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売却 - 再建築不可物件の売却|接道義務の判定と5つの出口
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再建築不可物件の売却|接道義務の判定と5つの出口

「この家は再建築不可なので、うちでは扱えません」。仲介会社にそう言われて、この記事にたどり着いた人が多いはずです。

先に結論を3点にまとめます。

  1. 「再建築不可」は、建築基準法の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接する)を満たさない敷地に付く状態の名前で、土地の価値が消えたという意味ではありません。しかも仲介会社の「再建築不可」は現地の見た目で判断していることがあり、役所の指定道路図で調べ直すと、道路の中心線から2m下がれば建て替えられる「2項道路」だった、という物件が混じっています。
  2. 出口は5つあります。隣地との取引、セットバック、建築基準法43条2項の認定と許可、賃貸や駐車場として持ち続ける、現況のまま買取。どれが得かは「どの道に、どれだけ接しているか」でほぼ決まるので、判定を先に済ませます。
  3. 建て替えできない状態のまま売るなら、買取業者が現実的な相手です。買主が現金で買える投資家や業者に限られるため仲介では買い手探しが長引きやすく、買取は業者自身が出口(隣地への転売、賃貸運用、通路の拡幅)を設計して値付けします。

まず自分の土地の判定から始めます。判定の結果で、読むべき出口が変わります。

再建築不可物件の売却 状況別ガイド

あなたの状況 読むべき章
本当に再建築不可なのか確かめたい 判定する手順
接道義務の中身を条文で知りたい 接道義務の条文
リフォームしてよいのか、2025年の改正で何が変わったか できる工事とできない工事
出口を並べて比べたい 5つの出口の比較
隣の家と話がつきそう 出口1 隣地との取引
前の道が4m未満 出口2 セットバック
農道や通路にしか接していない 出口3 43条2項の認定と許可
急いでいないので持っていたい 出口4 賃貸や駐車場で保有
早く確実に手放したい 出口5 現況のまま買取

再建築不可とは何か|接道義務の条文で確認する

💡 この章の要点: 再建築不可の根拠は建築基準法43条1項の 接道義務(道路に 2m以上 接する)。「道路」の定義は42条にあり、幅員4m以上 が原則だが、4m未満でも特定行政庁が指定した 2項道路 なら道路扱いになる。接道を満たさなくても 43条2項の認定・許可 で建築できる例外があり、都市計画区域と準都市計画区域の外では、そもそも接道義務が適用されない。

接道義務は43条、道路の定義は42条

建築基準法43条1項は、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならない、と定めています(建築基準法43条、2026-09-08確認)。ここでいう「道路」は日常語の道ではなく、42条で定義された道路です。

  • 42条1項: 幅員4m以上で、道路法の道路、都市計画法等による道路、位置指定道路など5つのいずれかに当たるもの
  • 42条2項: 幅員4m未満でも、この規定が適用された時点で建物が立ち並んでいた道のうち特定行政庁が指定したもの。道路とみなされ、その中心線から2mの線が道路境界線とみなされる
  • 41条の2: 道路と敷地に関するこの章の規定は、都市計画区域と準都市計画区域内に限り適用される

42条1項の5種類と2項道路を表にすると、次のようになります。

種別 根拠 中身 典型例
1号道路 42条1項1号 道路法による道路 国道、県道、市町村道(幅員4m以上)
2号道路 42条1項2号 都市計画法、土地区画整理法などによる道路 開発行為や区画整理で造られた道
3号道路 42条1項3号 規定が適用された時点で現に存在した道 古くからある幅4m以上の道(公道でも私道でもよい)
4号道路 42条1項4号 2年以内に事業執行予定として特定行政庁が指定した道路 都市計画道路の予定地
5号道路(位置指定道路) 42条1項5号 敷地として利用するために築造し、位置の指定を受けた道 分譲地の中の私道
2項道路(みなし道路) 42条2項 幅4m未満で特定行政庁が指定した道 古い住宅地の幅3mの道

再建築不可になる4つのパターン

接道義務を満たさない敷地は、次の4つのどれかです。

  • 無道路地: どの道路にも接していない。他人の土地に囲まれた土地
  • 旗竿地で通路幅が2m未満: 奥の敷地へ続く通路がわずかに足りない。43条3項に基づく条例で幅が上乗せされることもあり、東京都建築安全条例3条は路地状部分の長さが20mを超えると幅3m以上を求める(東京都建築安全条例3条、2026-09-08確認)
  • 接する道が4m未満で、2項道路の指定がない: 見た目は道でも、法律上の道路ではない
  • 法律上の道路でない通路にしか接していない: 農道、里道、水路の払い下げ地など

逆に言うと、「4m未満の道に接している」だけでは再建築不可とは決まりません。2項道路の指定があれば、後退を前提に建て替えの確認が下ります。仲介会社の「再建築不可です」が指定の有無を確かめたうえでの言葉なのかは、次の章の手順で自分で確かめられます。

接道義務の例外は43条2項

接道を満たさなくても建てられる例外が、43条2項に2つ用意されています。

  • 1号 認定: 幅員4m以上の「道」(道路に該当しないもの)に2m以上接する建築物のうち、利用者が少数のもの。特定行政庁の認定で足り、建築審査会の同意は要らない
  • 2号 許可: 敷地の周囲に広い空地がある建築物など、省令の基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないと認め、建築審査会の同意を得て許可したもの

どちらも出口3で扱います。再建築不可以外の訳あり条件(市街化調整区域、がけ地、旧耐震、借地権、共有名義など)が重なっている場合は、訳あり物件の売却の総論で条件ごとの出口を先に確かめてください。

自分の土地が再建築不可かどうかを判定する手順

自分の土地が再建築不可かどうかを判定する手順のイメージ

💡 この章の要点: 判定は 公図と地積測量図で敷地の形と接し方を押さえ、自治体の指定道路図で前面の道の「種別」を確かめ、現地で幅員と接道長を測る の3段階。指定道路図は種別しか示さないので、幅員や境界の判断は 建築指導課の窓口 で照会する。

判定の流れを先に置きます。

[1] 法務局で公図・地積測量図・登記事項証明書を取る
      ↓ 前面の道に地番があるか(私道・里道)、通路幅は何mか
[2] 自治体の指定道路図で前面の道の種別を調べる
      ↓ 42条1項の道路 / 2項道路 / 指定なし
[3] 現地で幅員と接道長を測る
      ↓ 接道長2m以上か、通路の最も狭い部分は何mか
[4] 建築指導課で道路種別と43条2項の可能性を照会する
      ↓
  判定A: 42条の道路に2m以上接している → 再建築可(仲介の誤認)
  判定B: 2項道路に接している → セットバック前提で再建築可(出口2)
  判定C: 4m以上の道や農道に接している → 43条2項の認定・許可の余地(出口3)
  判定D: 無道路地、通路幅不足 → 隣地取引(出口1)か、現況のまま売る(出口5)

ステップ1 法務局で公図と地積測量図を取る

  • 公図(地図または地図に準ずる図面): 土地の位置関係と、前面の道が地番のある土地(私道や里道)か、地番のない道路(公道)かが分かる
  • 地積測量図: 境界と各辺の長さが分かる。旗竿地の通路幅を確かめる材料になる。古い土地では備え付けがないこともある
  • 登記事項証明書: 所有者、地目、面積に加え、私道の持分の有無が分かる

取得先と費用は次のとおりです(法務省 登記手数料法務局 地図証明書の請求方法、いずれも2026-09-08確認)。

書類 分かること 取得先 手数料
公図(地図証明書) 位置関係、前面の道の地番の有無 管轄または最寄りの登記所、オンライン 書面500円、オンライン440〜470円(1筆)
地積測量図(図面証明書) 境界、辺長、通路幅 同上 書面500円、オンライン440〜470円(1事件)
登記事項証明書 所有者、地目、面積、私道持分 同上 書面600円、オンライン490〜520円
指定道路図、道路台帳 前面の道の種別(42条の何項何号か) 自治体の建築指導課、自治体のWeb地図 自治体で確認

請求には住居表示ではなく登記上の地番が要ります。権利証や固定資産税の納税通知書で地番を確かめてから請求してください。

ステップ2 自治体の指定道路図で道路種別を調べる

  • Web地図で閲覧できる自治体: 横浜市は「i-マッピー」で指定道路図を閲覧、印刷できる(横浜市 建築基準法の道路について、2026-09-08確認)
  • 窓口とPDFで閲覧する自治体: 東京都北区は建築課の窓口とPDFで閲覧できる。ただし指定道路図は「道路種別のみを表したもの」で、幅員、境界、終端位置や、敷地が道路に接するかどうかの判断には使えないと明記されている(北区 指定道路図の閲覧、2026-09-08確認)
  • 図で決まらないとき: 種別の色塗りがない、行き止まりのどこまでが道路か分からない、といった場合は建築指導課に地番を伝えて照会する。電話では受けず、来庁かインターネット申請とする自治体もある(横浜市)

ステップ3 現地で幅員と接道長を測る

  • 幅員: 道の両端で複数箇所を測る。側溝や擁壁を幅員に含めるかどうかは自治体の運用に従う
  • 接道長: 敷地が道路に接している線の長さ。旗竿地なら通路の最も狭い部分の幅が接道長になる
  • 2項道路なら後退線: 中心線から2mの線を仮に引き、後退後の敷地でどれだけ建てられるかを見る

ステップ4 43条2項の可能性を照会する

判定Cの敷地は、建築指導課で認定や許可の見込みを事前相談できます。売主の段階で正式申請まで進める必要はなく、「包括同意基準に乗りそうか」の感触が分かるだけで、査定の根拠が変わります。手続きの中身は出口3で説明します。

再建築不可のままできる工事とできない工事

💡 この章の要点: できないのは 建築(新築、増築、改築、移転)。修繕と模様替は可能で、主要構造部の一種以上について過半に及ぶ 大規模の修繕・模様替 は、2025年4月から2階建ての木造住宅でも確認申請が必要になった。ただし接道を満たさない既存不適格の建物でも、用途変更を伴わず特定行政庁が支障なしと認めれば 接道規定は適用されない(86条の7、施行令137条の12第11項)。

用語の線引き

再建築不可の物件でよく混同されるのが「建築」と「修繕」です。建築基準法2条の定義で分けます(建築基準法2条、2026-09-08確認)。

  • 建築: 新築、増築、改築、移転(2条13号)。再建築不可の敷地では、この4つの確認が下りない。建て替えは「改築」または「新築」に当たる
  • 主要構造部: 壁、柱、床、はり、屋根、階段(2条5号)。構造上重要でない間仕切壁や最下階の床などは除く
  • 大規模の修繕・模様替: 主要構造部の一種以上について行う過半の修繕、模様替(2条14号、15号)

いま建っている家は、3条2項の既存不適格建築物として扱われます。接道の規定は現に存する建物には適用されないので、住み続けることも貸すことも問題ありません。ただし3条3項3号により、増築、改築、移転、大規模の修繕、大規模の模様替をする建物には現行の規定が及ぶのが原則です。

2025年4月の改正で変わった確認申請の範囲

確認申請が要る建物は6条1項に列挙されています。

  • 1号: 特殊建築物で、その用途の床面積が200㎡を超えるもの
  • 2号: 階数2以上、または延べ面積200㎡を超える建築物
  • 3号: 1号、2号以外で、都市計画区域や準都市計画区域内の建築物

大規模の修繕・模様替で確認申請が要るのは、1号と2号だけです。3号は建築(新築、増築、改築、移転)のときだけ確認が要ります。2025年4月の改正で、この区分に木造住宅が組み込まれました(国交省 4号特例が変わります、2026-09-08確認)。

  • 新2号建築物: 木造2階建ての住宅は旧4号からここに移り、大規模の修繕・模様替でも建築確認が必要になった
  • 新3号建築物: 木造平屋で延べ面積200㎡以下。確認が要るのは都市計画区域等内で建築するときだけで、大規模の修繕・模様替では要らない

どの工事がどこに当たるかを表にします。屋根と外壁の扱いは国交省の資料(令和7年2月21日時点)によります(木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について、2026-09-08確認)。

工事 大規模の修繕・模様替に当たるか 木造2階建て(新2号)の確認申請 木造平屋200㎡以下(新3号)の確認申請
屋根ふき材だけの葺き替え、カバー工法 当たらない 不要 不要
外装材だけの張り替え、内側からの断熱改修 当たらない(外壁の全てを改修する場合を除く) 不要 不要
屋根を構成する全ての材を過半で改修 当たる 必要 不要
柱やはりの過半を交換する骨組みからの改修 当たる 必要 不要
増築、建て替え 建築 接道規定が及び、原則として確認が下りない 同左

接道を満たさない建物で、大規模修繕の確認は下りるのか

新2号に移った家で骨組みからの改修をすると確認申請が要る。すると接道規定が遡及して、確認が下りないのではないか。

この疑問には、86条の7と施行令137条の12第11項が答えています(建築基準法86条の7施行令137条の12、いずれも2026-09-08確認)。

  • 接道規定(43条1項)の適用を受けない既存不適格建築物について、政令で定める範囲内で大規模の修繕・模様替をする場合、43条1項は適用されない(86条の7第1項)
  • その範囲は、用途の変更を伴わない大規模の修繕・模様替であって、特定行政庁が交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないと認めるもの(施行令137条の12第11項)

住宅を住宅のまま直すなら、特定行政庁が支障なしと認めれば、接道を満たしていなくても確認は取れる道筋があります。認めるかどうかは特定行政庁の判断なので、工事の前に建築指導課で協議するのが手順です。

売却との関係で言えば、直せることと、直した費用が売値に乗ることは別の話です。この点は売る前にやると効くことで扱います。

再建築不可物件の5つの出口を損得で比較する

再建築不可物件の5つの出口を損得で比較するのイメージ

💡 この章の要点: 出口は、接道を 作る 3つ(隣地取引、セットバック、43条2項)と、作らずに 手放すか持つか の2つ(買取、保有)に分かれる。作れれば評価は再建築可の水準に近づくが、相手(隣地所有者、特定行政庁)の判断に左右され、時間がかかる。作れない、または待てないなら買取。

出口 使える条件 費用と手間 時間 向く人
1 隣地の買い増し、隣地への売却 隣地所有者が応じる 測量、分筆、登記。価格は相対交渉 相手次第 隣地が使える形で、隣地所有者と話せる
2 セットバック 2項道路に接している 後退部分は敷地面積に算入されず、建てられる規模が減る 建て替え時に同時 4m未満の道に2項指定がある
3 43条2項の認定、許可 省令と自治体の基準に適合 図書の作成、事前相談。建築計画ごとの手続き 横浜市の例で事前相談2〜4週間、通知まで概ね2週間 農道や幅4m以上の通路に接している
4 賃貸、駐車場で保有 建物が使える状態 固定資産税と管理が続く 期限なし 現金化を急がない
5 現況のまま買取 ほぼ制限なし 仲介手数料なし、現況渡し 業者と物件による 早く確実に手放したい

判定Aだった人(実は再建築可)は、この記事の出口を選ぶ必要がありません。通常の売却として買取と仲介の比較に進んでください。

出口1 隣地を買い増す、または隣地所有者に売る

💡 この章の要点: 接道に足りない分を隣地から買えば再建築可になる。逆に隣地所有者にとって、この土地は自分の敷地を広げられる 唯一の土地。どちら向きでも価格は相場ではなく、一体化したあとの価値 で決まる。

買い増す

  • 仕組み: 旗竿地の通路が1.8mなら、隣地から幅20cm分を買えば2mに届く。無道路地なら、道路までの通路分を買う
  • 手続き: 測量、分筆登記、所有権移転登記。隣地所有者の承諾が前提
  • 落とし穴: 相手にとっては自分の敷地が減る話なので、価格の根拠なしに切り出すと決裂しやすい。買い増したあとの土地が接道を満たすかは、事前に建築指導課で確かめる

隣地所有者に売る

  • 仕組み: 隣地と一体化すれば、隣地側は敷地が広がり、形も整う。自分にとっては「再建築不可の土地」でも、隣地所有者にとっては「敷地を広げる土地」になる
  • 手続き: 通常の売買と同じ。境界確定の測量が要る
  • 落とし穴: 個人間の交渉になりやすく、条件が折り合わないまま時間だけ過ぎる。買取業者が隣地に打診する形(出口5)なら、業者が交渉の窓口になる

隣地所有者が応じるかどうかは、こちらでは決められません。打診して返事がないなら、待ちながら出口5の査定を並行して取るのが現実的です。

出口2 セットバックで接道を満たす

💡 この章の要点: 2項道路に接しているなら、中心線から 2m 後退した線を道路境界とみなして建て替えできる。後退部分は 敷地面積に算入されない ので、建てられる規模は減る。法律上の道路でない道にいくら後退しても、接道にはならない。

条文の中身

  • 42条2項: 中心線から水平距離2mの線を道路境界線とみなす。道ががけ地、川、線路敷などに沿う場合は、そちら側の境界線から4mの線
  • 42条3項: 土地の状況によりやむを得ない場合、特定行政庁は1.35m以上2m未満の範囲で別に距離を指定できる
  • 施行令2条1項1号: 後退線と道との間の部分は、敷地面積に算入しない(建築基準法施行令2条、2026-09-08確認)

売却での使い方

  • 自分で工事する必要はない: 建て替え時に後退すればよいので、売主の段階で塀を下げる工事は要らない
  • 証明できる事実が価値になる: 「前面の道は2項道路で、後退すれば建て替えられる」と役所の照会結果で示せれば、査定は再建築不可の水準から離れる
  • 規模の減少は買主が織り込む: 後退分だけ建てられる面積が減るので、その分は価格に反映される

出口3 建築基準法43条2項の認定と許可を取る

💡 この章の要点: 接道義務の例外。1号認定 は幅員4m以上の「道」に2m以上接する一戸建て住宅など(延べ面積 500㎡以内)が対象で、建築審査会の同意は要らない。2号許可 は周囲に広い空地がある場合などで、審査会の同意が要る。どちらも 建築計画ごと の手続きで、土地に永続的に付く資格ではない。

認定と許可の対象

省令(施行規則10条の3)が基準を定めています(建築基準法施行規則10条の3、2026-09-08確認)。

項目 1号 認定 2号 許可
接する道 農道など公共の用に供する道、または位置指定道路の基準に適合する道(幅員4m以上) 周囲に公園や広場など広い空地がある、幅員4m以上の農道等に2m以上接する、十分な幅員の通路で道路に通じるものに有効に接する、のいずれか
用途 一戸建ての住宅、長屋など(接する道の種類で基準が異なる) 限定なし(基準に適合すれば)
規模 延べ面積500㎡以内 限定なし(基準に適合すれば)
建築審査会の同意 不要 必要

自治体の運用

  • 包括同意基準(一括同意基準): 東京都、横浜市とも、一定の基準に当てはまる許可はあらかじめ建築審査会の同意を得ておき、個別の付議を省略している(東京都 43条2項の取扱い、2026-09-08確認)
  • 横浜市の期間の目安: 事前相談に2〜4週間(道路判定委員会の審議が要る場合は4〜5週間)、本申請後は書類が揃っていれば概ね2週間で通知。本申請は窓口のみで郵送不可(横浜市 43条2項の許可・認定、2026-09-08確認)
  • 自治体差: 基準の中身と呼び名は自治体ごとに違う。自分の自治体の建築指導課のページで「43条2項」を探す

売却での使い方

売主が正式申請まで進めることは、まれです。認定や許可は建築計画に対して出るもので、建てる人が申請するからです。売主にできるのは、事前相談で「包括同意基準に乗る見込みがあるか」を確かめておくことまでで、それでも買主の見方は変わります。買取業者は、この見込みを自分で建築指導課に確かめてから値付けします。

出口4 賃貸や駐車場として持ち続ける

💡 この章の要点: 現状の建物で住む、貸すことは既存不適格として認められる。ただし更地にすると 住宅用地特例(200㎡以下は課税標準 1/6、超える部分 1/3)が外れ、放置して特定空家や管理不全空家の 勧告 を受けても外れる。無道路地でも民法で通行とライフラインは確保できるが、接道義務を満たすことにはならない。

賃貸

  • 前提: 建物が使える状態であること。直すなら前章の確認申請の要否を確かめる
  • 収支: 家賃から固定資産税、修繕費、管理の手間を引いた残りが利益。再建築できない分、建物が寿命を迎えたときの出口がない

駐車場

  • 前提: 車が入れる幅の道と通路があること。通路幅2m未満の旗竿地では駐車場としても使いにくい
  • 税金: 建物を壊して更地にすると、住宅用地の特例が外れる。固定資産税は課税標準に標準税率1.4%を掛けて計算され、小規模住宅用地(200㎡以下)は課税標準が価格の1/6、それを超える部分は1/3になる(総務省 固定資産税、2026-09-08確認)

特例が外れる3つの経路

  • 更地にする: 住宅がなくなれば住宅用地ではなくなる
  • 特定空家の勧告: 市区町村長から勧告を受けた特定空家の敷地は、特例の適用対象から除外される
  • 管理不全空家の勧告: 2023年12月13日施行の改正空家法で、放置すれば特定空家になるおそれのある「管理不全空家」に勧告を受けた敷地も除外されるようになった(国交省 改正空家法の概要、2026-09-08確認)

持ち続ける選択は、管理を続ける前提で成り立ちます。解体するかどうかの判断は解体と売却の比較に、固定資産税の仕組みは空き家の固定資産税にまとめています。

民法の通行権とライフラインは、接道義務とは別

  • 民法210条: 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、囲んでいる土地を通行できる
  • 民法213条の2: 他の土地に設備を設置しなければ電気、ガス、水道の供給を受けられない土地の所有者は、必要な範囲で他の土地に設備を設置できる(2023年4月1日施行。法務省 民法改正の主な項目、2026-09-08確認)

これらは「通れる」「引き込める」を保証する規定で、建築基準法の接道義務を満たしたことにはなりません。無道路地に住み続けることはできても、建て替えの可否は別に判定されます。

出口5 現況のまま買取業者に売る

💡 この章の要点: 買取業者は「建て替えられない」を前提に、自分の出口(隣地への転売、賃貸運用、通路の拡幅や43条2項の許可を取ってからの再販)を設計して値付けする。だから査定は 出口の数 で変わり、売主が用意できる材料(道路種別の照会結果、私道の承諾書、境界の確定)で動く。

仲介と買取で何が違うか

項目 仲介 買取
買主 現金で買える投資家、隣地所有者に限られやすい 業者自身
買主の融資 担保評価が低く、住宅ローンが付きにくい 業者の自己資金
期間 買い手探しが長引きやすい 業者と物件によるが、査定から決済まで数週間から数か月
手数料 仲介手数料がかかる かからない
引き渡し 買主との交渉次第 現況渡し、残置物そのままが通例
価格 反響が細く、値下げを重ねやすい 出口を設計できる業者ほど値付けが安定

仲介と買取の一般的な比較は買取と仲介の比較記事に譲り、ここでは再建築不可に特有の部分を書きます。

買取業者が現地で見る7項目

  • 前面の道の種別と幅員: 業者も建築指導課に照会する。売主が先に照会済みなら、その結果を渡す
  • 接道長と通路幅: 旗竿地の通路の最も狭い部分。2mまでの不足が何cmかで出口が変わる
  • 私道の持分と承諾: 私道にしか接していない場合、持分の有無と、通行や掘削の承諾書の有無
  • 隣地の状況: 買い増しや売却の余地があるか。隣地が空き地か、建物が接しているか
  • 建物の状態: 賃貸で回せるか、大規模修繕なしで使えるか
  • 43条2項の見込み: 農道や幅4m以上の通路に接していれば、許可を取って再販する出口が開く
  • 境界と越境: 境界標の有無、隣地との越境。あとで隣地と取引するときの土台になる

買取価格の引き算

買取価格は、業者が描く出口の価格から逆算されます。

業者が想定する出口の価格(隣地への転売 / 賃貸運用 / 許可取得後の再販)
 − 出口を作る費用(測量と分筆、承諾の取得、通路の拡幅、許可申請の図書、リフォーム)
 − 出口が作れなかった場合の保有コストとリスク
 − 諸経費と利益
 = 買取価格

再建築ができない分、更地や再建築可の物件より低く評価されます。この引き算の構造から、査定を動かせる場所が2つ見えてきます。

  • 出口の数を増やす: 賃貸しか出口がない物件と、隣地への転売も許可取得も見込める物件では、1行目の価格が違う
  • 出口を作る費用を減らす: 承諾書、境界確定、道路種別の照会結果が揃っていれば、2行目の費用と3行目のリスクが減る

買取ならではの契約条件

  • 契約不適合責任の免除特約: 引き渡し後に雨漏りやシロアリが見つかっても売主が責任を負わない特約が通例
  • 現況渡し: 修繕、測量、解体は不要。残置物もそのまま引き取る業者が多い
  • 引き渡し時期: 遺品整理が終わってから、など売主の都合で調整できる
  • 告知は正直に: 私道の紛争や越境など、知っていることは告知書に書く。免責特約は「全部告げた売主」を守る仕組み

流れ

[1] 問い合わせ(住所、築年、前面の道の状況、私道か公道か)
   ↓
[2] 机上査定(役所照会と公図で概算)
   ↓
[3] 現地調査(1回。上の7項目を確認)
   ↓
[4] 買取価格の提示(出口の設計とセット)
   ↓
[5] 条件調整(引き渡し時期、残置物、免責特約)
   ↓
[6] 契約 → 決済

査定は1社で決めず、再建築不可の扱いに慣れた業者を含めて複数に頼みます。業者の見極め方は空き家買取業者の選び方に、価格の水準の考え方は空き家の買取相場にまとめています。

売る前にやると効くこと、やっても回収できないこと

💡 この章の要点: 効くのは、業者の 出口を増やす材料 を先に揃えること(道路種別の照会結果、私道の承諾、境界確認、隣地への打診状況)。回収できないのは、出口を増やさない支出(大規模なリフォーム、解体、荷物の処分)。

前章の引き算で考えると、売主の一手が効くかどうかは「業者の出口の数を増やすか、出口を作る費用を減らすか」で判定できます。

一手 効くか 理由
建築指導課で道路種別を照会する 効く 2項道路や43条2項の見込みが分かれば、業者の出口が増える。費用はほぼゼロ
私道の通行掘削承諾を取り付ける 効く 承諾がないと業者は取得後に自分で交渉する。その手間とリスクが査定から引かれている
境界を確定し、越境を整理する 効く 隣地との取引と再販の土台。未確定だと業者が費用を見込む
隣地所有者に打診しておく 効く 「隣地が買う意向」または「断られた」のどちらでも、業者は出口を絞り込める
大規模なリフォーム 回収できない 建て替え不可のままでは、かけた費用が売値に乗りにくい。改修は業者が出口に合わせて行う
解体して更地にする 回収できない 建て替えられない更地は買い手が付きにくく、住宅用地特例も外れる
残置物の処分 回収しにくい 業者は残置物込みで査定するのが通例。先に払っても査定はほぼ変わらない

効く一手は、どれも費用がほとんどかからず、書類と会話で済みます。逆に費用がかかる一手ほど回収できないのが、再建築不可の物件の特徴です。

モデルケース 旗竿地の通路幅1.7mの実家を売るまで

💡 この章の要点: 通路幅1.7mの旗竿地で、隣地に打診して断られ、買取3社の査定を比べた架空の例。承諾と境界の書類を揃えてから再査定した業者の提示が上がった 点と、業者ごとに描く出口が違う 点が、再建築不可の売却の実際に近い。

数字を伏せた架空の例ですが、旗竿地の相続空き家ではよくある経過です。

  • 物件: 首都圏の住宅地、木造2階建て、築50年。前面は幅4.5mの市道だが、旗竿の通路幅が1.7mで長さ18m
  • 売主: 県外在住の長女。仲介会社2社に「再建築不可なので扱えない」と言われた
  • 判定: 公図と地積測量図で通路幅1.7mを確認。指定道路図で前面の道は42条1項1号の道路と分かった。問題は道ではなく接道長
時期 出来事
1か月目 法務局で公図と地積測量図、登記事項証明書を取得。建築指導課に照会し、前面は1号道路、接道長不足で建築不可と確認
2か月目 隣地所有者に幅30cm分の買い増しを打診。「庭が削れる」と断られる
3か月目 買取3社に査定依頼。A社は賃貸運用の出口で提示。B社は隣地との将来交渉を織り込みA社より高い提示。C社は「通路幅から43条2項の包括同意基準に乗らない」と判断し提示を見送り
4か月目 隣地の立会いを得て境界確定。越境していた隣地の雨樋の覚書を交わす。B社に再査定を依頼し、提示額が上がる
5か月目 B社と契約。残置物そのまま、契約不適合責任の免除特約、引き渡しは翌月末
6か月目 決済、入金

この例から拾える判断材料は3つです。

  • 道の種別と接道長は別の問題: 前面が立派な市道でも、通路幅で再建築不可になる。判定の段階で「何が足りないか」を特定すると、出口が絞れる
  • 業者ごとに出口の設計が違う: 同じ土地でも、賃貸で回す業者と隣地との将来交渉を織り込む業者では提示が変わる。複数社に頼む意味はここにある
  • 書類は査定を動かす: 境界確定と越境の覚書は、業者が自分で解決するはずだった費用とリスクを減らした

相続した家の場合、名義変更が終わっていないと決済できません。相続登記から売却までの段取りは相続した空き家の全体像を参照してください。

再建築不可物件の売却でよくある質問

1. 再建築不可の物件は、本当に売れますか?

売れます。買主が現金で買える投資家、隣地所有者、買取業者に限られるため仲介市場では反響が細くなりますが、買取市場では業者が出口を設計して値付けします。まず判定の手順で本当に再建築不可なのかを確かめてください。

2. 更地にしてから売ったほうが高くなりますか?

建て替えられない土地は、更地にしても建物を建てる買い手が付きません。解体費が回収できず、住宅用地の特例も外れます。解体するかどうかは、現況での査定を取ってから解体と売却の比較で判断してください。

3. リフォームしてから売るべきですか?

売値に乗りにくいので、売却目的のリフォームは勧めません。

  • 費用の面: 建て替え不可のままでは、かけた費用が売値に乗りにくい
  • 手続きの面: 2025年4月以降、木造2階建ての大規模な修繕には確認申請が要り、接道を満たさない建物では特定行政庁との協議も必要

直すなら、買取業者が出口に合わせて直す前提で考えてください。

4. 買主は住宅ローンを使えますか?

再建築不可の物件は金融機関の担保評価が低くなりやすく、住宅ローンが付きにくい傾向があります。買主が現金購入者に絞られる理由の一つで、仲介で売れにくい構造の元です。

5. 43条2項の許可は、一度取れば永久に建て替えられますか?

永久ではありません。

  • 性質: 認定と許可は建築計画ごとに出るもので、土地に永続的に付く資格ではない
  • 次の建て替え: そのときの基準で改めて手続きが要る。買主はこの点を織り込んで判断する
6. 私道にしか接していません。承諾がないと売れませんか?

承諾がなくても売れます。ただし査定には次のように響きます。

  • 承諾なし: 買取業者は取得後に自分で承諾を取る手間とリスクを査定から引く
  • 承諾あり: 売主の段階で私道所有者と話し、通行と掘削の承諾書を取り付けておくと査定に反映されやすい
7. 相続した再建築不可の家を売ると、税金はどうなりますか?

再建築不可であることで税の扱いが変わることはありません。通常の売却と同じ2点を確かめます。

8. 査定だけ頼んで、売らなくてもよいですか?

問題ありません。判定の結果と査定額を手元に置いてから、隣地との交渉や保有を選び直す人もいます。買取の査定は業者自身が買う価格の提示なので、比較の物差しとして使えます。

動くなら早いほうが選択肢が多い

空き家には「特定空家指定で固定資産税が最大6倍」「相続から3年以内の譲渡で3,000万円特別控除」など、期限のある制度が複数あります。 売却を決める前でも、いま無料査定を取っておくだけで判断材料が増えます。

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まとめ 判定が先、出口はあとから決まる

最後に、この記事の手順を整理します。

  • 再建築不可は接道義務(43条1項)を満たさない状態の名前: 幅員4m以上の道路に2m以上接するかどうか。4m未満でも2項道路の指定があれば、後退を前提に建て替えられる
  • 判定は3段階: 法務局で公図と地積測量図、自治体の指定道路図で道路種別、現地で幅員と接道長。図で決まらなければ建築指導課に照会する
  • できる工事とできない工事: 建築(新築、増築、改築、移転)はできない。大規模な修繕は、特定行政庁が支障なしと認めれば接道を満たさなくても確認が取れる道筋がある
  • 出口は5つ: 接道を作る(隣地取引、セットバック、43条2項)か、作らずに手放すか持つか(買取、保有)。作れるなら評価は上がるが、相手の判断と時間がかかる
  • 買取の査定は出口の数で動く: 道路種別の照会結果、私道の承諾、境界確定は費用がほぼゼロで査定を動かす。リフォームと解体は回収できない

「再建築不可」と言われた日に、土地の価値が決まったわけではありません。決まるのは、判定を済ませて出口を選んだときです。

関連: 訳あり物件の売却 / 解体と売却の比較 / 空き家の買取相場

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