借地権の相続|地主の承諾・名義変更・相続税評価と出口【2026】
親が亡くなって実家の書類を整理していたら、土地は親のものではなく「借りていた」と分かった。地主に挨拶に行くべきか、承諾をもらわないと相続できないのか、名義書換料を払うものなのか。そこで検索した人が多いはずです。
先に結論を3点にまとめます。
- 借地権は地主の承諾なしで相続できます。 相続は民法896条の包括承継で、承諾が要る「譲渡」(民法612条)ではありません。名義書換料や承諾料を払う法律上の義務もありません。ただし、承諾が要らないことと、地主から何も言われないことは別の話です。更新料、地代の値上げ、「そろそろ返してほしい」は、相続をきっかけに持ち上がります。
- 「名義変更」は3つに分かれます。 建物の相続登記、地主への通知と契約書の書き換え、地代の支払い口座の切り替えです。土地の名義は地主のままなので、土地の登記は動かしません。建物の登記だけは、借地権を第三者に主張する根拠(借地借家法10条1項)になるので後回しにできません。
- 相続したあとの出口は5つあります。 借り続ける、地主に買い取ってもらう、底地と借地権をまとめて第三者に売る、借地権付き建物として業者や第三者に売る、更新せず建物買取請求(13条)に進む。どれが使えるかは、契約が旧法か新法か定期借地権か、期間が何年残っているか、地主との関係、の3つでほぼ決まります。
承諾は要らない。それなのに、なぜ地主とのやりとりでつまずく人が多いのか。この記事はそこから始めます。
借地権の相続 状況別ガイド
| いまの状況 | 読むべき章 |
|---|---|
| 地主の承諾が要るのか知りたい、承諾料を請求された | 承諾は要るのか |
| 何から手を付ければよいか分からない | 相続したときに実際にやること |
| 契約書が見つからない、地代がいくらか分からない | 復元手順 |
| 旧法か新法か、更新できるのか知りたい | 借地権の種類 |
| 相続税の申告で借地権をいくらと書くのか | 相続税評価 |
| 住まないので、どうするか決めたい | 5つの出口の比較 |
| 実家が空き家のまま地代だけ払っている | 借地上の空き家に固有の問題 |
借地権は相続できるのか、地主の承諾は要るのか
💡 この章の要点: 相続は 包括承継(民法896条)で、被相続人の権利義務を丸ごと引き継ぐ。地主の承諾が要るのは賃借権の 譲渡と転貸(民法612条)であって、相続はどちらでもない。だから承諾も承諾料も法律上は不要。ただし、相続をきっかけに地主が 更新料、地代の値上げ、明け渡し を持ち出すことはあり、それぞれ法律上の位置づけが違う。
譲渡には承諾が要り、相続には要らない
借地権は、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権です(借地借家法2条1号、2026-09-10確認)。実家の借地で承諾の話が出るのは、賃借権のほうです。
[譲渡・転貸] 借地権者 ──売る・貸す──▶ 第三者
民法612条: 賃貸人(地主)の承諾が要る。無断なら地主は契約を解除できる
[相続] 被相続人 ──死亡と同時に──▶ 相続人
民法896条: 相続開始の時から、財産に属した一切の権利義務を承継する
→ 地主の承諾は要らない。名義書換料・承諾料の法律上の根拠もない
- 民法612条1項: 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸できない(民法612条、2026-09-10確認)
- 民法612条2項: 無断で第三者に使用収益させたときは、賃貸人は契約を解除できる
- 民法896条: 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(一身専属のものを除く)
相続は誰かに「譲り渡す」行為ではなく、亡くなった時点で自動的に引き継がれる出来事です。地主に承諾を求める場面がそもそも存在しません。承諾料や名義書換料を求められても、法律上の支払義務はなく、金額の決まりもありません。
それでも地主から言われること
承諾の話は法律で決着がつきます。ところが、相続の連絡をした直後に地主から届く言葉は、承諾以外のことが多いのです。
| 地主から言われること | 法律上の位置づけ | 対応 |
|---|---|---|
| 「名義書換料(承諾料)を払ってほしい」 | 相続は譲渡ではないので、支払義務も相場もない | 相続であることを伝え、根拠を尋ねる。契約書に相続時の定めがあるかは確認する |
| 「そろそろ更新料を」 | 法律に更新料の定めはない。契約書や過去の支払い実績が根拠になる | 契約書の更新条項と、親の代に払った記録を先に確かめる |
| 「地代を上げたい」 | 借地借家法11条の地代等増減請求。租税その他の公課の増減などで不相当になったときに請求できる | 固定資産税の推移や近隣の地代を根拠として求める。合意できなければ従来の額を払い続けて協議する |
| 「この機会に返してほしい」 | 期間中は応じる義務がない。期間満了時も、更新請求に対する異議には正当事由が要る(5条、6条) | 契約の残存期間を確かめてから返答する。返す気があるなら出口2以降の交渉に変わる |
- 更新料: 借地借家法に更新料の規定はありません。払うかどうか、いくらかは契約書の定めと当事者の合意で決まります
- 地代の値上げ: 11条は「不相当となったとき」の請求権で、地主が言えば通る仕組みではありません。金額に折り合わなければ協議が続きます
- 明け渡し: 期間満了時に借地権者が更新を請求すれば、建物がある限り従前と同一条件で更新したものとみなされ、地主が異議を述べるには正当事由が要ります(借地借家法5条1項、6条、2026-09-10確認)
6条の正当事由は、地主と借地権者の双方が土地を必要とする事情、借地に関する従前の経過、土地の利用状況、明け渡しと引き換えの財産上の給付の申出を考慮して判断されます。「相続で代替わりしたから」だけでは、この要件に当たりません。
借地権を相続したときに実際にやること
💡 この章の要点: 順番は 契約書と地代の支払い経路の確認 → 地主への通知 → 建物の相続登記 → 契約の種類と残存期間の確認 → 相続税評価 → 出口の選択。「名義変更」と呼ばれるものは、建物の登記、地主との契約書、地代の支払い口座 の3つに分かれ、土地の登記は動かさない。
6つのステップ
[1] 契約書と地代の支払い経路を確かめる
↓ 契約書の有無、地代の額、振込先、最後に払った月
[2] 地主に相続の事実を通知する
↓ 誰が相続人か、地代を今後誰が払うか
[3] 建物の相続登記をする
↓ 借地権を第三者に主張する根拠(10条1項)。2024年4月から義務
[4] 契約の種類(旧法/普通借地権/定期借地権等)と残存期間を確かめる
↓ 更新できるのか、いつか返すのか
[5] 相続税評価額を出す(自用地価額 × 借地権割合)
↓ 申告が要るかどうかの判断材料
[6] 出口を選ぶ(借り続ける/地主に売る/一緒に売る/業者に売る/建物買取請求)
「名義変更」は3つに分かれる
| 何の名義 | 誰と手続きするか | 何が要るか | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 建物の登記名義 | 法務局 | 戸籍一式、遺産分割協議書、建物の登記事項証明書 | 借地権の対抗力は「借地権者が登記されている建物」を所有することで生じる(借地借家法10条1項) |
| 賃貸借契約の借主名義 | 地主 | 相続を証する書類、新しい借主の連絡先。契約書を書き換えるか覚書を交わす | 民法896条で契約上の地位は承継済み。書き換えは事実の反映であって承諾ではない |
| 地代の支払い口座 | 地主、金融機関 | 引き落とし口座の変更、振込名義の変更 | 支払いが途切れると債務不履行の問題になる(後述) |
| 土地の登記名義 | 動かさない | 土地は地主のもの | 相続で動かすものがない。借地権の登記があるかどうかは、土地の登記事項証明書で確かめる |
- 建物の相続登記が先: 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは第三者に対抗できます(借地借家法10条1項、2026-09-10確認)。建物の登記が亡くなった親の名義のままだと、この「借地権者が登記されている建物」の状態が崩れます
- 相続登記は2024年4月から義務: 期限と過料、必要書類、司法書士に頼む場合の段取りは相続登記の義務化にまとめています
- 相続人が複数いる場合: 建物を共有名義で登記すると、あとで出口を選ぶときに全員の同意が要ります。分け方の考え方は共有名義の空き家を参照してください
地主への通知に書くこと
通知は承諾のお願いではなく、事実の報告です。書く内容は次の4点で足ります。
- 相続の事実: 誰がいつ亡くなったか
- 相続人: 誰が借地権を引き継いだか(遺産分割協議で決まっていれば、その人)
- 地代の支払い: 今後誰が、どの口座から払うか。未払いがあれば、いつ精算するか
- 連絡先: 今後の窓口
通知の段階で地主に「今後どうするつもりか」を聞かれることがあります。住むのか、売るのか、返すのか。ここで即答する必要はありません。契約の種類と残存期間が分からないうちに返答すると、あとで出口の選択肢を自分で狭めることになります。
相続全体の期限(相続放棄の3か月、相続税の申告期限など)は空き家相続の全体像に、借地権ごと相続しない選択は相続放棄の記事にまとめています。
契約書が無い、地代が分からない、口約束だったときの復元手順

💡 この章の要点: 契約書が無くても借地権は消えない。建物の登記と地代の支払い実績 があれば、借地権の存在は示せる(10条1項)。復元で困るのは「存在」ではなく 期間の起点と更新の履歴 で、ここは地主側の記録と突き合わせるしかない。
手掛かりはどこにあるか
親の代からの借地では、契約書が見つからない、あるいは最初から作られていないことが珍しくありません。祖父の代に口約束で借り、地代だけ何十年も払い続けてきた、という家もあります。
| 手掛かり | 分かること | どこで |
|---|---|---|
| 親の預金通帳、振込記録 | 地代の額、支払い先、支払い周期、最後の支払い月 | 自宅、金融機関(相続人として取引履歴を請求できる) |
| 建物の登記事項証明書 | 建物の所有者、建築年、登記の有無 | 法務局 |
| 土地の登記事項証明書 | 地主が誰か(登記名義人)、地主側の相続や売却の有無 | 法務局 |
| 固定資産税の課税明細 | 建物の評価額。土地の課税がなければ、土地は自分のものでない裏付け | 市区町村、自宅の納税通知書 |
| 親の確定申告書、領収書 | 地代を経費や支払いとして記録していれば額と相手が分かる | 自宅、税理士 |
| 地主側の記録 | 契約書の控え、地代の受領簿、更新の履歴 | 地主に依頼 |
| 過去の更新料、承諾料の領収書 | 更新の時期、当時の条件 | 自宅 |
復元の流れ
[1] 通帳と振込記録から、地代の額と支払い先を特定する
↓
[2] 土地の登記事項証明書で、支払い先が登記上の地主と一致するか確かめる
↓ 一致しなければ、地主側でも相続や売却があった可能性
[3] 建物の登記事項証明書で、建物が親の名義で登記されているか確かめる
↓ 未登記なら、相続登記の前に表題登記から
[4] 地主に契約書の控えと受領簿の有無を尋ねる
↓
[5] 双方の記録が一致した内容を覚書にまとめ、署名する
↓ 契約日、地代、支払日、更新の履歴、期間の残り
[6] 一致しない点(期間の起点など)は、争いになる前に書面で「保留」と明記する
- 借地権の存在は示せる: 建物が登記されていれば10条1項で対抗力があり、地代を払い続けてきた事実で賃貸借の存在は裏付けられます
- 困るのは期間: 契約がいつ始まったか、いつ更新されたかが分からないと、残存期間が出ません。残存期間は出口2以降の交渉と、相続税評価(定期借地権等の場合)に関わります
- 建物が未登記のことがある: 古い家では建物の登記そのものがされていないことがあります。この場合、まず表題登記をしてから相続登記に進みます。手順は相続登記の記事を参照してください
地主に記録を尋ねるのは、関係を悪くする行為ではありません。契約内容を確定させることは地主にとっても利益で、双方の認識が食い違ったまま次の代に持ち越すほうが、あとで大きな争いになります。
借地権の種類で「更新できるか」「いつか返すのか」が決まる
💡 この章の要点: 契約が 旧借地法の借地権、借地借家法の普通借地権、定期借地権等 のどれかで、更新の有無と、期間満了時に建物買取請求(13条)ができるかが変わる。旧法の契約でも借地借家法が原則として適用されるが、更新、朽廃、再築による延長は旧法のまま(附則4条〜7条)。定期借地権は更新がなく、期限が来たら返す。
6種類の比較
| 種類 | 根拠 | 存続期間 | 更新 | 期間満了時 | 建物買取請求(13条) |
|---|---|---|---|---|---|
| 旧借地法の借地権 | 借地借家法の施行(1992年8月)より前に設定 | 旧法の定め(本記事では数値を扱わない) | 旧法の定めによる(附則6条) | 旧法の更新規定による(附則6条) | 借地借家法13条が適用される(附則4条) |
| 普通借地権 | 借地借家法3条〜 | 30年以上(契約でこれより長くできる) | 最初の更新は20年、以後10年(4条)。建物があれば法定更新(5条) | 更新請求か使用継続で更新。地主の異議には正当事由が要る | できる |
| 定期借地権 | 22条 | 50年以上 | なし | 返す | 特約で「しない」と定められる |
| 事業用定期借地権等 | 23条 | 30年以上50年未満、または10年以上30年未満 | なし | 返す | 特約で「しない」と定められる(10年以上30年未満は13条自体が不適用) |
| 建物譲渡特約付借地権 | 24条 | 30年以上 | 設定後30年以上経過した日に建物を地主に相当の対価で譲渡して消滅 | 建物ごと地主に渡す | 譲渡特約が代わりになる |
| 一時使用目的の借地権 | 25条 | 一時使用 | なし(3条〜8条、13条などが不適用) | 返す | できない |
条文はいずれも借地借家法(2026-09-10確認)。旧借地法の存続期間の年数は、この記事では扱いません。
自分の契約がどれかを見分ける
契約日(または最初に借りた時期)は 1992年8月より前か?
├─ 前 ────────────────────▶ 旧借地法の借地権
└─ 後 ── 契約書に「更新しない」「買取請求をしない」の特約があるか?
├─ ある ── 公正証書か、事業用の建物か?
│ ├─ 事業用・公正証書 ─▶ 事業用定期借地権等(23条)
│ ├─ 30年以上で建物を地主に譲渡する特約 ─▶ 建物譲渡特約付(24条)
│ └─ 50年以上・書面 ─▶ 定期借地権(22条)
└─ ない ────────────────────▶ 普通借地権(3条〜)
- 1992年8月が境目: 借地借家法は平成4年8月に施行され、それより前に設定された借地権には旧借地法の一部が引き続き適用されます(国土交通省 定期借地権の解説、2026-09-10確認)。祖父母や親が戦後に借り始めた土地は、ほぼこちらです
- 旧法の契約に借地借家法はどこまで及ぶか: 附則4条は、借地借家法の規定を施行前に生じた事項にも適用する、と定めています。例外が附則5条〜7条で、建物の朽廃による消滅、契約の更新、建物の滅失後の再築による期間の延長は「なお従前の例による」とされています(借地借家法附則4条〜7条、2026-09-10確認)
- 旧法の契約でも使える条文: 対抗力(10条)、地代の増減請求(11条)、建物買取請求(13条1項)、譲渡の代諾許可(19条)は、附則の経過措置(附則4条〜14条)で除外されていないので旧法の契約にも及びます。一方、更新後の建物の再築の許可(18条)は、施行前に設定された借地権には適用されません(附則11条)
- 定期借地権は期限が来たら返す: 契約の更新がなく、建て替えによる期間の延長もなく、建物買取請求もしない旨を定められます(22条)。1992年8月以降に新しく借りた土地で、契約書に特約があればこちらです
期間の数え方
普通借地権の期間は、次の3つの条文で決まります。
- 3条: 存続期間は30年。契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間
- 4条: 更新後の期間は、最初の更新が20年、その後は10年。当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間
- 7条: 期間満了前に建物が滅失し、地主の承諾を得て残存期間を超えて存続する建物を建てたときは、承諾の日か築造の日の早いほうから20年延長(残存期間のほうが長ければ、そちら)
「借地権は30年後にどうなるのか」という問いの答えは、この3条と5条にあります。30年が来ても、建物があって借地権者が更新を請求すれば(あるいは使い続ければ)、地主が正当事由のある異議を述べない限り更新されます。30年で自動的に終わる契約は、22条以下の定期借地権等だけです。
借地権の相続税評価
💡 この章の要点: 借地権は相続税の課税対象で、評価額は 自用地としての価額 × 借地権割合(国税庁 No.4611)。借地権割合は路線価図に A〜G の記号(90%〜30%)で示される。定期借地権等は計算方法が別。この評価額は 税金を計算するための数字 で、地主に売るときの価格でも業者の査定額でもない。
評価の仕組み
国税庁のタックスアンサー No.4611 は、借地権を次のように扱っています(国税庁 No.4611 借地権の評価、令和8年4月1日現在法令等、2026-09-10確認)。
- 課税対象: 借地権は相続税と贈与税の課税対象になる
- 5種類: 借地権(旧借地法、借地借家法)、定期借地権、事業用定期借地権等、建物譲渡特約付借地権、一時使用目的の借地権。評価では最初の1つを「借地権」、残り4つを「定期借地権等」として扱う
- 借地権の価額: その宅地の自用地としての価額 × 借地権割合
- 借地権割合: 借地事情が似ている地域ごとに定められ、路線価図や評価倍率表に表示されている
- 定期借地権等の価額: 原則として、課税時期に借地権者に帰属する経済的利益と、その存続期間を基として評定した価額
路線価図の読み方
借地権割合は、国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)で確かめます。路線価図では、路線価の右隣にアルファベットの記号が付いていて、これが借地権割合です(国税庁 路線価図の説明、2026-09-10確認)。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
- 路線価の単位: 1平方メートル当たりの価格を千円単位で表示
- 自用地としての価額: 路線価を基に、地積や土地の形状を反映して出す額。ここは通常の土地評価と同じ
- 評価倍率表の地域: 路線価が付いていない地域では、評価倍率表で自用地価額を出し、同じ表に示された借地権割合を掛ける
仮の数値で計算例
数値はすべて仮定です。実際の路線価と借地権割合は、財産評価基準書で自分の土地の路線を確かめてください。
仮に、自用地としての価額を 3,000万円、借地権割合を D(60%) とすると
借地権の価額 = 3,000万円 × 60% = 1,800万円
同じ土地で、借地権割合が C(70%) なら 2,100万円、E(50%) なら 1,500万円
- 建物は別に評価する: 借地権は土地の上の権利の評価で、建物は固定資産税評価額を基に別途評価します
- 人に貸している建物がある場合: 評価方法が変わる可能性があるので、税理士に確かめます。自宅や空き家のままなら、上の式で足ります
- 定期借地権等は税理士に: 残存期間と設定時の経済的利益を基にした計算で、路線価図の割合をそのまま掛ける方法ではありません
評価額と売買価格は別のもの
| 項目 | 相続税評価額 | 売買価格 |
|---|---|---|
| 目的 | 相続税を計算する | 実際に取引する |
| 決め方 | 自用地価額 × 借地権割合(定期借地権等は別) | 地主との交渉、または買主の査定 |
| 影響する要素 | 路線価、地積、形状、借地権割合 | 上記に加えて、残存期間、地代の水準、更新の見込み、地主の承諾の温度感、建物の状態 |
| 誰が決めるか | 国税庁の基準 | 当事者 |
地主に買い取ってもらう相場は、と聞かれることがあります。法律にも国税庁の基準にも「売買価格はこう決める」という定めはなく、相続税評価額を出発点にするかどうかも含めて交渉で決まります。この記事では相場の数値を示しません。
相続税がかかるかどうかは、借地権を含めた遺産全体で決まります。基礎控除や申告期限の全体像は空き家相続の全体像を参照してください。
相続後の5つの出口を比較する

💡 この章の要点: 出口は、借地権を 持ち続ける(出口1)、地主に渡す(出口2、出口5)、第三者に渡す(出口3、出口4)の3方向に分かれる。誰と交渉するか、承諾が要るか、いつ使えるかが違う。定期借地権等では出口5が使えず、出口2〜4も残存期間が短いほど成立しにくい。
| 出口 | 誰と交渉するか | 何が要るか | 使える時期 | つまずく場所 |
|---|---|---|---|---|
| 1 借り続ける(住む、貸す、空き家のまま持つ) | 地主(更新時、建て替え時) | 地代の支払い継続、更新の合意、建て替えなら地主の承諾 | いつでも | 空き家のまま地代を払い続ける負担。建て替えや増改築に承諾が要る |
| 2 地主に買い取ってもらう | 地主 | 価格の合意、建物の引き渡し条件 | いつでも(地主が応じれば) | 地主に買う資金と動機がないと進まない。価格の基準がない |
| 3 底地と借地権をまとめて第三者に売る | 地主と買主 | 地主との共同売却の合意、代金の配分の合意 | いつでも(地主が応じれば) | 配分でもめる。地主が売る気になるまで待つことになる |
| 4 借地権付き建物として第三者、業者に売る | 地主と買主 | 地主の譲渡承諾(または裁判所の代諾許可、19条) | いつでも | 承諾が出ない。承諾の対価の交渉。買主が限られる |
| 5 更新せず建物買取請求(13条) | 地主 | 期間満了、更新しないこと、建物が存在すること | 期間満了時のみ | 期間満了まで待つ。使用を続けると法定更新になる(5条2項)。定期借地権等では使えない |
- 残存期間が長い場合: 出口1〜4が選べます。出口5は満了まで待つことになるので、実質的に選べません
- 残存期間が短い場合: 出口5が視野に入ります。出口2〜4は、買主(地主を含む)から見て「もうすぐ期間が切れる権利」なので、成立しにくくなります
- 定期借地権等の場合: 出口5はありません。出口4も、残存期間が買主の使用期間の上限になるので、期限が近いほど売りにくくなります
出口1 借り続ける
💡 この章の要点: 住むか貸すなら、相続前と同じ条件で続く。相続をきっかけに条件を変える義務はない。気を付けるのは 更新の時期、建て替えや増改築の承諾、空き家のままの地代負担 の3点。
続けるときに変わらないこと、変わること
- 変わらないこと: 地代、期間、更新の条件。民法896条で契約上の地位をそのまま引き継いでいるので、地主が新しい条件を提示しても応じる義務はありません
- 変わること: 借主の名前と支払い口座。書き換えを求められたら、事実の反映として応じます
- 更新の時期: 普通借地権なら、期間満了時に更新を請求するか、使い続ければ法定更新になります(5条1項と2項)。旧法の契約は、更新の扱いが旧法のままです(附則6条)
建て替えと増改築には承諾が要る
- 建て替え(再築): 期間満了前に建物が滅失して、残存期間を超えて存続する建物を建てるときは、地主の承諾があれば期間が20年延長されます(7条1項)。通知して2か月以内に地主が異議を述べなければ、承諾があったものとみなされます(7条2項。契約更新後の通知を除く)
- 増改築の制限がある契約: 増改築を制限する借地条件がある場合、地主が承諾しなければ、裁判所に承諾に代わる許可を申し立てられます(17条2項)。裁判所は財産上の給付を命じることがあります(17条3項)
- 更新後の建て替え: 更新後に建物が滅失した場合は、借地権者から解約を申し入れることができ、逆に無断で残存期間を超える建物を建てると地主が解約を申し入れられます(8条)。更新後にやむを得ない事情で建て替えるときの許可は18条ですが、旧法の契約には適用されません(附則11条)
貸す場合
借地上の建物を第三者に貸す場合は、契約書に建物の賃貸に関する定め(通知、承諾など)があるかを先に確かめ、無くても地主に伝えておくのが無難です。土地の転貸(民法612条)に当たるかどうかの判断は、契約の内容によるので専門家に確かめてください。人に貸した建物は、相続税評価の方法も変わる可能性があります。
出口2 地主に買い取ってもらう
💡 この章の要点: 地主にとっては、借地権が戻れば土地が 完全所有権 になる。第三者より高く買う動機を持ちうる唯一の相手で、承諾の問題も起きない。価格は 法律上の基準がなく交渉で決まる。地主に資金や動機がなければ進まないので、打診は早く、返事は急がせない。
地主が買う動機
- 土地が完全所有権に戻る: 底地(借地権が付いた土地)のままでは地主も売りにくく、借地権が戻れば自由に使え、売れる
- 承諾の手続きが要らない: 第三者への譲渡ではないので、承諾料の話も、19条の裁判もない
- 建物の扱いを決められる: 解体して更地にするか、建物ごと使うかを地主が選べる
価格の決め方
- 法律上の定めはない: 相続税評価額(自用地価額 × 借地権割合)を出発点に話す当事者もいれば、建物の価値と残存期間だけで話す当事者もいます。どちらが正しいという基準はありません
- 建物の扱い: 建物ごと渡すのか、解体して更地で返すのか、解体費を誰が持つのかで手取りが変わります
- 期間との関係: 残存期間が長いほど借地権者の立場は強く、期限が近いほど地主は「待てば戻る」と考えます
介入権(19条3項)という制度
出口4で第三者への譲渡許可を裁判所に申し立てると、地主には、自ら建物と借地権を裁判所の定めた価格で優先的に買い取る権利(介入権)が与えられます(東京地方裁判所 借地非訟とは、2026-09-10確認)。
- 地主の側から見ると: 「第三者に売られるくらいなら自分が買う」と考える地主は、この制度を通じて出口2に戻ってきます
- 借地権者の側から見ると: 出口4を進めても、最終的な買主が地主になることがある、と知っておくと交渉の組み立てが変わります
打診しても返事がない、資金がないと言われた、という場合は、出口3か出口4に進みます。地主に一度断られたことは、あとで買取業者が交渉するときの情報になります。
出口3 底地と借地権をまとめて第三者に売る
💡 この章の要点: 地主と一緒に売れば、買主は 完全所有権 を取得できるので、借地権だけ、底地だけで売るより合計の売値が伸びやすい。成立の鍵は 地主が売る気になるか と 代金の配分。地主も相続や高齢化で底地を手放したいと考えていることがある。
仕組み
[借地権者] 借地権 + 建物 ─┐
├──▶ [買主] 完全所有権として取得
[地主] 底地(土地) ─┘
↓
代金を借地権者と地主で配分
- 買主から見た魅力: 借地権付き建物は「土地を借りている家」、底地は「人に貸している土地」で、どちらも単独では買い手が限られます。合わせれば普通の土地建物です
- 地主から見た魅力: 底地は地代収入があるだけで自由に使えず、地主にとっても持て余す資産になりがちです。地主側に相続が起きたときは、まとめて売る話が地主から出ることもあります
- 承諾の問題がない: 借地権を第三者に譲渡する形ではありますが、地主自身が売主として同じ契約に加わるので、承諾は自明です
つまずく場所
- 配分: 代金を借地権者と地主でどう分けるか。相続税評価の借地権割合を目安にする当事者もいますが、これも決まりではなく合意の問題です
- タイミング: 地主が売る気になるまで待つことになります。こちらの事情(相続税の納付、空き家の管理)で急ぐ場合は、出口4と並行して進めます
- 買主探し: 地主と借地権者の双方が同意した状態で、買主を探すのは仲介会社か買取業者の仕事になります
出口4 借地権付き建物として第三者、業者に売る
💡 この章の要点: 第三者への譲渡には 地主の承諾(民法612条)が要る。承諾が出なければ、譲渡が地主に不利となるおそれがないときに限り、裁判所が 承諾に代わる許可(借地借家法19条)を出せる。相続の直後に選びやすい出口だが、承諾の対価、買主の少なさ、裁判になったときの期間が壁になる。売却の実務は別記事に委ねる。
承諾から代諾許可までの流れ
[1] 地主に譲渡の承諾を求める
↓ 承諾が出る ─▶ 承諾書を得て売却へ(対価の有無・額は交渉)
↓ 出ない
[2] 裁判所に「土地の賃借権譲渡の許可」を申し立てる(19条1項)
↓ 要件: 譲渡しても地主に不利となるおそれがないこと
[3] 審問、鑑定委員会の意見、地主の介入権の行使の有無
↓
[4] 決定(許可。財産上の給付を条件とすることがある)
↓ または、地主が介入権を行使して買い取る(出口2へ)
[5] 売却
- 19条1項: 第三者が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず承諾しないときは、裁判所が借地権者の申立てにより承諾に代わる許可を与えることができる。利益の衡平のため必要があれば、借地条件の変更を命じ、または許可を財産上の給付に係らしめることができる(借地借家法19条、2026-09-10確認)
- 19条2項: 裁判所は、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、譲渡を必要とする事情その他一切の事情を考慮する
- 旧法の契約でも使える: 19条は附則の経過措置で除外されていないので、旧借地法の契約にも適用されます
借地非訟の実際(東京地方裁判所の案内)
裁判所の手続きは「借地非訟事件」と呼ばれ、東京地方裁判所の民事第22部が案内を公開しています。
- 出典: 借地非訟事件手続の流れ、借地非訟事件の費用(いずれも2026-09-10確認)
- 範囲: 以下は東京地裁の案内で、他の裁判所の運用は別途確かめてください
| 段階 | 東京地裁の案内 |
|---|---|
| 申立て | 申立書を提出。手数料は土地の固定資産税評価額を基礎に算定し、収入印紙で納付 |
| 郵便切手 | 相手方1名で6,000円分、1名増えるごとに1,000円分を予納 |
| 第1回審問 | 申立てから概ね1か月〜1か月半後 |
| 鑑定委員会 | 主張の整理後に意見を求める。現地調査は審問から約1か月半後。鑑定委員の費用は国が負担 |
| 意見書後の審問 | 意見書の提出から1か月〜1か月半後 |
| 決定 | 決定の形式。不服があれば送達から2週間以内に即時抗告 |
案内にある間隔を足すだけで4か月前後になり、主張の整理や決定までの期間を含めればさらに延びます。相続税の納付や空き家の管理費が重なる相続直後に、この期間を待てるかどうかが、出口4を自分で進めるか業者に任せるかの分かれ目です。
相続固有の注意
- 承諾料は相続の話ではない: 相続そのものに承諾料は不要ですが、第三者に譲渡するこの出口では、承諾の対価が交渉に上ります。金額に法律上の定めはなく、裁判所の許可でも財産上の給付が条件になることがあります
- 相続登記が前提: 建物が親の名義のままでは売却の決済ができません。出口4を選ぶなら、相続登記を先に済ませます
- 買主が限られる: 借地権付き建物を買うのは、借地に理解のある個人か、借地権を専門に扱う業者です。仲介で買主を探すか、業者に直接売るかで進み方が変わります
売却の実務は、この記事では扱いません。次の記事に分けています。
- 承諾交渉を業者が引き受けるか、仲介と買取でどう違うか、売る前に揃えると効く書類、価格の考え方: 訳あり物件の売却の「借地権付きの物件」章
- 買取と仲介の一般的な違い: 買取と仲介の比較
- 業者の見極め: 空き家買取業者の選び方
出口5 更新せず建物買取請求(13条)に進む
💡 この章の要点: 期間満了時に契約を更新しないなら、借地権者は地主に建物を 時価で買い取るよう請求できる(13条1項)。ただし使えるのは 期間満了時だけ で、満了後も使い続けると法定更新(5条2項)になる。定期借地権等では特約で使えないことが多い。建物を壊して返す義務を負わずに済む出口だが、時価の評価と地主の資金で争いになりやすい。
条文の中身
- 13条1項: 存続期間が満了した場合において契約の更新がないときは、借地権者は地主に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求できる(借地借家法13条、2026-09-10確認)
- 5条2項: 存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、法定更新になる(地主が遅滞なく異議を述べたときを除く)
- 22条、23条: 定期借地権と事業用定期借地権等では、13条の買取請求をしない旨を定められる。10年以上30年未満の事業用定期借地権では13条自体が適用されない
使い方と落とし穴
期間満了が近い
├─ 更新したい ─▶ 更新請求(5条1項)。地主の異議には正当事由が要る(6条)
└─ 更新しない ─▶ 満了時に建物買取請求(13条)
↓ 落とし穴
満了後も住み続ける・物を置き続けると、使用継続として法定更新(5条2項)
→ 「更新しない」意思を書面で示し、明け渡しの段取りを先に組む
- 時価: 13条が定めるのは「建物その他借地権者が土地に附属させた物」を時価で買い取らせる請求で、借地権そのものを買い取らせる制度ではありません。古い建物ほど時価は低く、この出口で得られる額は限られます
- 地主の資金: 買取請求が成立しても、地主に支払い能力がなければ実際に代金を受け取れるかは別問題です
- 旧法の契約: 13条1項は附則の経過措置で除外されていないので旧法の契約にも適用されます(13条2項は旧法の契約には適用されない、附則9条)。ただし「更新」の扱いは旧法のまま(附則6条)なので、満了時に何が起きるかは旧法の規定で確かめます
期間満了まで長い契約では、この出口は将来の話です。いま空き家になっている実家をどうするかという判断には、出口1〜4のほうが関わります。
借地上の空き家に固有の3つの問題
💡 この章の要点: 所有権の空き家と違い、借地上の空き家は 住んでいなくても地代がかかる。建て替えや大きな修繕に 地主の承諾 が要り、放置して管理不全になると 契約上の義務違反 を問われる可能性がある。「とりあえず持っておく」の費用が所有権の空き家より高い。
| 問題 | 何が起きるか | 根拠 | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| 地代を払い続ける | 住んでいなくても毎月の支払いが続く。滞納すると催告のうえ契約を解除されうる | 民法541条(催告による解除。軽微な不履行を除く) | 支払い口座を早く切り替える。出口を決める期限を自分で設ける |
| 建て替えに承諾が要る | 古い建物を建て替えたくても、地主の承諾(または裁判所の許可)が要る。建物が滅失したまま2年を過ぎると対抗力を失う | 借地借家法7条、17条2項、10条2項 | 建て替えて住む予定がないなら、承諾交渉より出口2〜4の検討が先 |
| 管理不全 | 倒壊のおそれ、草木の越境、不法投棄などで地主や近隣に迷惑がかかる。契約や目的物の性質で定まった用法に従う義務に反する状態になりうる | 民法594条1項(616条で賃貸借に準用) | 最低限の管理(通風、草刈り、施錠)を続ける。管理できないなら出口を急ぐ |
- 地代の滞納は解除の入口: 民法541条は、債務を履行しない当事者に相当の期間を定めて催告し、期間内に履行がなければ契約を解除できる、と定めています(不履行が軽微なときを除く)(民法541条、2026-09-10確認)。相続直後の口座切り替えの遅れで数か月分が未払いになる、という事故が起きやすい時期です
- 建物が無くなると対抗力が弱まる: 建物が滅失しても、建物を特定する事項と滅失の日、再築する旨を土地の見やすい場所に掲示すれば対抗力は続きますが、滅失から2年を過ぎると、再築して登記していない限り効力を失います(10条2項)。空き家を解体して更地にしたまま放置する選択は、借地では取りにくい
- 用法遵守: 借主は契約または目的物の性質によって定まった用法に従って使用収益しなければならず(594条1項、616条で賃貸借に準用)、違反があれば貸主は契約を解除できます(594条3項)。空き家の放置がただちに違反になるわけではありませんが、近隣に危険が及ぶ状態を長く続ければ、地主から問われる材料になります
解体して更地で返すか、建物を残して出口2〜4に進むかは、上の対抗力の話と解体費の負担を合わせて決めます。所有権の空き家での解体判断は解体と売却の比較にまとめていますが、借地では「更地にしてから売る」が成り立たない点が違います。
モデルケース 旧法借地の実家を相続してから決済まで
💡 この章の要点: 地主から名義書換料を求められた相続人が、契約書を復元し、地主への買取打診を経て、業者への売却で決済した架空の例。相続に承諾は要らないと伝えたうえで関係を保つ ことと、地主に先に打診した記録 が、あとの交渉の材料になった。
数字を伏せた架空の例ですが、旧法借地の相続空き家ではよくある経過です。
- 物件: 首都圏の住宅地、木造2階建て、築50年。祖父の代から借りている土地で、契約書は昭和50年代に一度作り直したものが1通
- 相続人: 県外在住の長男。実家に住む予定はない
- 地主: 近所に住む2代目。父親同士の付き合いが長かった
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1か月目 | 通帳から地代の額と振込先を特定。地主に相続の事実と今後の支払いを通知。地主から「名義書換料をお願いしたい」と言われる |
| 2か月目 | 相続は譲渡ではなく、書換料の支払義務はないことを丁寧に伝える。契約書の控えと受領簿を地主から見せてもらい、更新の履歴を覚書にまとめる |
| 3か月目 | 建物の相続登記を完了。契約は1992年8月より前の設定で、旧法借地と確認。残存期間は10年超 |
| 4か月目 | 相続税評価額を算出(路線価図の借地権割合で計算)。地主に「買い取る意向はあるか」を打診 |
| 5か月目 | 地主から「資金の都合で難しい」と返答。同時に、第三者への譲渡なら承諾は検討すると言われる |
| 6か月目 | 借地権を扱う買取業者2社に査定を依頼。地主に打診済みで承諾の温度感が分かっていることを伝える |
| 7か月目 | 高いほうの業者と契約。承諾交渉は業者が引き継ぎ、地主との書面を整えて決済 |
この例から拾える判断材料は3つです。
- 承諾の話と関係の話は分ける: 支払義務がないことは伝えつつ、契約書の復元を地主と一緒に進めたことで、あとの承諾交渉が滑らかになった
- 地主への打診は最初に: 断られた事実そのものが、業者にとっては「承諾は出そうだが地主は買わない」という情報になった
- 契約の種類と残存期間を先に確定させる: 旧法で残存10年超と分かっていたから、業者は査定を出せた。ここが不明のまま査定を頼むと、保守的な数字しか出てこない
相続した家の売却で税金がどうなるか(譲渡所得税、相続空き家の3,000万円特別控除)は、譲渡所得税の記事と3,000万円控除の記事を参照してください。借地権付き建物でも、家屋と敷地の要件を満たすかどうかを個別に確かめる必要があります。
借地権の相続でよくある質問
- 1. 地主から「相続には承諾が要る」と言われました。本当ですか?
要りません。相続は民法896条の包括承継で、承諾が要る譲渡や転貸(民法612条)には当たりません。承諾料や名義書換料を払う義務もありません。ただし、契約書に相続時の取り決めが書かれていることがあるので、契約書の該当条項は確かめてください。
- 2. 相続人が複数います。借地権は誰のものになりますか?
遺産分割協議で決めます。決まるまでは相続人全員の共有です。
- 一人に集める: 出口を選ぶときに全員の同意が要らなくなる
- 共有のままにする: 建物の登記も共有になり、売却や建て替えに全員の同意が要る
共有の解消と持分の扱いは共有名義の空き家を参照してください。
- 3. 名義変更には何が要りますか?
「名義」が3つあります。建物の登記名義は法務局で相続登記(戸籍、遺産分割協議書など)、契約の借主名義は地主との覚書か契約書の書き換え、地代の支払い口座は金融機関と地主への連絡です。土地の登記は地主のものなので動かしません。手順は相続登記の記事にまとめています。
- 4. 借地権は30年後にどうなりますか?
普通借地権(借地借家法3条)なら、30年が来ても建物があって更新を請求する(または使い続ける)限り、地主が正当事由のある異議を述べない限り更新されます。更新後の期間は最初が20年、その後は10年です(4条)。30年で確実に終わるのは、定期借地権(22条)など更新のない契約だけです。
- 5. 地主に買い取ってもらう相場はいくらですか?
法律にも国税庁の基準にも、売買価格の定めはありません。相続税評価額(自用地価額 × 借地権割合)を出発点にする当事者もいれば、建物の価値と残存期間で話す当事者もいます。この記事では相場の数値を示していません。地主の資金と動機、残存期間、建物の扱い(解体費を誰が持つか)で決まります。
- 6. 相続税評価額はどう出しますか?
自用地としての価額に借地権割合を掛けます(国税庁 No.4611)。借地権割合は路線価図で路線価の右隣にA〜Gの記号で示され、A90%からG30%まで10%刻みです。定期借地権等は別の計算で、残存期間と設定時の経済的利益を基にします。申告が要るかどうかは遺産全体で決まるので、税理士に相談してください。
- 7. 契約書がありません。借地権は無いことになりますか?
無くなりません。建物が登記されていれば借地権を第三者に主張でき(10条1項)、地代の支払い実績で賃貸借の存在は裏付けられます。困るのは契約の始期と更新の履歴なので、通帳、登記事項証明書、地主側の記録を突き合わせて覚書にまとめます。手順は復元手順の章を参照してください。
- 8. 空き家のまま地代を払い続けるのは損ですか?
住まない家の地代と固定資産税(建物分)を払い続けるだけなら、負担だけが続きます。借地では更地にして持ち続ける選択が取りにくい(建物滅失後は掲示をしても2年で対抗力を失う。10条2項)ので、住まないと決めたなら出口2〜4のどれかに早めに進むほうが、負担の総額は小さくなります。
- 9. 借地権ごと相続放棄できますか?
できます。相続放棄は借地権だけを選んで放棄する制度ではなく、被相続人の財産全部を放棄する手続きです。熟慮期間や、放棄後も残る管理の義務は相続放棄の記事を参照してください。
動くなら早いほうが選択肢が多い
空き家には「特定空家指定で固定資産税が最大6倍」「相続から3年以内の譲渡で3,000万円特別控除」など、期限のある制度が複数あります。 借地権付きの家は、住まない間も地代が続きます。売却を決める前でも、いま無料査定を取っておくだけで判断材料が増えます。
まとめ 承諾は要らない、決めるのは出口
最後に、この記事の手順を整理します。
- 相続に地主の承諾は要らない: 民法896条の包括承継で、承諾が要る譲渡(612条)ではない。承諾料、名義書換料の支払義務もない
- それでも地主から言われることには、それぞれ位置づけがある: 更新料は契約書の定め、地代の値上げは11条の要件、明け渡しは5条と6条の正当事由
- 名義変更は3つ: 建物の相続登記(10条1項の対抗力の根拠)、地主との契約書の書き換え、地代の支払い口座
- 契約書が無くても借地権は消えない: 通帳、登記事項証明書、地主側の記録で復元し、覚書にまとめる
- 契約の種類で更新と出口が変わる: 旧法か普通借地権か定期借地権等か。1992年8月が境目で、旧法の契約でも借地借家法は原則適用、更新の扱いだけ旧法のまま
- 相続税評価は自用地価額 × 借地権割合: 路線価図のA〜G。評価額は税金の数字で、売買価格ではない
- 出口は5つ: 借り続ける、地主に買い取ってもらう、底地と一緒に売る、業者や第三者に売る、建物買取請求。残存期間と契約の種類で、使える出口が絞られる
承諾がどうかで迷う時間は、短くて済みます。時間をかけるべきなのは、契約の種類と残存期間を確定させ、地主に一度打診し、そのうえでどの出口を選ぶかです。
関連: 訳あり物件の売却 / 空き家相続の全体像 / 相続登記の義務化
借地権付きの実家こそ無料査定を
借地権付きの家は、地主との交渉ごと引き受けられる買取業者なら現況のまま手放せます。査定は無料で秘密厳守。
- 査定も相談も無料。売ると決める前の段階でも、買取可否と概算金額が分かります
- 現状渡しでOK。片付けも解体も不要で、撤去・解体費は運営側の負担です
- 仲介手数料0円。契約から決済まで最短数日で、遠方からでも手続きを進められます
- 弁護士・税理士・司法書士の3士業と連携。借地権、共有持分、相続未登記、事故物件も相談できます
しつこい営業はありません。





