小規模宅地の特例とは?空き家でも使える条件|家なき子・老人ホーム入所・売却時期の注意点【2026】
父が亡くなり、実家は空き家になった。母は先に亡くなっていて、相続人は県外に住む自分ひとり。相続税の相談に行くと、税理士に「小規模宅地の特例が使えるかどうかで、税額がまるで変わります」と言われた。
帰り道に残った疑問は3つです。
- 同居していない: 別居のまま相続する自分に、そもそも使えるのか
- 老人ホーム: 父は最後の2年を有料老人ホームで過ごした。空き家だった実家を「住んでいた家」に数えてもらえるのか
- 早く売りたい: 遠方の空き家を持ち続けたくない。すぐ売ると何か外れるのか
小規模宅地等の特例(条文上の名称は「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」、租税特別措置法69条の4、2026-09-17確認)は、亡くなった人が住んでいた宅地を要件を満たす親族が相続したとき、330㎡までの部分について相続税の評価額を80%減らす制度です。
検索すると「小規模宅地の特例」とも「小規模宅地等の特例」とも書かれていますが、同じ制度を指しています。
結論は3点です。
- 相続税がかからない人には関係ありません。 遺産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、特例を考える前に申告自体が要りません。ただし「特例を使えば基礎控除以下になる」場合は、申告が要ります。
- 別居の子が使えるかは、いわゆる「家なき子」の6要件で決まります。 亡くなった親に配偶者がおらず、同居していた相続人もおらず、自分が3年以内に持ち家に住んでいない、といった条件をすべて満たす必要があります。「家なき子」は法令の用語ではなく、この6要件を指す通称です。
- 申告期限(10か月)まで売ってはいけません。 特例には「相続開始時から申告期限まで有していること」という保有継続の要件があり、それより前に手放すと外れます。売るのは申告期限の後、相続空き家の3,000万円控除の期限までに、という順序になります。
制度の一般論は税理士事務所と国税庁の解説に十分そろっています。この記事は、親の家が空き家になった別居の相続人が実際に迷う3つの場面(別居、老人ホーム、早期売却)と、申告期限の後に売る時系列を中心に書きます。
小規模宅地の特例 状況別ガイド
| いまの状況 | 読むべき章 |
|---|---|
| そもそも相続税がかかるか分からない | 入口の判定 |
| 制度の全体像を短く知りたい | 特例の骨格 |
| 同居していない自分が使えるか判定したい | 家なき子の6要件 |
| 親が老人ホームに入っていた | 老人ホーム入所の扱い |
| 相続後すぐ売りたい | 保有継続要件と申告期限 |
| 3,000万円控除も使いたい | 申告期限のあとに売る時系列 |
| いくら変わるか見当をつけたい | 仮定を置いた1例 |
| 兄弟で相続する | 相続人が複数いるとき |
そもそも相続税がかかるか。特例を考える前の入口
💡 この章の要点: 相続税の申告が要るのは、遺産の合計が 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) を超えるときだけ。その判定は 特例を使う前の価額 で行う(国税庁 No.4205 注2)。特例なしで基礎控除以下なら申告も特例も不要、特例を使えば基礎控除以下になるなら 税額0でも申告が要る。
基礎控除の計算
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
相続人が子1人 → 3,600万円
相続人が子2人 → 4,200万円
相続人が配偶者と子2人 → 4,800万円
法定相続人の数は、相続放棄をした人がいても放棄がなかったものとして数えます(国税庁 No.4152、2026-09-17確認)。
判定は2段で行う
「特例を使えば基礎控除以下だから、申告は要らない」という読み方は間違いです。国税庁は、申告が要るかどうかの判定に使う財産の価額を、小規模宅地等の特例を「適用しない場合における課税価格の合計額」と定めています(国税庁 No.4205、2026-09-17確認)。
| 遺産の合計(特例を使う前) | 特例を使った後 | 申告 | この記事の続き |
|---|---|---|---|
| 基礎控除以下 | 関係なし | 不要 | 読まなくてよい |
| 基礎控除超 | 基礎控除以下 | 必要(税額は0になりうる) | 要件を判定する |
| 基礎控除超 | 基礎控除超 | 必要 | 要件を判定する |
- 申告期限: 亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内。1月6日に亡くなればその年の11月6日(No.4205)
- 提出先: 亡くなった人の住所地を所轄する税務署。相続人の住所地ではない
- 期限の数え方、税率表、遅れたときの加算税: 空き家相続の期限カレンダーにまとめてある
実家1軒と預貯金の相続なら、合計を左右するのは土地の評価額です。路線価と面積を掛けた土地の概算に、建物の評価額と預貯金を足して基礎控除(相続人が子1人なら3,600万円)に届かないなら、この先は読まなくて済みます。届きそうなら、特例で下げられるかどうかが次の問いです。
小規模宅地等の特例とは何か。減るのは土地の評価額だけ
💡 この章の要点: 減額の対象は 宅地等(土地と土地の上の権利) で、建物の評価額は減らない。亡くなった人が住んでいた宅地なら 330㎡まで80%減。誰が取得したかで要件が変わり、配偶者は要件なし、同居親族は居住と保有の継続、別居親族は6要件(俗称「家なき子」)。事業用と貸付事業用の区分もあるが、空き家の相続で使うのは居住用の区分。
区分ごとの限度面積と減額割合
国税庁の表(No.4124、令和8年4月1日現在法令等、2026-09-17確認)を、そのまま並べます。
| 相続開始の直前の利用区分 | 該当する宅地等 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 亡くなった人などの事業用(貸付以外) | 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 一定の同族法人に貸していた事業用 | 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用(アパート、駐車場など) | 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
| 亡くなった人などの居住用 | 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
- 対象は宅地等: 国税庁は「土地または土地の上に存する権利」と定義している。建物の評価額はこの特例では減らない
- 空き家の相続で使うのは最後の行: 空き家の相続で問われるのは、親が住んでいた家の敷地が「特定居住用宅地等」に当たるかどうか
- 330㎡を超える部分: 超えた分は減額されない。100坪(約330㎡)が目安
- 事業用と居住用の両方がある場合: 合計730㎡まで併用できる。貸付事業用が混ざると計算式で調整される(No.4124)
取得者ごとの要件
同じ宅地でも、誰が相続したかで要件が変わります。
| 取得した人 | 要件 | 空き家の相続での位置 |
|---|---|---|
| 配偶者 | なし(No.4124「取得者ごとの要件はありません」) | 母が相続するなら要件を考えなくてよい |
| 同居していた親族 | 相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に住み、かつ宅地を申告期限まで有していること | 空き家なら該当しない |
| 別居の親族(上記以外) | 6要件をすべて満たすこと。俗称「家なき子」 | 空き家を相続する別居の子はここ |
| 亡くなった人と生計を一にしていた親族が住んでいた宅地を、その親族が取得 | 相続開始前から申告期限まで住み続け、かつ宅地を申告期限まで有していること | 空き家なら該当しない |
「家なき子」という言葉は、法令にも国税庁の解説にも出てきません。
- 条文と国税庁の表での呼び方: 「上記1および2以外の親族」、つまり配偶者でも同居親族でもない親族
- 通称の指すもの: 6要件のうち「持ち家に住んでいない」の部分を指した呼び名で、法令の用語ではない
- この記事での扱い: 以下でもこの通称を使うが、要件の中身は国税庁の文言で判定する
ケース1: 別居の子が相続する。「家なき子」の6要件
💡 この章の要点: 別居の子が特例を使うには、国税庁の表の (1)から(6)をすべて満たす 必要がある。先に閉まる門は (2)配偶者がいないこと と (3)同居していた相続人がいないこと。次に (4)3年以内に自分や配偶者、三親等内の親族などの持ち家に住んでいないこと、(5)今住んでいる家を過去に所有したことがないこと。最後が (6)申告期限まで宅地を有していること。判定は事案ごとに分かれるため、申告の前に税理士に確認する。
6要件の判定表
国税庁 No.4124 の「上記1および2以外の親族」の要件を、番号を保ったまま並べます(2026-09-17確認)。条文(措法69条の4第3項2号ロ)の文言と一致することも、e-Gov で確認しました。
| 番号 | 要件(国税庁の文言を要約) | 空き家の相続での典型 |
|---|---|---|
| (1) | 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち、日本国籍を有しない者でないこと | 日本に住む日本国籍の子なら該当しない。海外在住なら要確認 |
| (2) | 亡くなった人に配偶者がいないこと | 母が健在なら、別居の子はこの門で閉まる |
| (3) | 相続開始の直前に、亡くなった人の家に住んでいた相続人がいないこと(相続放棄した人も、放棄がなかったものとして数える) | 兄が実家で同居していたなら、別居の弟は使えない。兄が放棄しても同じ |
| (4) | 相続開始前3年以内に、日本国内にある、取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族、取得者と特別の関係がある法人が所有する家屋(亡くなった人の家を除く)に住んだことがないこと | 3年以内に自分の持ち家、配偶者名義の家、兄弟の家に住んでいたら外れる。他人が所有する賃貸なら通る |
| (5) | 相続開始時に取得者が住んでいる家屋を、相続開始前のいずれの時点でも所有したことがないこと | 自宅を子に売って賃借人として住み続ける形は通らない |
| (6) | その宅地等を相続開始時から申告期限まで有していること | 申告期限より前に売ると外れる(ケース3) |
落ちやすい順に見る
冒頭の場面(県外に住む子ひとり、父が亡くなり母はすでに他界)なら、(2)と(3)は通ります。問題は(4)と(5)です。
- (4)の範囲は自分の持ち家だけではない: 配偶者の名義の家、親や兄弟(三親等内)の家、自分や親族が過半数の株を持つ会社(特別の関係がある法人)の社宅も含まれる。「3年以内に住んだ家の所有者が誰か」を家ごとに確かめる
- (4)で除かれるのは亡くなった人の家だけ: 相続開始前に一時的に実家へ戻っていた期間があっても、その実家は「被相続人の居住の用に供されていた家屋」なので(4)には引っかからない
- (5)は過去の所有歴を問う: いま賃貸に住んでいても、その家を以前に自分が所有していたなら外れる
- (6)は10か月間の縛り: 相続してすぐ売る予定なら、売る時期を申告期限の後にずらす
「賃貸に住んでいれば大丈夫」という理解だけでは足りません。賃貸であっても外れる形が2つあります。
- 大家が親族: 借りている家の所有者が三親等内の親族や特別の関係がある法人なら、(4)に当たる
- 元は自分の家: 借りている家を過去に自分が所有していたなら、(5)に当たる
- 通る形: 他人が所有する家を借りて3年以上住んでおり、その家を所有した過去がない
この6要件は事実関係の細部で判定が分かれます。3年以内の住まいの所有者、過去の所有歴、海外在住の有無を書き出したうえで、申告の前に税理士に確認してください。
ケース2: 親が老人ホームに入っていた空き家
💡 この章の要点: 親が老人ホームに入って空き家になっていた家の敷地も、要介護認定等を受けていた、国税庁が列挙する施設に入っていた、入所後にその家を貸したり他人を住まわせたりしていない の3点を満たせば、「亡くなった人が住んでいた宅地」として扱われる(No.4124 注1)。要介護認定は 相続開始の直前 に受けていればよく、入所時に未認定でも構わない。入院はこの3点とは別に、期間の長短を問わず居住が続いていたものとして扱われる。
3点セット
| 条件 | 国税庁の文言(No.4124 注1、2026-09-17確認) | 手元に集めるもの(目安) |
|---|---|---|
| 認定 | 介護保険法の要介護認定または要支援認定を受けていた(障害支援区分の認定でも可) | 認定通知書、介護保険被保険者証 |
| 施設の種類 | 認知症対応型老人共同生活援助事業の住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅 | 入所契約書、施設の届出区分 |
| 入所後の家の使い方 | 「事業の用または新たに被相続人等以外の人の居住の用に供された場合を除きます」 | 入所後に貸していない、他人を住まわせていない |
認定の時期は相続開始の直前で見る
国税庁の質疑応答事例は、要介護認定を受けて特別養護老人ホームに入所し、退所しないまま亡くなった人について、入所前まで住んでいた家の敷地を「被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当する」と答えています(質疑応答事例 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地、令和7年8月1日現在、2026-09-17確認)。
同じ事例の注記が、認定の時期を決めています。
- 判定の時点は相続開始の直前: 入所した時点で認定を受けていなくても、亡くなる直前に受けていればよい
- 申請中に亡くなった場合: 相続開始後に認定が出れば、申請日にさかのぼって効力が生じるため、直前に認定を受けていた者として扱ってよい(質疑応答事例 要介護認定の申請中に死亡した場合、2026-09-17確認)
- 生計を一にする親族が住み続けていた場合: 「被相続人等以外の人の居住」には当たらない(同事例 注2)。同居していた母が入所後もそのまま住んでいたなら、この点では外れない
入院は別の扱い
老人ホームではなく病院に入院したまま亡くなった場合、上の3点セットは使いません。国税庁は、入院は一時的なもので生活の拠点はなお自宅にあると解しています(質疑応答事例 入院により空家となっていた建物の敷地、2026-09-17確認)。
- 期間: 「空家となっていた期間の長短を問わず」居住用の宅地に該当する
- 認定: この質疑応答事例は要介護認定を条件に挙げていない(3点セットは老人ホーム等の入所についての扱い)
- 除かれる場合: 入院後にその家を他の用途に使っていたとき
老人ホームの空き家を別居の子が相続するとき
老人ホームの3点セットは「その宅地が亡くなった人の居住用だったか」の判定で、取得者側の要件とは別です。別居の子が相続するなら、この3点セットに加えてケース1の6要件も満たす必要があります。
老人ホームの空き家を別居の子が相続する場合の判定
[宅地の側] 要介護認定等 + 列挙された施設 + 入所後に貸していない
↓ 通れば「亡くなった人が住んでいた宅地」
[取得者の側] 家なき子の(1)〜(6)
↓ 通れば
330㎡まで80%減(申告期限まで保有が条件)
3,000万円控除の側にも老人ホーム入所の要件があり、そちらは「入所後も物品の保管などに使われていたこと」を求めるなど、確認する点が少し違います(国税庁 No.3307、2026-09-17確認)。
控除側の要件は相続空き家の3,000万円特別控除を参照してください。
ケース3: 相続後すぐ売りたい。保有継続要件と申告期限
💡 この章の要点: 別居の子の要件(6)は「その宅地等を 相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」。申告期限は相続を知った日の翌日から 10か月。それより前に手放すと特例が外れ、減額前の評価額で相続税を計算することになる。売る予定があっても、所有権を手放す時期を申告期限の後に置く のが原則。契約日と決済日のどちらで判定するかは、この記事で確認した一次情報には書かれていないため、税理士に確認する。
要件の文言
国税庁 No.4124 の(6)は「その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」、条文(措法69条の4第3項2号ロ(3))は「相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有していること」です(いずれも2026-09-17確認)。
同居親族の場合も、宅地の保有については同じ期間の縛りがあります。
相続開始(死亡)
│
│ この10か月の間に宅地を手放すと、(6)を満たさない
│
▼
申告期限(知った日の翌日から10か月) ← ここまで有していることが要件
│
▼
申告期限の後は、特例の側からは売却の制約がない
特例あり、なしの時系列比較
| 項目 | 申告期限より前に売る | 申告期限まで保有して売る |
|---|---|---|
| 小規模宅地等の特例 | 使えない(要件(6)を満たさない) | 他の要件を満たせば使える |
| 相続税の評価額 | 減額なし | 330㎡まで80%減 |
| 売却代金の受け取り | 早い | 10か月以降 |
| 納税資金 | 売却代金から払える | 期限までに別途用意するか、期限直後の売却で払う |
| 3,000万円控除 | 要件を満たせば使える | 要件を満たせば使える(期限は同じ) |
- 納税資金が売却代金しかない場合: 申告期限まで保有すると、納税と売却が同じ時期に重なる。延納の制度や、期限直後に決済まで終える段取りは期限カレンダー
- 相続税がかからない人: 保有継続の縛りはそもそも関係ない。入口の判定に戻る
- 判定の基準日: 売買契約の日か、所有権移転(決済)の日かは、この記事で確認した一次情報には書かれていない。契約を申告期限の前に結ぶ予定があるなら、税理士に確認する
申告期限のあとに売る。3,000万円控除との時系列

💡 この章の要点: 相続空き家の3,000万円控除の売却期限は「相続開始日から 3年を経過する日の属する年の12月31日」と、制度の適用期限 令和9年(2027年)12月31日 の早いほう(No.3306)。申告期限(10か月)の後に売れば、保有継続要件と控除の期限は両立する。どちらの特例も 空き家のまま(貸さない、住まない、事業に使わない)を求めるので、相続から売却まで家を動かさないことが両立の条件になる。控除の要件本体は相続空き家の3,000万円特別控除で確認する。
時系列を1本に並べる
相続開始(死亡) 例: 2026年3月10日
│
│ 小規模宅地等の特例: 宅地を有し続ける
│ 3,000万円控除: 家を貸さない、住まない、事業に使わない
│
▼ 10か月
相続税の申告期限 例: 2027年1月10日
│ 申告書に特例の適用を記載して提出、納税
│
│ ← ここから売却できる
│
▼ 次の2つの早いほう
3,000万円控除の売却期限
│ (a) 3年を経過する日の属する年の12月31日 例: 2029年12月31日
│ (b) 制度の適用期限 令和9年12月31日 例: 2027年12月31日 ← こちらが先
│ (相続人が3人以上なら控除は2,000万円)
▼
売却した翌年に譲渡所得の確定申告
- 控除の適用期間: 平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象(No.3306、2026-09-17確認)。2025年以降に相続が開始した人は、3年ルールより先にこの適用期限が来る
- 例の場合に売却に使える期間: 申告期限の2027年1月10日から2027年12月31日まで、1年足らず。仲介で買主を探し始めて売れ残ると間に合わない。期限の3か月前を切ったら買取に切り替える判断は買取と仲介の比較
- 適用期限が延びるかどうか: この記事で確認した一次情報には書かれていない。延長を前提に計画を立てない
2つの特例が同じ家に求めること
| 項目 | 小規模宅地等の特例(相続税) | 相続空き家の3,000万円控除(譲渡所得税) |
|---|---|---|
| 税目 | 相続税。評価額を下げる | 譲渡所得税。売却益から控除 |
| 期限 | 申告期限(10か月)まで保有 | 3年を経過する日の属する年の12月31日と令和9年12月31日の早いほうまでに売却 |
| 家の使い方 | 老人ホーム入所後に貸していない、他人を住まわせていない(No.4124 注1) | 相続の時から譲渡の時まで事業、貸付、居住の用に供していない(No.3306) |
| 取得者の居住 | 別居親族には居住要件がない(保有だけ) | 住んではいけない |
| 建物 | 減額の対象外 | 昭和56年5月31日以前の建築などの要件(別記事) |
相続空き家の3,000万円特別控除の記事では、この2つを「条件付きで併用可」とし、同居親族の居住継続要件と控除の「空き家のまま」要件が矛盾しうると書いています。
- 同居親族が取得した場合: 特例は申告期限まで住み続けることを求め、控除は住まないことを求める。ここで矛盾が起きる
- 別居の子が取得した場合: 特例が求めるのは保有だけで、居住要件がない。矛盾は起きない
- 両立の形: 空き家のまま申告期限まで保有し、その後に売る
売却の税と相続の手順は、別の記事が担当しています。
- 取得費加算の特例との関係: 3,000万円控除と取得費加算は同じ家に併用できない(No.3306 要件(5))。どちらが有利かは取得費加算の特例
- 譲渡所得税の計算: 取得費、譲渡費用、税率は空き家の譲渡所得税
- 税金の全体像: 固定資産税、相続税、譲渡所得税の並びは空き家の税金総論
- 相続の手順全体: 何から始めるかは空き家相続の手順
減額でどれだけ変わるか。仮定を置いた1例
💡 この章の要点: 宅地の評価額2,000万円、他の財産2,000万円、相続人が子1人という仮定では、特例なしで相続税約40万円、特例ありで 0円(ただし申告は必要)。数字はすべてこの記事で置いた仮定で、実際の税額は評価額、面積、相続人の数、他の控除で変わる。
仮定(すべてこの記事で置いた数字)
宅地の評価額 2,000万円(面積200㎡。330㎡以内なので全部が対象)
建物の評価額 100万円
預貯金 1,900万円
法定相続人 子1人(配偶者なし)
基礎控除 3,000万円 + 600万円 × 1人 = 3,600万円
特例なし
課税価格の合計 = 2,000 + 100 + 1,900 = 4,000万円
課税遺産総額 = 4,000 − 3,600 = 400万円
相続税 = 400万円 × 10%(1,000万円以下の税率、No.4155) = 40万円
特例あり
宅地の評価額 = 2,000万円 × (1 − 0.8) = 400万円
課税価格の合計 = 400 + 100 + 1,900 = 2,400万円
→ 基礎控除3,600万円以下。相続税は0円
→ ただし申告要否の判定は特例前の4,000万円で行うので、申告は必要
- 宅地の評価額が大きいほど差は開く: 減額は評価額の80%なので、評価額3,000万円なら2,400万円下がる
- 税率は最小の行だけ使った: 法定相続分に応ずる取得金額が1,000万円を超えると税率が上がる。速算表の全体は期限カレンダー
- 建物は減らない: 築古で評価額が小さいことが多いが、この例でも100万円はそのまま
- 相続人が複数なら: 基礎控除が増える一方、宅地を誰が取得するかで要件が変わる(次章)
手続きと、相続人が複数いるとき
💡 この章の要点: 特例は 相続税の申告書に適用を受ける旨を記載し、計算の明細書と遺産分割協議書の写しなどを添付 して初めて使える(No.4124)。相続人が2人以上いるときは、どの宅地に特例を使うかについて全員が同意 し、原則として申告期限までに分割 が終わっていることが条件。宅地を取得する人が要件を満たすかどうかで、分け方そのものが変わる。
申告に必要なもの
- 申告書への記載: 特例の適用を受けようとする旨を書く。税額が0になる場合でも提出する
- 添付書類: 小規模宅地等に係る計算の明細書、遺産分割協議書の写しなど「一定の書類」(No.4124 手続き、2026-09-17確認)
- 老人ホーム入所の場合: 要介護認定等を示す書類と、施設の入所契約書などを手元に集めておく
- 家なき子の場合: 3年以内の住まいが賃貸であったことを示す賃貸借契約書など。何を添付するかは税理士に確認する
相続人が複数いるとき
| 論点 | 扱い |
|---|---|
| 誰が宅地を取得するか | 取得者ごとに要件が違う。母が取得すれば要件なし、別居の子が取得すれば6要件 |
| 兄弟のうち1人だけが要件を満たす | その人が宅地を取得する分け方にすれば、その持分について特例を使える(No.4124「取得した持分の割合に応ずる部分に限られます」) |
| 特例を使う宅地の選択 | 対象になりうる宅地を取得した人全員の同意が要る |
| 申告期限までに分割が終わらない | 原則として特例は使えない。法定相続分で申告し、分割後に更正の請求で適用し直す手順は期限カレンダー |
| 共有で相続してから売る | 売却には共有者全員の同意が要る。空き家の共有名義 |
| 遺産分割協議書の書き方 | 遺産分割協議書の作り方 |
分け方を先に決めてから要件を見ると、「要件を満たさない人が宅地を取得する協議書」になっていることがあります。順番は逆で、誰が取得すれば特例が使えるかを先に見て、それから分け方を決めます。
特例を使うと決めたら、売却の段取りは査定から

💡 この章の要点: 申告期限まで保有すると決めた人がやることは2つ。申告期限までに宅地の評価額と税額を確定させる(税理士)と、申告期限の後に売る段取りを先に組む(買取の査定)。査定を受けるだけなら宅地を手放したことにはならないため、10か月の間に概算金額を取っておくと、納税資金と売却時期の計画が立つ。
10か月の間にやること
[0〜3か月] 相続人の確定、遺産の洗い出し、宅地の評価額の概算
→ 基礎控除を超えるか(超えないならここで終わり)
[3〜6か月] 税理士に要件の判定を依頼(家なき子の6要件、老人ホームの3点)
遺産分割協議(誰が宅地を取得するか)
空き家の概算金額を査定で把握(売らない。手放さない)
[6〜10か月] 申告書の作成、添付書類の準備、納税資金の確保
[10か月] 申告と納税
[その後] 売却。3,000万円控除の期限(3年目の年末か2027年12月31日の早いほう)までに決済まで終える
- 査定は「有している」状態を崩さない: 査定は金額を聞く行為で、所有権は動かない。契約や手付金の受け取りまで進めなければ、要件(6)には影響しない
- 納税資金の見当がつく: 概算金額が分かれば、申告期限直後に売って納税に充てるのか、預貯金から払うのかを決められる
- 現況のままで査定できる: 残置物が残っていても、遺品整理の前でも、買取の査定は受けられる。3,000万円控除の「空き家のまま」を保つには、片付け以外は手を付けないのが安全
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小規模宅地の特例のよくある質問
- 1. 同居していない子でも、小規模宅地の特例は使えますか?
使える場合があります。 国税庁 No.4124 の6要件をすべて満たす必要があり、いわゆる「家なき子」の要件と呼ばれています。
- 親の側: 配偶者がいない。同居していた相続人がいない
- 自分の住まい: 相続開始前3年以内に自分、配偶者、三親等内の親族などの持ち家に住んでいない。今住んでいる家を過去に所有したことがない
- 相続後: 宅地を申告期限まで有している
- 国籍: 日本国籍のない居住制限納税義務者等でない
- 2. 「家なき子特例」という制度があるのですか?
制度の名前ではありません。 法令にも国税庁の解説にも「家なき子」という語は出てきません。小規模宅地等の特例のうち、配偶者でも同居親族でもない親族が使うときの6要件を指す通称です。要件の中身は国税庁 No.4124 の「上記1および2以外の親族」の(1)から(6)で判定します。
- 3. 父が老人ホームに入っていて、実家は2年間空き家でした。使えますか?
3点を満たせば、実家の敷地は「父が住んでいた宅地」として扱われます(No.4124 注1、質疑応答事例)。
- 認定: 父が要介護認定または要支援認定を受けていた(相続開始の直前で判定)
- 施設: 国税庁が列挙する施設(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など)に入っていた
- 入所後: その家を貸したり他人を住まわせたりしていない
そのうえで、取得する人の要件(別居の子なら6要件)を別に満たす必要があります。
- 4. 相続してすぐ売りたいのですが、特例は使えますか?
申告期限(10か月)より前に手放すと使えません。 別居の子の要件(6)は「相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」です。
- 売る時期: 申告期限の後
- その後の余裕: 相続空き家の3,000万円控除の期限(相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日と、令和9年12月31日の早いほう)まで売却に使える
- 確認すること: 契約日と決済日のどちらで判定するかは税理士に
- 5. 特例を使えば相続税が0円になります。申告は要りますか?
要ります。 申告が必要かどうかの判定は、特例を使う前の価額で行います(国税庁 No.4205 注2)。特例を使った結果が基礎控除以下でも、申告書に特例の適用を記載して提出しなければ特例は使えません。逆に、特例を使う前の価額で基礎控除以下なら、申告も特例も不要です。
- 6. 3,000万円控除と小規模宅地の特例は両方使えますか?
別居の子なら、時系列を守れば両立の余地があります。 小規模宅地等の特例は相続税、3,000万円控除は譲渡所得税と税目が違います。
- 順序: 申告期限まで宅地を保有し、その間も売却まで家を貸さず住まず事業に使わず、申告期限の後に控除の期限までに売る
- 控除側の要件: 建築時期、耐震または取壊し、売却代金1億円以下などは相続空き家の3,000万円特別控除で確認する
- 計画の確認: 両方を使う計画は税理士に見てもらう
- 7. 宅地が330㎡を超えています。全部使えませんか?
330㎡までの部分だけが80%減、超える部分は減額されません。 限度面積は宅地全体の適否ではなく、減額される面積の上限です(No.4124)。400㎡の宅地なら330㎡分が減額され、残り70㎡分は減額前の評価額のままです。
この記事が確認した一次情報
この記事の数値と要件は、次の一次情報で2026年9月17日に確認したものだけを書いています。それ以外(売買契約日と決済日のどちらで保有を判定するか、老人ホーム入所後の家の管理状態の細部、判例など)は確認できていないため、載せていません。
| 出典 | 確認した内容 |
|---|---|
| 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例 | 宅地等の定義、区分ごとの限度面積と減額割合、取得者ごとの要件(配偶者、同居親族、別居親族の(1)〜(6))、老人ホーム入所の扱い(注1)、手続き(令和8年4月1日現在法令等) |
| 国税庁 No.4152 相続税の計算 | 基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数、放棄した人の数え方 |
| 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税 | 知った日の翌日から10か月以内、提出先、申告要否の判定は特例を適用しない価額で行うこと(注2) |
| 国税庁 No.4155 相続税の税率 | 速算表の最初の行(1,000万円以下は10%)のみ |
| 国税庁 No.3306 空き家を売ったときの特例 | 売却期限(3年を経過する日の属する年の12月31日)、相続の時から譲渡の時まで事業、貸付、居住の用に供していないこと、適用期間、取得費加算との併用不可 |
| 国税庁 No.3307 老人ホーム等に入所していた場合 | 3,000万円控除側の老人ホーム要件(物品の保管など)。比較表にのみ使用 |
| 質疑応答事例 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地 | 要介護認定の判定時点は相続開始の直前、生計一親族の居住は除外事由に当たらない(令和7年8月1日現在) |
| 質疑応答事例 要介護認定の申請中に死亡した場合 | 相続開始後の認定は申請日にさかのぼる |
| 質疑応答事例 入院により空家となっていた建物の敷地 | 入院は期間の長短を問わず居住継続として扱う |
| 租税特別措置法69条の4(e-Gov) | 3項2号ロ(1)〜(3)の文言が No.4124 の表と一致すること、限度面積330㎡(2026年8月12日施行版) |
まとめ 小規模宅地の特例は「申告期限まで持って、それから売る」
空き家の相続で確かめる点を、判断の順に並べ直します。
- 入口: 特例を使う前の価額で基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えるか。超えないなら申告も特例も不要(No.4152、No.4205)
- 対象: 減るのは宅地(土地)の評価額だけ。330㎡まで80%減。建物は減らない(No.4124)
- 別居の子: 配偶者なし、同居相続人なし、3年以内に自分や親族の持ち家に住んでいない、今の家を所有したことがない、申告期限まで保有、の6要件。「家なき子」は通称
- 老人ホーム: 要介護認定等(相続開始の直前で判定)、列挙された施設、入所後に貸していない、の3点(No.4124 注1、質疑応答事例)。入院は別扱い
- 売る時期: 申告期限(10か月)まで有していること。その後、3,000万円控除の期限(3年目の年末と令和9年12月31日の早いほう)までに売る(No.3306)
- 申告: 税額0でも申告は必要。明細書と遺産分割協議書の写しを添付。相続人が複数なら全員の同意と期限内の分割
- 判定は税理士に: 6要件と老人ホームの3点は事実関係で分かれる。契約日と決済日のどちらで保有を判定するかも含めて確認する
冒頭の場面に戻ります。県外に住む子ひとり、母はすでに他界、父は要介護認定を受けて有料老人ホームに2年いた。
この子が3年以内に賃貸にしか住んでおらず、その賃貸を過去に所有したこともないなら、6要件と3点セットはいずれも通る見込みがあります。残る条件は一つ、申告期限まで実家を売らないことです。
売るのをやめるのではなく、売る時期を10か月の後に置く。それだけで、相続税の評価額を80%減らしながら、3,000万円控除の期限までに売る道が残ります。
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申告期限まで保有する10か月は、売却の準備に使えます。概算金額が分かれば納税資金と売却時期の計画が立ち、期限の後に慌てずに済みます。アキラッキーでは、売ると決める前の段階でも無料で相談できます。申告期限の前に、空き家の概算金額を聞いておく





