められる実務上の型として読んでください)。
- 親が「実家を売ること」と「子に売却を任せること」を決める
- 親が委任状を作り、実印を押す。印鑑証明書をそろえる
- 子が代理人として査定、契約、決済に立ち会う
- 登記を担当する司法書士が、親本人に売却の意思を確認する(施設への訪問や面談で行われることが多い)
- 代金は親名義の口座に入金する
4の意思確認は、後から「本人は売るつもりがなかった」と争われるのを防ぐためのものです。親が施設にいる場合、司法書士が施設に出向く形になることがあるため、施設の面会ルールも事前に確認しておきます。
委任が終わる場面
委任状があっても、途中で効力を失う場面があります。民法が定める終了事由のうち、この場面で関係するものを挙げます。
- 親(委任者)の死亡(653条1号): 委任は終了する。決済前に親が亡くなれば、その売却は相続手続きに切り替わり、相続登記(3年以内の義務)を経て相続人が売主になる
- 子(代理人)が後見開始の審判を受けた(111条1項2号、653条3号): 代理権が消滅する
- 解除(651条): 委任は各当事者がいつでも解除できる。親が「やはり売らない」と言えば、子は止まる
親が委任のあとに判断能力を失った場合の扱いは、民法の条文だけでは書き切れないため、この記事では扱いません。その段階に入ったら、認知症の親の家を売る方法が担当する成年後見の手続きに移ります。
代金の扱い
売却代金は親の財産です。代理で結んだ契約の効果は親に帰属する(99条)ため、代金も親のものとして扱います。
- 親名義の口座に入金する
- 施設の利用料や医療費など、親のために使う
- 子の口座で預かる形は避ける。親の財産と子の財産が混ざると、後日、兄弟姉妹や税務の場面で説明が難しくなる
戻る可能性をどう扱うか
売却は後戻りできません。戻る可能性を残したい気持ちと、売る判断は両立しないため、順序を決めておきます。
- 老健に入所中: 在宅復帰を目指す段階なので売らない。退所の見通しが立ってから改めて決める
- 特養や介護医療院に入所中: 戻る前提の施設ではないが、本人の希望を確かめる。本人が「売ってよい」と言うまで急がない
- 本人が決めたあと: 期限(3,000万円控除の3年目の年末)から逆算し、仲介と買取のどちらで売るかを決める
仲介は時間をかけて高く売る方法、買取は業者が直接買う方法で、期限が近いほど買取の比重が上がります。両者の比較は買取と仲介どちらが得か、手続きの全体像は売却の流れが担当しています。
生前に売るか相続後に売るか|税の扱いの違い
💡 この章の要点: 親が生きているうちに売れば親の居住用財産の3,000万円控除(No.3302)、相続後に売れば相続人の空き家特例(No.3306・3307)が候補になります。使える条件が別物のため、「いつ売るか」は税の面でも分かれ道です。
「急いで売らなくても、相続してから売れば同じでは」という反問には、半分だけ同意できます。同じなのは「特別控除の上限が3,000万円」という点だけで、要件は別物です。
| 比べる点 | 生前に親が売る(No.3302) | 相続後に子が売る(No.3306・3307) |
|---|---|---|
| 売主 | 親本人(子は代理) | 相続人 |
| 期限 | 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年(令和9年)12月31日までの譲渡 |
| 建物の建築時期 | 問わない | 昭和56年5月31日以前の建築。区分所有建物登記がされている建物は対象外 |
| 譲渡価額 | 記載なし | 1億円以下 |
| 控除額 | 最高3,000万円 | 最高3,000万円。相続人が3人以上なら2,000万円 |
| 施設入所との関係 | 入所した日が期限の起点 | 入所直前に要介護認定等を受けていること、入所後に貸していないことなどの要件 |
| 相手 | 親子や夫婦など特別の関係がある人は不可 | 別途要件あり |
相続後の空き家特例で、施設入所に固有の要件はNo.3307に書かれています。
- 認定の時期: 「居住の用に供されなくなる直前において」要介護認定等を受けていたかで判定する。自立のまま入所した場合は、この要件を満たさない可能性がある
- 施設の種類: 養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅
- 入所後の家の使い方: 物品の保管などに使い、事業の用、貸付けの用、被相続人以外の者の居住の用に供していないこと
- 主な住まい: 入所から相続開始の直前まで、主として居住していたと認められるのがその施設であること
つまり、相続後の特例を残したければ、入所後の実家は「貸さず、誰も住まわせず、荷物を置いておく程度」に保つことになります。生前に売るなら、これらの要件は関係なくなる代わりに、3年目の年末という期限が前に来ます。
税額の計算そのものは譲渡所得税の仕組み、税全体の見取り図は空き家の税金まるわかりに譲ります。どちらの特例も確定申告が前提で、個別の適用可否は税務署か税理士に確認してください。
具体例|母が特養に入所、実家は築40年の地方、子は都内在住
💡 この章の要点: 母(82歳)が特養に入り、地方の実家(木造築40年)が空き家になった家族の架空の例です。入所から1年は残す判断で管理を続け、母自身が「売ってよい」と決めた時点で、3,000万円控除の期限から逆算して生前売却に切り替えます。金額の相場は置かず、日付と手順だけを追います。
例を一つ置きます。細部を簡略化した架空の例です。
- 本人: 母82歳。要介護3の認定を受けて2026年5月10日に特養へ入所。判断能力はある
- 実家: 地方都市の郊外、木造築40年(1986年建築で新耐震)。入所まで母が一人暮らし。母名義
- 家族: 長女(都内在住)と長男(隣県在住)。母の希望は「しばらくはそのままにしてほしい」
- 母の考え: 家に戻れるとは思っていないが、仏壇と父の遺品を動かすのに気持ちの整理が要る
| 時期 | 家族がやったこと | 根拠になる制度 |
|---|---|---|
| 2026年5月 | 入所。長女が実家の通水と換気を月1回担当することに。母の住民票を施設へ移す | 住所変更登記は変更日から2年以内(2028年5月まで) |
| 2026年7月 | 長男が司法書士に住所変更登記を依頼。あわせて、この時点で売った場合の期限が2029年12月31日になることを家族で確認 | No.3302 |
| 2026年秋 | 母の希望どおり「残す」を選ぶ。長女の負担が続くため、翌春から管理代行に切り替える方針。買取業者と仲介業者に机上査定を依頼し、「いまの値段」を家族で共有 | 判断表の「本人は残したい」の行 |
| 2027年3月 | 管理代行を契約。仏壇を長男宅へ移し、遺品の整理を母と相談しながら進める | 残す場合の4項目 |
| 2027年夏 | 母から「もう売ってよい」と言葉が出る。長女と長男で母に改めて意思を確認し、売る方針で一致 | 親の意思の確認 |
| 2027年秋 | 母が委任状を作成し、長女を代理人に。実印と印鑑証明書をそろえる。仲介で売り出し、半年で買い手がつかなければ買取に切り替えると決める | 民法643条、99条 |
| 2028年春 | 仲介で買い手がつかず、買取の査定を取り直す。買取で契約。司法書士が施設で母に意思確認 | 期限2029年12月31日から逆算 |
| 2028年夏 | 決済。代金は母名義の口座へ。施設利用料に充てる。翌年、母が確定申告で3,000万円控除を適用 | No.3302、代理の効果は本人に帰属(99条) |
この例から拾える判断材料は3つです。
- 「残す」から始めても、期限内の売却に間に合いました: 入所から売却の意思表示まで1年2か月、決済まで2年2か月。期限は2029年12月31日で、1年以上の余裕を残しています
- 査定は「残す」段階で取っておきました: 売る気になったときにゼロから始めるより、値段の感覚を家族で共有した状態で母と話せます
- 母が決めたのは、家ではなく仏壇と遺品の整理が終わったあとでした: 「残したい」の中身を聞いていたからこそ、売る時期を母の側から言い出せる形になりました
母の判断能力が2027年の時点で失われていれば、この例の後半は成り立ちません。委任状を作れないため、成年後見の申立てと家庭裁判所の許可を経る手順に変わります(認知症の親の家を売る方法)。
親の施設入所と実家の空き家でよくある質問
💡 この章の要点: 相談の場でくり返し出る6つの疑問に答えます。共通する答えは、決めるのは親、子は代理で動く、代金は親の財産の3点です。判断能力に不安が出た段階の話は認知症の親の家を売る方法が担当します。
- 親が「家に戻る」と言っています。売却の話をしてよいのでしょうか?
A. 施設の種類によって答えが変わります。介護老人保健施設(老健)は在宅復帰を目指す施設なので、戻る前提で残すのが自然です。特養や介護医療院は長く暮らす前提の施設ですが、本人の希望は尊重します。売却の話を切り出すよりも、「残すために誰が何をするか」と「いつ決め直すか」を家族で決めておくほうが先です。
- 施設にいる親が、自分で売買契約を結べますか?
A. 判断能力があれば結べます。売主は親本人であり、施設にいるかどうかは契約の有効性に関係しません。契約や決済の場に親が出向けない場合は、子を代理人にする委任状か、契約書への署名を施設で行う形をとります。登記の場面では司法書士が本人の意思を確認することが多く、施設への訪問が必要になることがあります。
- 子が親の代わりに売るとき、何が必要ですか?
A. 親からの委任(民法643条)です。委任状に実印を押し、印鑑証明書をそろえるのが実務上の型で、代理で結んだ契約の効果は親に帰属します(同99条)。判断能力を欠いた親は委任状を作れない(同3条の2)ため、委任状で進めるのは親が判断できるあいだに限られます。
- 売却代金は子が受け取ってもよいのでしょうか?
A. 代金は親の財産です。親名義の口座に入金し、施設利用料や医療費など親のために使う形にします。子の口座で預かると、親の財産と子の財産の区別がつかなくなり、兄弟姉妹や税務の場面で説明に困ります。
- 兄弟で「残したい」「売りたい」が割れています。どう決めればよいですか?
A. 決める権利があるのは親です。兄弟の意見が割れているときほど、親の希望を全員が同じ場で聞く機会をつくります。そのうえで「残す」なら誰が費用と手間を担うか、「売る」なら期限と方法を、親の意思を基準に決めます。子が親を説得して売らせる形は、後日の争いの種になりやすいため避けます。
- 親に認知症の診断が出ました。もう売れないのでしょうか?
A. 診断名だけでは決まりません。契約の時点で意思能力があるかどうかが基準です(民法3条の2)。軽度で本人が契約内容を理解できるなら本人が売る道は残りますが、争いを避けるための備えが要ります。
理解できない状態なら、成年後見制度で後見人を選任し、居住用不動産の処分について家庭裁判所の許可を得る手順になります。詳しくは認知症の親の家を売る方法を参照してください。
「残す」と決めた家族にも、値段は知っておく価値がある
売ると決める前でも、査定は取れます。いまの値段を家族で共有しておけば、親が「売ってよい」と言った日から、期限に追われずに動き出せます。査定・相談は無料、しつこい営業はありません。
まとめ|決めるのは親、期限を数えるのは家族
💡 この章の要点: 残す、貸す、売るの答えは家庭ごとに違いますが、親の意思を確かめる順序と、入所した日から動く期限は共通です。決めないまま3年目の年末を過ぎることだけは避けます。
冒頭の「いつか戻るかもしれないから」に戻ります。老健に入った親なら、その言葉は施設の目的と一致しています。特養や介護医療院なら、戻る見込みではなく本人の希望が「残す」理由になります。どちらの場合も、家をどうするかを決めるのは親です。
家族の仕事は、親が決められる状態を保ちながら、期限を数えることです。
- 3,000万円控除は住まなくなって3年目の年末まで(国税庁 No.3302)
- 登記の住所変更は2年以内(法務省、2026年4月1日施行)
- 貸すと相続後の空き家特例は外れる(国税庁 No.3307)
- 売るなら親名義のまま、親の意思で。判断能力を欠いたら成年後見(民法3条の2)
親が「残したい」と言ったなら、残すための費用と手間を引き受け、決め直す日付を決めておく。「売ってよい」と言ったなら、期限から逆算して仲介か買取かを選ぶ。順序を守れば、あとから悔いの残りにくい決め方になるはずです。決められないまま3年目の年末が過ぎるのは、避けたい結末です。
まずは「無料査定」だけ受けてみる
売却するかどうか決める前でも大丈夫です。状況を伝えるだけで、買取可否と概算金額がわかります。査定・相談はすべて無料で、しつこい営業はありません。
- 査定も相談も無料。売ると決める前の段階でも、買取可否と概算金額が分かります
- 現状渡しでOK。片付けも解体も不要で、撤去・解体費は運営側の負担です
- 仲介手数料0円。契約から決済まで最短数日で、遠方からでも手続きを進められます
- 弁護士・税理士・司法書士の3士業と連携。親名義のままの売却、委任状の作り方、相続前後の税の違いも相談できます
しつこい営業はありません。秘密厳守で対応します。





